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第297話 Dead or Alive!


「テイルのみならず、ファングまで! てめえは化け物かよ!」



 ヤツの強さは常軌を逸していた。テイルは特殊金属で覆われたタルカスの新型ゴーレムすら引き裂いた。ファングはクルセイダーズ騎士のものより反応、攻撃力は上回る。それが悉く防がれた。最早、この男は人間ではない。目の前の事実がそれを証明している。最早、拘束は無意味と判断しテイルを根元からパージした。



「もういい! お前にはオレの最大級の技を叩き込んでやる!」



 オレの代名詞とも言うべきダーク・ソード全力で展開する。オレ自身の力とガノス・コアから出来る限りの力を送り込み補強する。オレの憎しみの全てを解放して破壊し尽くす!



「行くぞ! ダークネス・ガスト・インプロージョン!!!」



 これもダークネス・イレイザー同様、勇者の三大奥義をアップデートしたものだ。自身を暗黒の矢と化して、敵へ突っ込む! ヤツは避けようともしなかった。真正面からまともに食らった。それでも手応えは薄い。更に勢いを増して真後ろの壁へと激突させた。



「死に晒せ! 二度と動けないよう念入りに止めを刺してやる!」


「げぼぁっ!! い、イキの良い小僧だぜ! このまま、俺ッチを倒せると思うなよぉ!」



 ヤツは胸板に剣を貫かれたまま、ガシッと剣を掴む! 刃の部分をお構いなしに掴んでいる。それでも抜こうとはしていない。



「俺ッチに闇属性が効かない事を忘れたかぁ!たーーっぷりとパワーを吸収してやるぜ!」



 それぐらいは想定していた。初めてこの男と戦ったとき、ダークネス・イレイザーを跡形もなく吸収された。それは今も同様だろう。だが、それでもいい。そうしてくれないと困るんだよ。



「吸えるもんなら吸ってみな! コアの無尽蔵のパワーを思い知れ! ダーク・フラッディング!!」


「吸い尽くして、ヨボヨボの爺さんみてえにしてやんよ!」



 どちらが先に力尽きるか、根比べの戦いを挑む! 相手は闇の力を吸収できるかもしれないが、コアは持っていないはず! 莫大な力を注ぎ込めば、いずれはオーバーフローし体は崩壊するはず。ただの特異体質でも流石に限界はあるはずだ!



「うおおおおおっ!!!!」


「ぐおおおおおああああっ!!!!!」



 周囲からは見ればオレ達は黒い炎に包まれ、互いに完全燃焼させようと争っているように見えるはず。これなら誰も邪魔は出来ない。勝負がつくまで、相手が燃え尽きるまで燃焼し続ける!



(ビシッ……ビシビシッ!!)



 鎧が軋んでいる。背中から音がしている。まさかヤツの攻撃を背中で受けたとき、ウイング以外にも損傷を与えていたのか! こんな肝心なときに足を引っ張ることになるとは。オレの見通しが甘かったか?



「おんやぁ? 鎧の方がボイコットを始めてるぜ? 痛え、痛えって悲鳴上げてら!」


「クッ!?」



 相手にも鎧の不調を悟られてしまった。このままではマズい。このまま続ければ鎧が崩壊するかもしれない! だが逃れようにも剣から手を離すことが出来ない!



「今、この場から離れたい、とか思ったろ? 無駄だぜ。俺っちのスクウィーズ・パワーからは逃げられんぜ? パワー吸い尽くすまでは離れねえのよ!」



 クソッ、こんな馬鹿みたいな方法でオレは負けるのか? 鎧の軋みが背中だけじゃなく、全身にわたって広まっていく。このままでは鎧が崩壊する。



(ぐわしゃああああっ!!!)



 鎧はついに崩壊した。その反動でオレは後ろに吹き飛ばされ、背中から地面に叩きつけられた。



「……クソッ!? よ、鎧が……。」


「ヤれやレ。自慢のデーモン・アーマーでモ勝テなイ敵がいルとハ。念のタめ自爆装置付けトいテ、良かったデス。」



 オレの傍らにオプティマがいた。口ぶりからするとワザと遠隔操作で鎧を破壊したようにも聞こえる。自爆装置を仕込んでたなんて、オレは聞いてないぞ!



「被験者一号、今回は我々ノ負けデす。自爆させたのは、アナたとコアを壊さナいためデす。貴重なマテリアルを壊されル訳にモいかんノですヨ。ここはひとマず撤退……、」


「逃げられると思ってんの、ヒョロガリのオッサンよ? ガノス様のコアは置いてきな。じゃねえとぶっ殺して奪い……違った、取り返すだった。それがうちのボスのご命令だからな。」



 ヤツの目的はオレらの抹殺よりもコアの奪回か。そりゃそうか。魔王軍以外の手に渡ったとあれば、面目まる潰しだからな。でも、おとなしく渡したくない。



「ちょっと! アンタ達、逃げるつもり? どうせ、悪の手先名乗るんなら、もっと悪あがきしてみなさいよ!」



 場違いな場面に場違いな馬鹿女がやってきた。相変わらず戦闘手段を持たないクセにしゃしゃり出てきた。コイツはそうとうイカレてやがる。



「あぁ? お前には関係ないだろ! 邪魔をするな! 少なくともオレは逃げると言ってない!」


「じゃあ、ウチが手を貸してやる! ウチにかかればこんな鎧なんてすぐに治せるんだから! ちょっと、そこのゾンビお爺ちゃん、アンタ、悪の幹部だろ! 少しくらい時間稼ぎでもやってみなさいよ!」


「ココは逃げルのが上策でショウ! しょうがナイ、ココはネオ・トマホークさんをお披露目ですヨ!」



 オプティマは渋々、秘蔵のフレッシュ・ゴーレムを召喚した。時間稼ぎをするつもりのようだ。それにこの馬鹿女は鎧を修復すると言った。こんな役立たずの声がデカいだけの女に何が出来ると言うんだ?

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