第200話 荒ぶる! ダンジョン奉行!?
「さあ、どうする? コマンド?」
ダンジョン実習の本番となったその日、またしても、タニシの手によってCFMが強制的に開催された。
「どうする、と言われても、ねえ?」
「どうもこーもねーよ。めんどくせー。」
勇者パーティーの正規メンバーではない、トニヤとジムですら呆れ果てている。付き合ってられないと。朝っぱらから眠たい目をこすりながらやるようなコトなんですかねぇ?
「ダンジョンに入る前にやるのも、危険の感受性を養うために必要なんでヤンス!」
ダンジョン奉行は荒ぶっている! 悔しさを表すように、足をダン、ダン、と踏みしめている。
「いや、それよりも、このシチュエーションは現実にありえるのか?」
朝っぱらからとかの理由もあるが、問題の内容にも不満があった。その内容とは……、『ダンジョン攻略中に空腹で動けなくなってしまいました。手元にはよくわからない草しかありません。』というものだ。“よくわからない草”とはなんなのか? 意味がワカランのだ。
「この草って何? 食べれる草? 薬草? 毒草? マンドラゴラ? せめて正体を教えてくれ。」
「教えたら問題にならないでヤンス! その辺のリスクも考えて、リスクヘッジを意識して対策するんでヤンス!」
「えーっ?」
ここまでならまだ普通だ。実は問題の文はそれ以降も続くのだ。それは……『他の冒険者がゴブリンに襲われてピンチになっています。どうしますか?』となっている! 空腹を気にしている場合ではないだろうが! “助ける”の一択じゃないか!
「あのさあ、これはどう見ても助けるしかないだろう?」
「さあ、どうでヤンスかね? コレを見ても同じ事が言えヤスか?」
タニシはニヤけながら、ここでまた、説明用のジオラマを出してきた。空腹で困った冒険猫、変な草、これはまだわかる。ゴブリンに襲われている冒険者というのが……ミヤコとエルである! またかよ!
「お前、懲りないな? 今度見つかったら、本当に殺されるぞ。」
「いやぁ、照れるでヤンスなぁ! 今度もうまく作れたんでつい自画自賛で使いたくなったんでヤンスよぅ!」
「褒めてないが。」
しかもさあ、今度の人形は違うエロス要素が盛り込まれている。この前は触手モンスターに襲われてエロいことになっていたが、今回は二人の服がギリギリ限界までダメージを受けている! 見えてはいけない物がチラチラと見えそうで見えないギリギリを突いている! 別に気になってはいないぞ! エルに関してはこの前、似たような状態になっているのをリアルで見た! それで十分! うへへ。
「目のやり場に困ります! しまって下さい!」
「ホント、ロクでもねえな! アンタ、どうせ童○なんだろ? エロ犬さんよ?」
「ど、ど、ど、童○ちゃうわ!」
「嘘つけ。反応が童○そのものだぞ。」
「わひーん!?」
トニヤからバカにされとる……。やっぱ彼女持ちは違うな。というか、童○いじりが出来るってコトは……。
「もういいから、早く片付けてダンジョンに入るぞ。少しでも早く入って……、」
さっきから妙な気配を感じていた。別に殺気は感じなかったので放っていたが、俺らがエロ人形のことで揉め始めた辺りから異変が起きた。なんか凄い荒い鼻息が聞こえ始めたのだ!
「おじさん、いるんだろ? 出てきなよ?」
「うぉあぉっ!? み、み、み、見つかってしもたぁ、でガンス!?」
素っ頓狂な声を上げながら、エロ犬一号ことタガメおじさんが出現した! どうせエロ人形の事でも狙っていたんだろう。さすが、エロネタのことになると、抜け目がない。
「おじさん! また狙ってるでヤンスかぁ! この前もおじさんのせいでミャーコちゃんに見つかったでヤンスからねぇ!」
「ワテはタガメちゃうねん! ワテはガンスの助言いまんねん!」
「変なキャラ付けで誤魔化そうとしてもダメ!」
「ショギャボワーーーーーーン!!!!」
タニシはエロ人形を渡すまいと、急いで風呂敷の中に入れて隠した。渡したくないのはわかるが、ダンジョンの中に持っていくのもどうかと思うぞ。まあいいや、とりあえず入ろうか、俺らのダンジョンに……。