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第285話 出し惜しみはするなよ?


 タルカスの大斧による嵐のような攻撃は延々と続いていた。大抵は俺自身が義手で受け止め威力を殺しているが、回避した時にヤツの破壊力の凄さが良くわかる。



「インペラトール・インヴェイド!!」



 地面が抉れる、衝撃波で建物や樹木が大きく損壊するといった感じだ。下手に躱した方がヤバいのが良くわかる。今の攻撃も躱したため、大きなクレーターが出来てしまった。



「まだ、剣を抜かんのか? 私がここまで激しい攻撃を繰り返しているというのに!」


「最初からアンタと戦いたくないって言っただろ? 初志貫徹したまでさ。」


「抜かぬなら、抜かしてみせよう、勇者ロア!」



 斧はそのままにして、背中から何かを取り出そうとしていた。別の武器を使うのか? ただでさえ斧で両手が塞がっているというのに。



「抜かせるからには、切り札ともいえるコレを使わせてもらう! その名も“フェイタル・ギア”だ!」



 タルカスが取り出したのは巨大な小手の様な物だった。でも、手首から先の部分が普通じゃない。大きなかぎ爪になっているのだ。上下に二本ずつ、凶悪な鋭さを持った爪。こんなのに掴まれたり引っかかれたら確実に即死だ! それとは関係無しに肘の部分にはポールのような物が突き出ていた。タルカスはそれを左手にはめ込んだ。



「通常の手とは違うが、このように武器を掴んで支えることも出来る。当然、これ自体も武器としては一級品だ! さあ、お前の剣を見せてみろ!」



 ここまで挑発されたのなら、出さざるを得ないかもしれない。武器を二つ同時に使われると対処が難しい。それにあのかぎ爪は斧よりもよっぽど脅威を感じる。俺の勘がアレを警戒しろと言っている。本人が切り札と言っているのも嘘じゃないだろう。



「じゃあ、抜かせてもらおうかな!」



 義手の手首と腕の内側が開いて、手元に剣が滑り落ちてくる。義手に収納している分、以前よりも小ぶりになってしまったが、能力は前と変わりない。それどころか抜剣しなくても、剣の能力はある程度使える。義手も元は剣の一部を使って作られているからな。



「フフ、やはり、以前よりも小さくなっているな? この学院にやってきた頃よりも。」


「見てたのかよ。」


「当たり前だ。この学院ならばありとあらゆるところに我らの“目”はある。見るなという方が無理がある。」



 色々、情報が漏れているのは本当だったんだな。ゴーレムだけじゃなくて、魔法で作動する物全般が支配下に入っていると、前に言ってたな。話によれば、“目”が付いていない物にも偽装して仕掛けられていたみたいだし。油断も隙もありゃしない。



「では早速試してやろう!」



 タルカスは大斧を振りかぶり、襲いかかってくる。相変わらず、この突進だけでも人を殺せそうな勢いだ。当然、斧の一撃はそれ以上の威力があるのだが。



(ゴギィィィン!!)


「ムウ! その様な華奢な剣で良く受け止めきれるものだ! しかも、刃の部分がないというのに!」



 剣で受け止める。相手の威力を殺した上で受けるのだが、当然義手だけで受けるよりも楽に受ける事が出来る。もちろんそれだけじゃない。



(ピッ……ピシ、ピシ!)


「何? やはり受けきれなかったのではないか? 武器が軋んでおるぞ?」


「それはどうかな?」


(バギャァァァン!!!)



 斧が俺の剣と接していた部分を起点として、斧頭が真っ二つになった。受けると同時に相手の武器を破壊したのだ。剣を使うのなら、こういうこともあっさり出来てしまう。義手と一体化して、前よりも剣との一体感が増したから出来ることだ。俺は義手にしてから大幅にパワーアップした!



「受けるだけではなく、我が斧を斬っただと!? 刃がない剣にここまでの力があるというのか!?」



 新型の剣で戦うのはほぼ始めてだから、正直、どこまでやれるのかわからない。本気でやればどこまでの破壊力になるのか? 想像しただけでも、恐ろしい。軽く立ち回るだけならコントロールもしやすいんだけどね。



「仕方ない。フェイタル・ギアを遠慮無く使わせてもらおう!」


(ガキ、ガキン!!)



 タルカスは大きなかぎ爪をワシワシと閉じたり開いたりして誇示している。よっぽど使いたかったと見える。それだけ自慢の武器なんだろう。たっぷりと俺に見せつけた後、その凶悪な爪で攻撃を始めた。



「掴み殺して、引き裂いてくれるぅ!!」



 興奮しているのか、攻撃の勢いは更に苛烈になり、爪で掴もうと轟音を立てながら振り回してきた。斧と違って、引き裂くだけじゃなく、突き刺す攻撃も出来るので、バリエーションが多くなり厄介だ。



(ガギィィィン!!!)



 避けきれない攻撃を受け止め、辺りにけたたましい金属音が鳴り響く。流石に重量は大斧の方が重かったらしく、爪はまだ軽さを感じる。とはいえどっちも喰らったら即死級の威力だけど。



「よくぞ受けた。よくぅぞぉ……、」



 ヤツの行動に違和感を感じた。斧の時と同様、こちらは威力を殺しつつ受けているので、悔しがるのかと思ったら……、



(ズゥドォン!!!!)



 突如、かぎ爪の手甲から爆発音が響いた! ふと、爪の付け根を見ると、中央部にはポッカリと穴が空いている事に今さら気付いた。その瞬間、穴から何かが飛び出てきた……!

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