第235話 種も仕掛けもございません。
「どうして僕は粛正対象に入っていないんですか?」
ジム君はあっしを庇うように割って入りつつ、処刑しに来た先生に質問したでヤンス。ダメでヤンスよ! せっかく処されないんだから、下手に刺激したら、処されてしまうでヤンスよ!
「何故、と問うのか? 我々、浄化委員会の活動目的は伝統ある魔術師の家系を守ることにある。我々の粛正対象は一般の血筋であるにも関わらず、少し適性があるからといって魔術師になろうとする者たちだ!」
そういう理由~! 確かにあっしは魔術師の家系ではないでヤンス。でも、ちっとも適性がないのはここに来てハッキリとわかったでヤンス。適正、才能全くなくても抹殺されるんでヤンスかね? ちょっとくらい免除してほしいでヤンス! あっしは何も悪いことしてないでヤンス!
「適性が弱いという意味では僕も粛正対象の人達と同じです! 僕のような能なしは害にしかならないと思います!」
「適性が低い? そんなはずはない。君の家系、ワーロック家は代々、魔術師協会や学院に多大な貢献を重ねている。君はその血筋を引き継いでいるのだよ。今は開花していないだけで努力・経験を積めば、立派な魔術師になるはずだ! 血統によって才能は保証されているのだ!」
粛正対象以外には意外と優しいでヤンスな。普通にいいこと言ってるでヤンス。でも、あっしの説得よりも説得力があるから、負けたような気がするでヤンス。あっしのトーク力もまだまだでヤンしゅなぁ。
「先生の言うことは正しいのかもしれません。でも、僕が生身の体を既に失っていて、ゴーレムの体に置き換わっているとしたら……どうなりますか?」
「何を言っているのかな、君は? つまらない冗談はよし給え。」
そういえばジム君が本当にゴーレムなのかどうかは見た目ではわからないでヤンス。だから、ジム君が嘘をついている可能性もあるでヤンス。多分、嘘に決まってるでヤンス。多分?
「では、証拠を見せましょう。」
(カパッ。)
「……!?」
「わ!? わぎょーーーん!?」
か、か、か、顔が外れたでヤンスぅ! 顔がお面みたいに外れたんでヤンス! その下は金属で出来たガイコツになってるでヤンスよ! あうあわわ! コレはもう言い逃れできないでヤンしゅう! 少なくとも人間はやめてるでヤンしゅぅっ!
「く!? 何だねコレは? 私に対してつまらない幻術を見せるのはやめ給え! 冗談にしては趣味が悪すぎるぞ!」
「これが幻術でないのは先生ほどの魔術師なら見抜けるでしょう? 魔力感知出来るのなら、今の僕が魔力を使っていないのは良くわかるはずです。」
次は片腕を腕まくりをして、前に差し出したでヤンス。そしたら、今度は腕の肘から手首の所がパカッ、って開いたでヤンスぅ! そこから紐みたいな物を反対側の手で引っ張り出したでヤンしゅ!
「これは隠し武器の様な物です。普通の人間がこんなこと出来るはずはありません。せいぜい義手に置き換えたなら可能になる程度のことです。顔と腕だけではありませんよ。全身がゴーレムになっているのです!」
「ハハ、これはおおごとだ。学生の一人がゴーレムになっているとはな!」
ちょっと先生の様子が変わったでヤンス。あっしに対して向けていた恐い目をジム君にも向け始めたでヤンス! これはもう敵対モードに入ったのは間違いないでヤンスね!
「ゴーレム……ゴーレムか。私自身もゴーレムは作る。精一杯魔術の研究の結晶として最高傑作を作り上げる。その作品を愛でることはあっても、人、即ち知的生命体としては認識はしていない。それが魔術師としてのけじめだ。」
この人もゴーレム作れるんでヤンスか? なんだかイッキに親近感が湧いたでヤンス! あっしも人形を作るから気持ちはわかるでヤンス。でも、違うとこもあるでヤンス! 作った人形を生きてるみたいに愛するのがあっしでヤンス!
「ゴーレムは所詮、道具だ。知能を持っているからと言って、造物主たる我らと同等であるはずがない! よって、ジム・ワーロック、いや、なりすましたゴーレムよ、貴様も粛正対象として認定する! 造物主を欺いた罪は重いぞ!」
「道具ですか。タルカス様がこれを聞いたら、お怒りになるでしょうね。やはり、浄化委員会は抹殺対象としての優先順位を高くせざるを得ませんね!」
あうわぁっ! 二人が敵対関係になったでヤンス! 血で血を洗う展開が始まりそうでヤンスね。でも、あっしは? 後回し? よく考えたら、ジム君があっしを庇ってくれたと考えていいでヤンスかね? でも相手は先生でヤンス。勝ち目はあるんでヤンスかね? あっしも加勢する準備した方がいいでヤンしゅ? 当然、ジム君にでヤンすけど……。




