第213話 支配をもたらす者達
「この通り、わたしの下半身はゴーレムとなっている。怪我をしてからゴーレムの方から接触してきた。『下半身を与える代わりに、我々に協力せよ。』と言ってきたのだ。当然、私は要求を飲んだ。それ以外に選択肢はなかったからだ。研究も諦められなかったしね。」
大抵の人なら同じ事をするだろう。最初から人間に危害を加えるとは伝えられてはいないだろうし。協力しているうちに、そんなの聞いてないよ、となってきたんだろうな。
「共に行動しているうちに彼らの恐るべき計画が明らかになってきた。愚かな人類に取って代わり、より優れた生命体であるゴーレムが覇権を握るのだと。」
「ただの道具如きがよく言うな。」
銀仮面が余計な事を言ってきた。先生はその態度に少しムッとしたが、気にせずに話を続けた。
「彼らは道具として作られた故に、人間にこき使われ摩耗すればゴミの様に捨てられた。中には修理をすれば元通りになる者もいたのにも関わらずだ! 彼らはその苦しみ、悲しみ、そして怒りを感じるからこそ、自らの正当性を訴えている! 人造物であること以外は彼らは生命体として優れている故に生きる権利を主張している。」
「人造物に権利などあるものか。使われる権利しかもたない奴等が思い上がりも甚だしい。」
「流石に人類を滅ぼすという意見には反対だが、彼らの気持ちも痛いほどわかる。我々人類もまた、出自や能力で差別しているしな。そういうわだかまりをなくし、分け隔てなく平等な世の中を作るというのが、私の夢だ!」
先生の意見に共感する事は多い。俺も世界平和を目指す勇者だからな。でも、風当たりが強いのは良く知っている。だからこそ力を合わせないといけない。
「フン! 絵空事を! 分け隔てない平等な世の中だと? 無理だね。何のために差があると思う? 違いがあると思う? それは剪定しやすくするためだ。世界は彫刻と同じ。より美しい物を作るために余計な物はそぎ落とす、削り落とす。選ばれた強き者だけが世界を形作るのだ。それ以外はゴミにすぎんのだ!」
「それが学長の考えなのか!」
銀仮面の傲慢不遜な言い分にトープス先生も思わず声を荒げてしまっている。俺も同じ気分だ。なんか魔術師連中の選民思想みたいなのが気に食わない。実力主義とか血統主義とか。
「学長もほぼ同じ考えだ。本人に聞いてみるがいい。相手にもされないだろうがな。私は新世界秩序を実現するプロジェクトに参加している。学長もその一員だ、とだけ言っておこう。お前達如きが知るような事ではない。」
「……何!?」
突然示唆された謎の陰謀。魔王軍とは別に世界の覇権を握ろうとしている勢力がいる? 銀仮面や学長ですらその一員でしかないというのか? 魔王軍でさえ脅威だというのに、本来味方のはずの人間が俺らの前に立ちはだかるとは!
「今日はこれくらいにしておこう。楽しみは後に取っておく物だ。勇者よ、次戦う時は思う存分屈辱を味あわせてやる! 覚悟しておけ!」
「よく言うぜ。俺は額冠と剣なしだったことを忘れんなよ。ありだったら、もっとあっさり倒してたと思うぞ?」
「フン、私とて白銀の魔骸布の本領を発揮せずに戦っていたのだ。まさかお互い素の状態で負けるとは思わなかったが、次は負けない!」
「あ、そ!」
大した負けず嫌いだな。それは以外だったが、中身が割と若いから当然だ。ベテランを装ってはいるけどな。俺はコイツの正体について、察しが付いている。さっきのトープス先生と銀仮面の話が答え合わせみたいになっていたしな。
「じゃあな、先輩。こんなに負けず嫌いだとは思わなかったぜ。以外と可愛いところもあるんだな?」
「私の正体に気付いているとでもいうのか!」
「ある程度、目星は付いてるぜ?」
それからは何も言わずに銀仮面は姿を消した。そそくさと逃げるようにして帰って行った。ちょっと、からかいすぎたのかもな?




