第232話 話は聞かせてもらった!
「そんな泣いたってダメですよ。泣き落としなんてベタな手法で僕の考えが揺らぐとでも思っているんですか?」
「違うでヤンス! あっしはそんなやましい事をしてるワケではないヤンス! 真剣に思ってるから、自然に泣けてきたんでヤンス!」
ダメでヤンス! あっしの普段の行いが悪いから、真面目に受け取ってもらえないでヤンス! これほど自分がお笑い担当な事を憎く思ったのは、今回が初めてでヤンス!
「タニシさんは僕のことを買ってくれているみたいですが、結局僕は無能で弱者なので、世の中にはいらない人間です。自分で死ななくても、いずれは自然に淘汰されて死に逝く運命なんです。」
「そんなことないヤンス! ジム君はいい子でヤンス。むしろあっしの方が碌でもない犬でヤンスよ! いつもミャーコちゃんにセクハラして、怒られて、セクハラして……。いっつもそれの繰り返しでヤンス!」
は、ハズカシ~! 恥の大告白をしてしまったでヤンス! 毎日毎日、エロにまみれた生活してることをカミングアウトしてしまったでヤンスよ! これでもうおムコにはいけないでヤンス! 一生引きこもってニートしないといけないでヤンス!
「何を言ってるんですか! こんな時までふざけるのは止してください! あなたはそんなことを言いますけど、セクハラをしているところをあまり見たことがありません! 毎日セクハラしてると言いますけど、毎日お店の経営に一生懸命になってるところしか僕は知りません!」
「へあっ!?」
ありゃりゃ? なんか真面目に返されてしまったでヤンス! セクハラよりも店の経営が忙しそう? 確かに最近はそうだったかもしれないヤンス。昼間は店の経営、夜はエロ人形の作成。学院に来てからはそういう毎日が続いてたような……。
「とにかく何を言われようと僕は考えを変えるつもりはありません。ただし、人間を滅ぼすことには加担しますが、あなたを殺すつもりはありません。さすがにあなたを殺すとなれば心が痛むと思いますので。実は僕は犬派だからという理由もありますけどね。」
「あっしは助けてくれるでヤンスか? でも、それは困るでヤンス。アニキやエルしゃん、ミャーコちゃんがいなくなると生きていけないでヤンスよ!」
ジム君がいたとしてもみんながいないのは苦しいでヤンス。だからといってジム君にも死んで欲しくないでヤンス! わがままだけどこれだけは譲れないヤンス! みんなが仲良く最善でヤンスよ!
「話は聞かせてもらった! 私が貴様の望みを叶えてやろうじゃないか。平等な死、と言う結果でな!」
氷の砦の中にイケメンな先生が急に入ってきたでヤンス! イケメンでヤンすけど、片頬に殴られた後があるからちょっと間抜けに見えるでヤンス? 女の人をナンパしようとして、制裁パンチを喰らったんでヤンスかね?
「ジェローム先生!? 何故、あなたがこんな所に? 今回の実習はあなたの管轄ではないのでは?」
「フフ、そんな物は関係ないぞ、ジム・ワーロック。それに私は君に用があるから来たのではない。そこの犬、タニシ・オガワに用があって、こちらに来たのだ。」
「あっしに何用でヤンスか?」
こんなイケメン先生があっしに何用でヤンスかな? ナンパしようとした女の子との仲裁役にされるでヤンスかな? それとも……エロ人形作成の依頼でヤンスかな? それだと嬉しいでヤンス。これを切っ掛けに学院内で評判になって、エロ人形作成師として名をはせて、社長になって、ゆくゆくは王様になって、おおぜいのかわいこちゃん達に囲まれてチヤホヤされて……デュフフフフフ♡
「タニシ・オガワ、貴様を抹殺しに来た! 貴様は魔術結社浄化委員会の粛正・浄化対象だ!潔く死に逝くが良い!」
「しょぎゃわーーーーーーん!!!???」
ぎょわーーん! あっしは死刑にされてしまうでヤンスか! 何をしたからでヤンス? もしかして、ミャーコちゃんに雇われた死刑執行官でヤンスかな? でも『魔城決勝ショッカーでいいんでないかい?』とか言ってるでヤンスから、死刑と見せかけて決勝戦がここで行われるかもしれないでヤンス!
「どうしてそんな暴挙を? 実習の真っ最中にそんなことをするのは許されません! いえ、普段であっても許されるはずがありません! それにこんなことをしたら担任のアンネ先生が黙っているわけがありませんよ?」
「アンネ先生か? 今、彼女は勇者ロアにペナルティを与えているから、その様な暇はないのだよ。邪魔をされては敵わんから、今の間に勇者以外の粛正対象を先に抹殺するのだ!」
先生が来ている? しかも、アニキにペナルティ? 何か悪いことを? もしかして! 武術を使ったことがバレたんでヤンスかな? それよりもこのままではあっしが処されてしまうでヤンス! ひょっとして勇者パーティー最大の危機が訪れている可能性が高いでヤンスぅ!




