表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
237/331

第237話 取り上げられた物を盗んできました!


「これはお前に渡しておく。理由は聞くな。」



 ゆーしゃ達が追加実習に行く日の朝、エピオンが二つの物を持ってきた。教室に持って来やがった! 目立つだろ! 空気読め!



「渡す相手間違えてない? これ、ウチのじゃないから!」



 前まではしょっちゅう見ていた物なのに、最近は見ていなかった物だ。これ、取り上げられてたんじゃなかったっけ?



「知るかよ。ヤツらは追加実習とやらに行ったんだろう? 早朝から。いちいち早起きしてまで渡すのはダルかったんだよ。」



 額冠とゆーしゃの剣。これ、学長に取り上げられたって聞いたけど、なんでコイツが持ってんの? 素行不良がバレて、学長のパシリにでもなったのかな?



「アンタ、学長のパシリにでもなったの?」


「は? 何言ってんだ、このバカ? んなわけないだろ。これは俺の意志で持ってきたワケじゃない。ヴァル様の命令でやったことだ。」


「相手が違うだけで結局パシリじゃん!」


「あぁ? お前、喧嘩売ってんのか?」



 クソ、結構恐い顔してるけど、負けないモンね! コッチも対抗してやる! そんなのでなんでもうまく黙らせられるなんて思うなよ!



「命令なんだから、しょうがないだろ。勇者の所へ持っていく前に、まずお前の所へ持っていけ、との話だから避けて通れなかっただけだ。」


「は? ナニソレ? 意味分かんないんだけど……?」



 意味分かんないと思ったけど、剣がウチと共鳴してる! おかしいな? 魔王に壊されてから反応はなかったのに? 修理はされてるってこと? 共鳴してるだけで真っ二つになってるのはそのままだけど、元通りになってるから治せるかも……?



お嬢さん(フロイライン)、勇者の剣を治しましょう! 治しておけば、持ち主の勇者に危機が訪れれば、勇者の手元に戻ります。この事は伝説にも良く出てくる話です。必ず勇者さんの助けになるはずです。」


「それぐらい、知ってるよ。治せばいいんでしょ、治せば。」



 勇者の逸話、特に剣に関しての逸話は生まれたときから、いくらでも聞かされて育ってきてる。子守歌もそうだったらしいし、隙あらば、そればっかりだったもん。



「……剣よ、元の姿取り戻し給え……。」



 だからほとんど暗記したくらいに憶えてる。そんな昔話、生きていく上で何の役にも立たないのに。ウチが巫女をやりたくなかった理由の大半がソレ。もうウンザリ。だから、他の人には語られたくない。昔を思い出すから。



「凄い! 目の前で剣の巫女の儀式を見れるなんて! 僕は光栄です。」



 大げさ! ジュニアめ、ウチの機嫌を取ろうとして大げさに言ってるな? そんな大げさにするからギャラリーが集まってきてるじゃん!集中してても、気配でわかる。気が散るよ、もう!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



(……羊の魔王(ハリス)の“切開(アインシニット)”は厄介なものだな。原理的には“破壊(デストラクション)”とほぼ同等とも言える。我々の技術でなければ再生は出来ない。全盛期といえど、魔術にも限界はある……。)



 あれ……? 剣を再生しようとしたら、変なのが見える? これは学院のどこかで若めのオジサンが剣に触れている? もしかしたら、これは剣の記憶なのかもしれない。



(……フフ、勇者の剣に関しての情報だけでなく、貴重な魔王の情報も手に入れることが出来た。学長には感謝せねばなるまい……。)



 この人、この声、どこかで会ったことがあるような? 誰だろう? つい最近……? 学院に編入してきた時だ! エルフ学長のとなりにいた人! 秘書とかかな?



(……そろそろ、学長も例の計画を実行に移すだろう。もうじき、あの事件の時期に差し掛かる頃合いだ。私もそろそろ立ち去らねばなるまい。……いや、敢えて残って、一部始終を見るのも一興かもしれん。程々に後学とさせてもらおう……。)



 なんだろ? この人、剣を治したみたいだけど、言ってることの意味が全然わかんない。情報? 事件? 例の計画? よく言う、“インボー論”とか言うヤツかな?



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「凄い! 元通りになりました! 元よりも美しくなったような気がします!」



 目を開けると、剣は元通り復元していた。ジュニアとか他のクラスメート達がソレを見てワイワイしてる。大道芸とかじゃないんだから、恥ずかしいよ! ……そういえば、エピオンがいなくなってる。終わったら、もっと愚痴を言ってやろうと思ってたのに! ムカツク!



「はあ、疲れた。変な夢みたいなのも見えたし! 朝からこんなコトさせられるとは思わなかった! 今日は寮に帰って寝てよっかな?」


「えぇ!? サボるんですか?」


「サボるとか言うな! ウチが悪いことしてるみたいじゃん!」


「……わかりました。体調不良ということにしておきます。」


「それで良い! じゃ!!」



 今日のお勤めはしゅーりょー! 寮に戻ってゆっくり二度寝します! 夢の内容は気になるけど、ウチの専門外の話だからどうでもヨシ!寝て起きたら、豪勢な食事にしよう! じゃないとモチベーション上がんないよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ