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第270話 ガワは無事でも、中身が無事とは限らない。


「銀ピカの持っている武器に気を付けろ! アレはどんな物でも破壊する魔術を撃ち出す武器だ。金ピカの筒も同じ効果がある。」


「フム。噂に聞く、崩壊術という物でござるな。英雄殿から聞かされておるから、どんな物かは存じておる。」



 聞いたくらいで対処出来る代物ではないことはヤツも理解しているだろう。どう避けるか、もしくは撃たせない様に立ち回るのがせいぜいだ。



「拙者としては、勇者の剣技に対抗する術を編み出す糸口となるやもしれぬからな。これほど、適切な相手はおらぬよ。」


「勇者を倒すための? 舐めた口を利くな。東方の野蛮人の分際で! 貴様らに次などない。この場で屍すら消失する運命なのだからな!」



 言うや否や、即座に破壊を放ってきた。侍はわずかな動きで躱し、後方の建物に穴が空いた。初見で反応出来るとは、末恐ろしいヤツだ。



「フム。早いな。間合いを問わぬ居合い抜きに似た物を感ずるな。これは手強かろう。」



 今度は侍が瞬時に消えた。気付いたときには侍は銀ピカまで後数歩の所まで迫っていた。互いに武器を相手に差し向ける段階へ移行している。



「破壊!!」


「斬っ!!」



 侍の刃の方が先に到達し、銀ピカの魔術触媒を側面から叩き逸らしつつ、前腕を斬りつける。しかし、傷一つ付いていない。侍の雷の刃ではやはり通用しないようだ。



「残念だったな! その雷の刃では我が魔骸布を傷付けることすら出来ない!」


「……。」



 銀ピカの野次りに反応することもなく、侍は神速の打ち込みを続けていた。袈裟懸け、突き、横薙ぎ、様々な攻撃を当ててはいるが、当然、何のダメージも与えていない。銀ピカも通用しないことをいいことに回避を積極的に行っていない。



「ご自慢の刀剣も宝の持ち腐れだな。強固な鎧の前には、その切れ味も無用の長物だ!」


「お主、随分と口が達者であるようだな。少しは相方の事も注視した方が良いのではないか?」



 銀ピカはハッとなって、金ピカの方を見た。俺もつられて見てみれば、金ピカは砂塵武者に翻弄されていた。突きや蹴り、格闘主体のその攻撃に圧倒され、手も足も出ていない様子だった。先程の侍の様な技は使っていないが、豪腕、豪脚の圧倒的なパワーで力押ししている。



「馬鹿な! あんな力任せな攻撃で押されるとは!」


「やはり、その鎧は衝撃を抑える力が弱いようだな。甲冑が刃物や術に強くとも、中の者が衝撃に耐えきれぬようでは、無為となろう。」



 銀ピカが侍の攻撃を掻い潜り、相方の元へ向かおうとするが、侍がそれを阻む。銀ピカはかなりのスピードで動いてはいるが、瞬時に無駄のない動きで侍がそれを制している。完全に立ち回りの体術の上でも差を付けられている。魔術師と戦闘の専門家の違いを如実に見せつけている。俺でもあんなヤツを相手にするのは骨が折れる。大武会の時のそれよりも更に強くなっているのだ。本当に恐ろしい男だ。



「ええい、鬱陶しい! 喰らえ、切断・破壊(ギロチン・バースト)!!」



 苦し紛れに銀ピカが今まで見せたことのない攻撃を繰り出した。触媒を真一文字になぎ払いながら、破壊を繰り出している! 点の攻撃のみならず、切断するような使い方も出来るとはな!



「良いぞ、良いぞ! 自らを修羅と化すのだ!そう来なくては、張り合いがない!」



 意表を突く銀ピカの攻撃を、侍は身を屈めて難なく躱している。その刹那、侍は反撃に移った。



震電雷刃烽(しんでんらいじんぐ)!!」



 侍は刀の刃を上に向け、飛び上がる様に斬りつける。銀ピカは状態を後ろに反らして躱そうとするが、回避しきれず、斬られる形になった。当然傷は付いていないが。衝撃で大きく体勢を崩すことになった。



「激・地磊震(じらいしん)!!」



 侍は飛び上がった体勢から、落下する勢いで振り下ろしの一撃を相手に見舞った。銀ピカの頭部を思い切り強打し、そのまま地面へと叩きつけた! 兜が凹む程の強烈な一撃だった。流石に銀ピカもしばらくは立ち上がれないだろう。



「よし! ブドーよ、あの技を見舞うぞ! 雷光引力波らいこういんりょくは!」


「グロロローッ!!」



 侍と砂塵武者は互いに引力波を出し合い、金ピカの動きを捕らえた。大武会で見せた大技を使うつもりらしい。



雷光一刀閃(らいこういっとうせん)!!」



 引力波を伝い、侍は金ピカの首を狙う攻撃を見舞った。このまま、直撃をするのかと思いきや……銀ピカがその間に割り込んだ。



「させるかぁー!!」



 見事に銀ピカの首に刃が食い込んだが、そのまま、上方へと滑り、兜が跳ね飛ばされた。当然、素顔が露わになり、女性の顔が白日の下に晒される結果となった。



「なんと!? お主は女子(おなご)だったのか!?」



 侍はその素顔に驚愕していた。正体の上方までは知らなかったようだ。動揺する侍の隙を見て金ピカが相方の体を抱き、その場から離れた。



「……許さんぞ。次は確実に貴様らを殺す!」



 最後に言葉を残し、転移魔術で二人とも姿を消した。逃げるのも無理はない。確実にヤツらが不利になったのだからな。



「拙者としたことが、素顔如きで動揺してしまった。」



 女には刃を向けない主義なのか? ヤツの意外な弱点が露呈したな。それよりも現れて以来終始無言の金ピカがしゃべっていた。あの声は……? 最近、聞いたことがあったような気がするが、思い出せない。正体は誰なんだろうな?

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