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第267話 誉れを持ってかかってこい!


「そうか、貴様か……勇者を裏切りヴァル・ムングについたサムライというのは。」


「裏切り? 勘違いしておるようだが、拙者と勇者はそのような間柄ではない。いずれ決着を付けることを誓い合った、“戦友(とも)”と言った方が正しかろう。」


「フン、ただの言葉遊びではないか。とんだ食わせ者だな。」



 俺から見ても、侍が決して味方だった訳ではないし、相方もそうは思ってはいないはず。だからといって敵とも認識していない。要するに顔なじみの因縁の相手というだけだ。



「俺の相手を横取りしに来たんだろう? 止めてもヤツらとは戦うつもりだろ? だったら、別に止めやしないさ。」


「かたじけなき候う。拙者にお裾分け頂き感謝する。」


「俺に感謝するなよ。一対一と見せかけて、後出しで相方を連れてきた銀ピカに言いな。」


「言いがかりはやめてもらおう! 一対一と、私は明言していない!」



 ハッ、口では何とか言っときながら、動揺してやがる。基本的には卑怯と言われるのには慣れていないらしい。悪役としての経験則が足りないと見える。中身は若いらしいから当然か。



「早速、手合わせに入ろうではないか。」



 侍は刀も出さずに構えを取る。どういうつもりだ? 素手でアイツらとやり合うつもりか?



「気を付けろ。アイツに魔術は通用しない。金ピカの方は反射もしてくる!」


「承知しておる。まずは鎧の強度とやらがどれ程の物か見ておきたいのでござる。」


「大した自信だな? ゴルディアン、金の魔骸布の力を見せてやれ!」



 相手も様子見で金ピカと戦わせるようだ。銀仮面本人の体力回復も兼ねていると思われる。それは俺も同じだ。これまで全力で使った魔力の回復には時間がかかる。おとなしく二人の戦いを見ているしかない。



雷覇滑走術(らいはかっそうじゅつ)!!」



 侍が俊足で相手に接近する。雷の引力・斥力の力を応用した、高速移動の技であるようだ。魔術を適用した体術だ。魔術師にこんな発想の使い方をできるヤツはいない。体術・魔術の双方を熟知したヤツにしか出来ない技だ。



「……!?」


「何という速さだ!? 我々の魔骸布に匹敵するスピードではないか!」



 高速で間合いを詰め、金ピカに対して体術を雨あられの如く、全身に浴びせていた。もちろん傷一つ付いてはいない。しかし、喰らっている側の狼狽えようが尋常ではない。侍は一体何をしているんだ? よく見れば、間接部に平手、手刀、肘打ち等の攻撃を浴びせている。



「どうした、ゴルディアン! そんな腰の入っていない打撃が何になるというのだ! すぐにヤツを弾き飛ばしてしまえ!」


「……!」


「知らぬのかな? 東洋に於いては甲冑を纏った敵に対しても衝撃を浸透させる体術が存在するのでござる。その名も“骨破浸透術(こっぱしんとうじゅつ)”という。憶えておくがよい。その名の通り骨身に染みる技の大全なり。」



 金ピカは急激な高速移動で侍から逃れ、例の大筒を構えて撃とうとしていた。そんな隙の大きい攻撃がヤツに命中するはずがない。その間に侍は再び間合いを詰め、後ろに拳を引き下げ必殺の一撃を見舞おうとしている。



雷覇音速拳(らいはおんそくけん)!!!」


(ズドォォォォォォォン!!!!!!)



 まるで落雷が発生したかのような凄まじい正拳突き。侍の容赦ない一撃が金ピカの腹部に命中し、大きく後方へ吹き飛ばされた。



「魔術師殿、魔術が効かぬと言っておったが、この通り効いておる。勘違いではないのか?」


「直接当てても効かないだけだ! アンタのは使い方がイレギュラー過ぎるんだよ!」


「いれぎゅ……? はて、意味の知らぬ言葉だな。拙者もまだ勉学が足りぬようだ。」


「馬鹿な!? 魔骸布に損傷を与えただと!? 武器を使わない、ただの生身の一撃で!?」


「様々な方法で武具、肉体を駆使して戦うことこそ真の“武士もののふ”。これぞ、武士もののふの誉れの神髄なり!」



 何だよ、“誉れ”って。前もどうのこうの言ってたな。まあ、それはそれとして、魔術を威力の補助に使った程度で、ヤツらの鎧を凹ませるとは……。相変わらずとんでもない男だ。大武会で出し抜いてやったとはいえ、油断の出来ない男だ。俺もまだまだ修行が足りないな。



「クッ! 情報よりも遙かに恐ろしい男であるらしい! 私達も全力で相手せねばなるまい!二人同時に行くぞ!」


「そうであれば、拙者も応えねばなるまい。いざ、尋常に勝負!」



 とはいいつつ、侍は傍らにサンド・ゴーレムを出現させた。例の大柄な甲冑を着けた大男である。どうやら、俺にはまだ出番を与えるつもりはないようだ。



砂塵武者(ブドー・マスター)だけではない。拙者本来の戦闘法も披露致そう。」



 手元から徐々に美しい曲線を描く細身の刀剣を出現させた。ヤツの愛刀“地雷也”だ! 大部分を地属性で構成し、雷の力を増幅・蓄積させ、雷の刃を纏わせる。それがアイツのアストラル・ブレイドだ。



「この男も魔法剣を使うようだ。だが私達の破壊に通用するかな?」



 双方のにらみ合いが始まり、交戦の下準備は整った。これでは俺が割り込む隙がない。このまま魔力の回復に時間を使わせてもらおう。

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