第298話 タービュレンス再び
「額冠を調査出来たのは、私にとって青天の霹靂だった。以前までは仮説止まりだった、あの物質との関連性が明らかになった。これが世間に公表されれば、前代未聞の大騒ぎとなるだろう。」
「何の事を言ってるんだ? 話が見えてこないんだけど?」
「貴様ら、被支配階級の者どもにはわかったところで何の役にも立たん。それどころか知ってしまえば、命はないと考えた方が良い。」
勇者の額冠と他の何かとの関係性? そんな似たようなアイテムってあったっけ? もしあったとしても、それが世界の常識をひっくり返す程のモンなんだろうか? 疑問ばっかりでワケがわからなくなってきた。
「そんなことはどうでもいい。いずれにしたってアンタの野望はこの場で潰えるんだからな。」
「そうだぜ! この場で捕まらずに逃げられるなんて本気で考えてんのか? タルカスの部隊にも勝った俺達を簡単に止められると思うなよ?」
一対一、それか俺と相方二人程度までなら、そういう態度を取るのはわからなくもない。それに加えて、エルやロッヒェン、リキシ、ラヴァン達魔術師軍団、加えて助っ人に侍までいる。こんな最強メンバーが揃っていれば、よっぽどの相手でもなければ負けることはないだろう。
「フハハハハ!」
「今頃、状況を理解しておかしくなったか?」
「ハハハ、貴様らの方がおかしいのだ。数を揃えた程度ではどうにもならない。その絶望を体感する貴様らの事を想像すればな。」
最早、余裕を通り越して、俺らを完全に排除できるとでも言いたげだ。学長ていっても、魔術師である事には変わりない。戦闘の専門家を大勢目の前にして、何が出来ると言うんだろう?
「では見せてやろう。まずは弱体人間共には早速、ご退場願おうか?」
ラヴァン達魔術師連中に、手の平を上にした状態で腕を差し出した。人差し指と中指を突き出しそのまま上にクイッと上げた!
(ウヴォォォォン!!!!!!!)
突然、つむじ風というか小さな竜巻が巻き起こり、ラヴァン達は為す術なく吹き飛ばされていった。咄嗟に自力で体勢を立て直した人もいるが、かなりの距離まで吹き飛ばされ姿が見なくなった人もいる。
「この通りだ。これに耐えられなければ、私に近付くことすら認められんということだ。さて次は……、」
次に定めたのはロッヒェンとリキシだった。ラヴァン達魔術師は学長から見れば歴然とした差を感じたんだろう。しかし、この二人は違う。まだ二人は修行中の身とはいえ、クルセイダーズ期待のルーキー達だ。それを相手にすらしな
いなんて何事だよ。
(ウヴォォォォン!!!!!!!)
「うわあああっ!?」
「こ、これはたまらんバイ!?」
竜巻に二人は耐えている。とはいえ持ちこたえるだけでも精一杯のようだ。このままでは吹き飛ばされてしまう!
「耐えたか? 少なくとも出来の悪い魔術師達よりはまともと見える。しかし、貴様らでも資格はないのだよ。」
(ウヴォォォォン!!!!!!!)
竜巻は更に強くなり、二人は為す術なく吹き飛ばされた。アイツらがダメなら俺らも無理なんじゃないだろうか?
「次は……残りまとめて振るいにかけてやろう!」
(ウヴォォォォン!!!!!!!)
「ひょえぁーーっ!?」
下から巻き上げる大きな力に吸い上げられそうになる。体全体を真上に引っ張られそうになるので、服や髪の毛どころか、顔の皮まで引っ張り上げられそうになっている。今の俺は、つまり変顔、物凄い変顔になっているに違いない。
「ぐっ、ぬぬうっ!?」
「きゃ、うううあっ!?」
エルと侍が苦痛に満ちた表情をしている。この二人ならなんとかと思ったら、さっきまでの戦闘での消耗が激しかったのかもしれない。中でもファルだけは普通に耐えている。
「フフフ、タルカス共と戦って体力を消耗している様だな。実力はともかく、今はこの場にいる価値なしということだ!」
(ウヴォォォォン!!!!!!!)
エルと侍まで吹き飛ばされてしまった。消耗しているなら、俺らが戦っている間に回復に専念しておいてもらおう。残ったのは俺とファル、トープス先生、フォグナー、タルカスだけだった。三人を残したのは戦力外だからなのだろうか?
「本来なら勇者、貴様も排除の対象だったはずなのだがな? 何をしたかは知らんが持ちこたえたようだな。額冠の加護か?」
「ど、どうだろ? なんとなく持ちこたえちまったよ。」
「馬鹿は風をひかん。馬鹿は風にも吹かれない。大方、そういう事なんだろうさ。」
「お前、一言多いぞ。こういう時くらい少しは褒めてくれよ。」
「期待してんじゃねえよ、バーカ。それよりも最強タッグ、ザ・タービュレンスを前にしてただで済むとは思うなよ!」
「フン、乱気流か? 乱気流如きが嵐の王に勝てると思わぬことだ!」
そうだな。大武会以来の最強タッグで学長に挑戦することになる。俺達を甘く見た事を後悔させてやる!




