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第230話 ダメ、絶対!!


「ダメでヤンス、ジム君! 悪の組織に加担してはいけないでヤンスよ!!」



 ジム君が悪の道に入るのを断固阻止しないといけないでヤンス。このまま不良になったら、取り返しがつかないヤンスよ。一度極道に手を染めたら、足を洗うのは大変でヤンしゅう!



「悪の組織? タニシさん、何か勘違いしてはいませんか? 悪なのは一般の人間達です。この世を正すために滅ぼす必要があるのですよ。」


「悪い人を倒すのはいいと思うでヤンス。でも、滅ぼすのはいけないでヤンスよ! 話し合えば解決する問題もあるでヤンス!」



 何事も話し合い、コミュニケーションが大事でヤンス! アニキもただ戦うだけじゃなくて、説得にも定評があるでヤンス。昔、エルしゃんが暴走したときも、戦いながら説得してたらしいでヤンス。この前の猿の魔王とも和解しそうになってたらしいでヤンスよ。



「話し合う? 甘いですよ、タニシさん。僕のような弱者やゴーレム達は話し合いの場に立たせてもらえないんです! 弱者は話し合いをするための知識、実力が不足していると! ゴーレムは道具の分際で意見するな、と平等に扱ってもらえないんです!」


「でも、話を聞いてくれる人を探して、徐々に説得していくしかないヤンス。倒すのは良くないヤンスよ!」


「そんな人がいるでしょうか? それ以前にあなた達コボルト等の獣人達も差別と迫害を受けてきた歴史があるじゃないですか?」



 そうだったでヤンス! 今は大丈夫でヤンすけど、ずっとずっと昔は大変だったらしいでヤンスね。獣人は魔王の眷属とか言われて、悪の認定を受けてたらしいでヤンス。それを口実に差別・迫害どころか、奴隷とかにされてたらしいでヤンス。今に生まれて良かったでヤンス。そんな時代に生まれてたら、あっしはすぐに死んでいたでヤンスよ。



「結局、人間は変わっていません。今は改善されたかもしれませんが、標的を変えて未だに差別と迫害をしています! 進歩をしない人間に成り代わって、今後はゴーレムが世界の中心になっていくのです!」



 進歩しない? 確かに変わってないところもあるでヤンス。獣人への対応は改善したでヤンスけど、未だに見下す人もいるし、あっしらコボルトを“ドージ”とかいう蔑称で呼ぶ人もいるらしいでヤンスね。



「すぐには変わらないでヤンすけど、ゆっくり説得して良くしていくしかないでヤンスよ! あっしら獣人もそうやって乗り越えてきたでヤンス!」


「ゆっくり? それでは困るんです! すぐにでないと、僕のように命を落としてしまう人もいると思います。ゴーレムだって、ゴミの様に廃棄されてしまう個体もいるはずです! 悠長な事を言ってられないんです!」


「人間を滅ぼすのだって、時間がかかると思うでヤンス! 同じ事してる魔族も未だに達成してないでヤンスよ? きっと不可能なんでヤンス。それだったら、アニキに相談して世界を変えていくしかないでヤンしゅう!」



 戦争が長引いたら困る人がいっぱい出てくるはずでヤンス。魔族達との戦争もそういう話が一杯転がってるでヤンスのに。それだったら、“差別されない”運動を精一杯やった方がいいでヤンス!



「勇者……。あの人にそんなことが出来るんでしょうか? 僕には信じられません。人一人にそこまでの力があるとは到底思えません!」


「少なくとも、ジム君は見たことがあるはずでヤンスよ! 大武会! それだけではないことをあっしは知ってるでヤンス! アニキは行く先、行く先で必ず奇跡を起こしてるでヤンスよ!」



 あの試合を見たんなら、信じて欲しいでヤンス! ジム君は自分と比べて落ち込んだみたいでヤンすけど、凄いモノを見たのは間違いないでヤンスからね。



「あの時のアニキはひと味違ったでヤンス! あの時は勇者の額冠の力に頼ってなかったでヤンス! 自力で事を成し遂げたでヤンスよ! それは今も同じ状況でヤンス! 今、額冠は学長が持ってるでヤンス!」


「勇者の額冠がなくても勇者の力を出しているんですか? ありえない……。あれは勇者の証で、あれがあるからこそ勇者の奇跡を起こせると昔から言われているのに……?」


「アニキの生い立ちはジム君とほとんど同じでヤンス。落ちこぼれて武術の名門から追放されたでヤンスよ。あっしだって同じでヤンス。取り柄が無い凡人でヤンス!」



 そんな人でもがんばれば何とかなるのを教えてくれたのがアニキでヤンス! だからジム君にも諦めて欲しくないでヤンスよ!



「それだけじゃないでヤンス! ジム君が優しいのはあっしが良く知ってるでヤンス! ミャーコちゃんからお仕置きを受けてるときに説得してくれたり、お店でトラブルが起きたときも助けてくれたのを憶えてるでヤンス! そんな子が『人間滅ぼす』なんて言って欲しくないでヤンしゅよう! あっしは悲しいでヤンしゅう!」



 勢いにまかせてしゃべってたら、泣けてきたでヤンス! 本気でしゃべってるからでヤンス! あっし自身がかっこ悪くなってでも、ジム君には考え直してもらいたいでヤンしゅ! 

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