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第290話 無意識の生む力


「試せるだけの技は試してみた。今度は武器種を変更してみるのもいいかもしれない。」



 私はラヴァン先生達と一緒に女性型のゴーレム二体と戦っている。私がぜんえいを務めて、ラヴァン先生達、学院代表の魔術師の皆さんに援護をしてもらっている。



「そこでロックウォールを作って遮るんだ!」



 援護の指揮はラヴァン先生が執っている。的確な指示で、二体同時に私へ攻撃の矛先が向かわないようにしてくれている。攻撃魔術で牽制しても、無効化されてしまうので、地面に岩壁を作って遮ってもらったり、植物の蔦で体を絡め取ってもらったりしている。



(ドガァ!!)



 ゴーレムは岩壁すら簡単に破壊してしまう。女性型とはいえ、あくまで姿形だけで腕力は人間の男性を十分に上回っている。でも、今のところ足止めをするのはそれが最適らしかった。蔦は体の表面に仕込まれた刃で簡単に振りほどいてしまう。この女性型の全身には様々な近接戦闘用の武器が仕込まれている。



(ブワッ……シュバッ、シュバッ!!)



 連続での回し蹴り。これもただの格闘攻撃じゃなくて、足を刃に変えての攻撃だった。見た目は格闘だけど、剣を使った攻撃と変わらない。うっかり触れてしまったら、体が切断されてしまう。



(ブンッ!!)



 回し蹴りを躱したと思ったら、跳躍してきて頭上から腕を振り下ろしてくる! 瞬時に横へ躱して難を逃れたけれど、先程までいた所の地面が大きく抉れてしまっていた。素早い攻撃だけじゃなく、重々しい破壊力のある攻撃まで仕掛けてくる。細身の体なのに腕力も恐いくらいの強さを持っている!



「エレオノーラ、伏せろ!」



 ラヴァン先生の声を聞いて咄嗟に身を屈める。頭上を切り裂くような衝撃波が通り過ぎていくのを感じた。遠くには牽制を受け動きを遮られていたもう一体がいた。今の攻撃はその腕を弓に変形させてこちらに放ってきたみたいだった。ありとあらゆる間合いからの攻撃に対応しているなんて……恐ろしい適応力!



「なんということだ! 遠隔攻撃手段までもっているとは! もっと的確にゴーレムの動きを遮るんだ!」



 先生の指示で牽制が更に激しくなった。岩壁でゴーレムを囲い込み、岩壁の強度を増すためにその周囲に蔦を纏わせている。これなら岩を砕かれても、すぐには崩れない。その間にラヴァン先生も魔術の集中に入っている。



「私も攻撃の手数を増やさないと!」



 武器の攻撃だけじゃなく、魔術の攻撃を織り交ぜるのはどうだろう? ファルさんは器用に熟しているけれど、私はまだ併用する攻撃が十分に出来てない。流派梁山泊の戟術はそもそも魔術との連携は考えられていないので、組み合わせるのが難しい。



「手を考えるのは難しくても、最大限の悪あがきはしてみせる!」



 私は難しく考えすぎるから、いかにも優等生的な対応をしてしまう。手数の多い、相手に予測が付かないような攻撃をするには柔軟に考えないといけない。ロアの行動を見ていると他には思いつかないような突拍子もない行動を取っている。そこからヒントをもらわないと。



《考えるよりも先に手が出るんだよねぇ。なんか感じたままに空いているところにこう! 次はここに攻撃を置くような感じで……、》



 以前、彼に戦闘の時はどう考えているのか、聞いたことがある。聞いてみても結局、私には訳がわからなかった。そんな予測のつかない思考が彼の強さにつながっているのかもしれない。その間にも私は相手の攻撃を淡々と躱し続けている。もしかしてこれが……。



「……敵は高速の攻撃には反応できぬ! 各々方も試してみるが良かろう!」



 離れたところから侍さんの声が聞こえてきた。早くも敵を打ち倒したみたい。高速の攻撃には反応できない? 私のアクセレイションなら可能かもしれないけれど、それだけだと決め手に欠ける気がする。



「プラネット・リング!!」



 ラヴァン先生が無数の氷の粒で出来た輪で、ゴーレムを拘束していた。氷の粒は黒い雲によって徐々に消えていっているけど、時間がかかっている。無数の攻撃にも反応しきれないのかもしれない。それなら……、



「ダークネス・ミスト!!」



 攻撃力は低いけれど、確実に相手の動きを制限する闇の霧を発生させた。少しだけならアテの集中を阻害するだけだけど、無数なら相手を昏倒させる効果がある。この学院で学んだ魔術!



「アクセレイション!!」



 身体能力を向上させ、高速で敵を攪乱しながら攻撃を加える! 動きの向きを変える度に一瞬の使用に留めれば体への負担は少なくなる。



「踏宙華葬!!」



 一瞬のうちに相手を切り刻む。魔術との相乗効果で相手は防御行動を取ることが出来ずに私の技の思うがままになった。そのままの勢いでラヴァン先生が拘束しているゴーレムも同じ要領で切り刻んだ。



「高速で出来るだけ連続的に攻撃してみて下さい! 反応が遅れるようです!」



 無茶な要求なのはわかってる。少しでも可能性のある方法を共有しないといけないと思った。その時、私は大事なことに気が付いた。ロアの戦況は? 彼は今、どうして……、



「……止めだぁ!!」



 彼は今、正に命を摘み取られようとしていた。どうしてもっと早く気付かなかったの! 彼は相手の突進に対して抵抗しようともしていなかった。肩を脱力し、手にした剣もだらんと地面に垂らしていた。



「天破奥義、無影刀陣(むえいとうじん)!!」



 気付いたときにはロアはタルカスの背後まで走り抜けていた。次の瞬間には相手が膝から崩れ落ちた。よく見たら足が全て切断されている。



「ぐわぁぁぁぁっ!!!」


「天破陽烈……八刃斬!!」



 瞬く間にタルカスの両腕が切り落とされた。絶体絶命の事態が、たった一瞬の出来事でひっくり返ってしまった。まるで夢の様な出来事だった……。

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