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第238話 時にはダーティーに


「さあ、どうするんだ? 俺を殺すか?」



 ジムは生き返らせてくれたゴーレム達へ義理を返すために俺を殺すと言う。人類そのものには恨みはあるが、俺には恨みはないはず。それを殺すだなんて出来るはずがない。



「挑発するだなんて、大胆な事をしますね。こちらには人質がいるということをお忘れなく。」


「ひょえあっ!? 人質だったことを忘れてたでヤンス!」


「ロアさん、わかっていると思いますが、あなたが下手に動けば、タニシさんは氷に貫かれて死ぬことになります。」



 見た目は全く拘束などされていないが、タニシが人質なのはまだ継続しているようだ。位置の関係上、タニシはジムの後ろにいる。サッと救出というわけにはいかない。無理に助けようとすれば、二人とも氷で串刺しにされてしまうだろう。



「こんな状況です。あなたが僕を制圧する方法なんてありません。かといって、僕があなたを倒すのは困難なのは目に見えています。」


「じゃあ、どうするんだ?」


「自ら命を絶って下さい。手段は問いません。」



 殺せるだけの実力がないのを自覚してるから、相手に自殺を求めるのか。コイツの性格からしたら当然か。事前にアンネ先生とトニヤを倒し、目の前で不意打ちとはいえ、七光りマンも倒している。



「俺に自殺しろってか? 確かに自分で殺すよりも確実な手段だろうな。それでも良心は痛むのは変わらないと思うぞ。」


「余計なことを言わずに、死んで下さい! こちらには人質がいるんですからね!」



 少なくとも先生二人はジム自身より格上。そんな格上を倒す俺とまともにやり合おうとするのは無謀と考えたのだろう。自分が操る氷と同様、大変クールな思考じゃないか。そのクールな思考を奪ってしまうと、この状況は維持できるのかな?



「わかった。お望み通り死んでやるよ。でも、その前にお前に渡しておきたい物があるんだ。」


「渡したい物? 何を渡すというんです?」



 俺は腰に下げていた小袋に手を伸ばす。この中には状況を打開するためのマル秘の品物が入っているのだ。



「それはな……これだ!!」


「はっ……!!??」


(ブシャァァァァッ!!)



 なんと! ゴーレムだというのに鼻血を吹き出していた。それだけじゃなく、鼻血の勢いで顔が取れた。お面みたいに。色々と矛盾したような光景だが、目の前で現実に起きている! しっかし、ゴーレムの人体再現技術すげーな! ほぼ人間じゃねーか!



「わ、わぎょーーーん!!??」



 取り出した物とは……タニシ謹製のエロ人形だ! 俺が所持していたのはエルの方だ! だからタニシも驚いている。とはいえ、タガメおじさん対策でタニシから預かっていたのだ。エルのを俺が持ってても問題ないし。今後、敵に襲撃されたときに意表を突くのに使えると思って持っておいたのだ。


 しかし、ホンモノはもっとスゴいぞ! 俺でも初見のときは鼻血吹いて卒倒したくらいなのに、ジムだったら大量出血死していたに違いない!



「う、うわ、ううあっ!?」



 ジムは思いっきり動揺していた。思っていた通りだ。実はこのエロ人形をタニシが披露したとき、ジムは目を背け、手で目を覆っていたのを目撃したので、もしかしたら……と思ったのだ。ロッヒェン同様、こういう刺激に弱いだろうと踏んでいたのだ。しょうもない作戦だが、ジムの隙を作るには十分だった。



「容赦なく行くぜ! せいっ!!」



 ジムの背後に回り両手首を掴み、腕を手羽状に極めて、腰に馬乗りになる様な形で両足を内側から固めた。



「うぐああっ!?」


「こ、コレはジェイ・ロック・スペシャルでヤンス!」


「コレはオマージュ技、ロア・パロディ・スペシャルだ!」



 ジェイ・ロック・スペシャル。ジェイの必殺ホールドを参考にした。ただし、ジェイのとは違い、相手とは背中合わせにはなっていない。俺はジムの背中を見るような位置取りだ。オリジナルのは再現が難しいんだよ。ジェイの身体能力がとんでもないからあんなことが出来るのだ。俺はせいぜいマネした技程度の事しか出来ない。



「まだまだ技の完成度は低いけど、魔術師のお前には十分効くだろ? 魔法の集中も出来ないだろうよ?」


「うぐぅ!? 勇者ともあろう人がこんな卑怯な手を使うなんて!」


「ああ卑怯だろうさ! でも、人類の存亡がかかってるから、俺は負けるわけにはいかないのさ。人道に反するマネはさすがに出来ないが、ウブな少年をおちょくる程度なら、俺はやるぜ!」


「格好いいのか、格好良くないのか、判断に困るコメントでヤンスぅ!」



 まあ、無茶苦茶な事を言ってるのは自覚してる。勇者である以上、簡単に命を自ら絶つわけにはいかないのさ。



「とりあえず、しばらく寝ててもらうぞ!」


「ぐえっ!? ぎがっ!?」



 腕を上に上げながらジムに対して体重をかけ、顔面を地面に叩きつける形で、うつ伏せに転倒させた。ジムは失神して、肩の関節も外れたので、しばらくは起き上がれないだろう。


 俺がここで死んだら、多くの人が死ぬだろう。死んだら守れるものも守れない。そのためには多少、友達には恥はかいてもらうさ。俺を殺そうとしてるんなら尚更だ。

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