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第278話 三番手ってことで、オチはお願いします。


「次は君かね、侍君。最初に声を上げた者が最後でなくて良いのかね?」


「当然、問題などござらんよ。拙者が二番手を務めねばいかんのでござるよ。」



 嘘つけーっ! 何にも相談してないのに問題ないわけあるかい! ちょっと待て、コレ大喜利大会とかっていうドッキリではなかろうな?俺が綺麗にオチを付けないといけないじゃないか! 勇者はそんなことする職業じゃないよ!



「……。」



 侍は教授の正面に立ち、精神統一を始めた。距離的にはギリギリ結界にパンチが命中する程度の間合いだ。加えて侍の構えも、右拳は脇の下まで引き、左拳は前に出した格好になっている。……コレ、“雷覇音速拳”直前のかまえじゃないか! あんなの使ったら、反射でこの建物どころか、学院全部が吹き飛びそうだ! やめろ!



「……。」



 侍の精神統一は長く続いていた。侍が技を出す直前のピリピリと皮膚を刺すかのような、鋭い殺気が感じられない。むしろ、侍自身の気配が薄れていっている。何をしようとしているんだ?



「……せいっ!!!」


(……ピッ。)



 侍は右拳を突き出した。いわゆる正拳突きと言う技だな。目にも止まらぬ、高速の突きだったが、結界は何も反応を示していない。軽く音が鳴ったか、鳴ってないか、というくらいだ。拳は結界に触れているのに?



「……お見事。結界に触れても結界が反応せんとはな。」



 会議室がザワザワし始めた。また失敗、何も意味がないのでは、とか言い合っている。コレはただの寸止めなのではと、俺も思う。



「諸君、これの凄さがわからんのかね? 私の結界は軽く叩こうとした程度でも、手痛い反撃を行う。彼はその反応をゼロにしたのだ。凄い技術だぞ。」


「教授殿はお見通しであったか。」



「君は破壊のエネルギー、相手を倒すという意志を極限に減らし、ゼロにした。武術家達の言う、殺気というものを消した上で拳を放ったのだ。これは中々出来るものではない。魔術師でさえ同様の真似を出来る者はそうそうおるまい。」



 この解説でみんな納得したのか、おおーっ、とか、そんなことが可能なのかとか言い始めた。たしかにこれは凄いかもな。でも、似たような技の使い手がいたような気が……。



「拙者の番は終わりでござる。後は勇者、お主の出番でござるよ。」


「お、俺? お前に出来なかったら無理だろ……。」


「拙者は拳術の達人が使ったと言われる、“殺気なき技”を聞きかじった話を元に再現したのでござるよ。」



 俺もそういう話を師父から聞いたような? 確か寝ているときに、血を吸おうとして近付いてきた蚊を寝たまま、拳を放って打ち落としたとかなんとか? 嘘みたいなホントの話があった。



「他に手本となった例を目の当たりにしたからこそ、拙者も再現を試みたのだ。拙者はお主の秘剣を真似た。あの“殺気なき剣”をな。それでも今の拙者にはこれがせいぜいでござるよ。」


「え? 俺の? 何を?」


「あの“八刃”と申す技でござるよ。あれこそ、この難題を解決する手段でござる。」



 でも、あれは禁止されてるんだけど? しかも、峨嶺辿征まで対策されちゃってる。どうすれば……。



「……。」



 策は思い浮かばないが、教授の前に立つ。でも何をすればいい? 何をやれば、この結界を破れるんだ?



「……結界の下の床を掘って中に到達するというのは……?」


「もちろんそれでは破れない。床や地面を掘ろうと、結界の範囲もそれに従い、下方向に広がるだけだ。」



 ですよね~。そういうのもダメですよね? 下からがダメなら、上から攻めれば……ってそれも同じ結果になりそう。



「拙者が行った事と、結果から考えてみるのでござるよ。あれがほぼ正解だったと拙者は信じておる。」



 侍は殺気を消して結界を破ろうとした。でも、破れなかった。とはいえ、結界の反射反応はなかった。タニシの低威力魔法でも反射されたのに、だ。この事実に答えはあるのか……?



「……。」



 俺は余計な邪念を消して、結界へと手を出した。ごく自然に、結界が存在しないかのように何も考えずに手を差し出す……。すると、結界をすり抜け俺の手は教授の手元まで伸びていった。



「……?」



 教授は俺の手を掴み、握手の形にした。まるでそうなることを願っていたように……。



「……ほう。出来たか。私の結界を突破することが。合格だ。」



 え? まさか、結界をすり抜けただけだったけど、成功扱いらしい。策もなく無意識的にやったことなのに……。



「君の話は聞いていたのだよ。相手を傷付けることなく倒す秘剣の話をね。それがどんな物かこの目で見てみたかったのだよ。それほどの奇跡を起こせるのなら、無理難題を吹っ掛けても乗り越えられるのではと、考えたのだよ。」


「いや、俺は考えもなしに……、」


「そうではない。君の仲間が教訓を見せてくれたからこそ成功したのだよ。しかも、それぞれ異なる能力の持ち主が力を合わせた結果だ。無意識的にとはいえな。」



 ウチら何にも相談とかしてないんだが? とはいえ俺が一番手なら成功しなかったような気がする。タニシの失敗とか、侍が出したヒントとか、それをバネに成功を収めたと、教授は言いたいのか。


「見たか、諸君? 我々も彼らを見習わねばならん。いつまでもいがみ合っていては脅威に立ち向かう事も出来ぬ。学長の意向など撥ね除ければ良い! 互いに協力し合い、平和的に解決しようではないか!」



 会合に集まった人全員が教授の言葉に賛同していた。なんか険悪ムードで始まったが、最後はうまくまとまった。これならタルカスや学長に立ち向かえるかもしれない!

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