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第265話 力士は空飛ばねぇんだわw


赫灼の雨ハイス・ロット・レーゲン!!」


「地獄火炎破砕祭り!!」



 ゴーレム達との戦闘は順調に進んでいた。既に過半数の兵力を減らした。もちろん、そこまで減らしても、かなりの数がいる。このペースで行けば勝てるはず。でも逆に、うまく行きすぎていることに不安を感じる。



「いがいとやるようだな。我らの軍勢をここまで減らすとはな。」


「よそ見してんじゃねえぞ、コラぁ!!」



 ゲイリーさんが再びタルカスを戦いに引き戻す。自軍の数が減っているにも関わらず、タルカスは余裕を見せていた。戦況も確認しながら、ゲイリーさんの相手もしている。タルカスが驚くべき強さを持っているのは間違いない。その上、まだ隠し球を持っている。こうなるのも計算尽くだったのではとさえ思えてくる。



「ヴォルフさん、このまま戦っていても勝てると思いますが、イヤな予感がします。早々にこの場を片付け、ゲイリーさんに加勢しましょう!」


「オイもそう思っていたバイ。あの技で一気に片を付けた方が良さそうでゴワス!」


「ええ、あの技ですね。」



 ヴォルフさんが僕の前に立ち、技のセットアップに入る。僕も魔力の収束を始める。この技の始動には僕の魔法力が決め手になってくるので責任重大だ。ヴォルフさんも準備段階として全身に炎の魔術を纏わせている。



「いきますよ、究極の合体技!」


「ドンと来い、でゴワス!」



 魔力を解き放ち、ヴォルフさんを前方へ吹き飛ばす! その勢いを利用してヴォルフさんが頭から敵の集団に突っ込む体勢になる!



豪熱爆炎火玉弾ごうねつばくえんかぎょくだん!!!!」


(ズド! ズド! ド! ドォン! バギャン!!)



 ヴォルフさんは文字通り、炎を纏った弾丸になり、ゴーレムを次々と蹴散らしていった。追従剣をコントロールする技術の応用でヴォルフさんが動く起動をある程度制御も出来る。この特性で避けられたとしても、再度攻撃することが可能である!



「これで終わりだ!」


(ドギャアアッ!!)



 最後の一団も壊滅した。意外なほどあっけなく終わった。とはいえ、僕達二人も消耗は激しい。普通に戦っていたら途中で力尽きる危険も多かったので、敢えてこの攻撃を使った。



「おお! 何ということだ! 我々の手勢が全滅してしまったではないか!」


「ぐははっ! 後はお前だけだ! 人形の大将さんよ!」



 タルカスは部下が全滅したというのに動揺することもなく、芝居がかった演技で驚いている。やはりこれも作為的な物を感じざるを得ない。それでも、ゲイリーさんはお構いなしに攻撃を続けている。



「爆、竹撃!!!」


(ドッグワァァァァァァン!!!!!!)


「グォァァァァァッ!!!」



 ゲイリーさんが爆発を伴う強烈な攻撃を食らわせた。タルカスはその衝撃で吹き飛びダウンした。四肢が欠損したり、派手に壊れてはいないが全身にヒビが生じていた。これを見る限り、虫の息というところまで追い詰めたのではないだろうか?



「ぐ、ぐぬぅ!? お、おのれ! このようなところで朽ち果てる訳にはいかぬ!」


「ハハッ! ザマァねえな、タルカスさんよ!人形の分際で俺っち達に刃向かうのがいけなかったんだよ!」



 ボロボロのタルカスを見て、ゲイリーさんは勝ち誇っている。どう見ても、僕らの勝ちは目に見えている。でも、そこが引っかかった。あまりにも楽に勝ててしまったのはおかしいと。それはヴォルフさんも感じているようで、身構えた状態で様子を見守っている。



「行くぜ! 止めさしてやる! あの世でせいぜい悔しがりな!」



 ゲイリーさんはタルカスに止めを刺そうと、剣を大きく振りかぶった。タルカスは諦めたように身動き一つしていない。だが、そこで異変が起きた。タルカスの体がその場から消失したのである!



「なあんちゃって!!」



 タルカスはゲイリーさんの背後にいた。手の平をゲイリーさんの背中に押しつけている。その瞬間……、



(ボンッ!!!!)



 大きな破裂音と共にゲイリーさんの体は吹き飛んだ。その体には大きな穴が空いている。そのまま遠くの地面に飛ばされ、ピクリとも動かなくなった。あんな大穴が空けば生きていられる人間がいるはずがない。



「ピンチが一転して、奇跡の大逆転という訳よ! 演出ってのはこうでなくちゃあなあ! 人間の間では定番だろう?」



 得意げに語るタルカスの体はヒビが入った部分が崩れ落ちていき、中から別の新しい体が露わになった。黒い豪奢な鎧を纏ったような姿をしている! その体には今までのダメージが全く見られない!



「オーバーボディというヤツだ。我々が開発した偽装ボディの下に新型のボディを仕込んでおいたのだ! 驚いたであろう?」



 これが彼らの切り札なのか! 今までの伝統的な戦闘用ゴーレム達は僕達の目を欺くためだったのだろう。彼の周りにはそれぞれ違う形状をした黒いボディを持つゴーレムが援軍として現れた。彼らの姿よりもゲイリーさんを仕留めた攻撃は何だったのだろう? あの攻撃に僕はかつてない脅威を感じ始めていた……。

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