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第197話 メシ狂い! “狂い豚カレー”!!


「うーん、伸び悩むでガンスなぁ。」



 新メニュー導入後、客足は更に伸びると思っていたのだが、そううまくはいかなかった。明らかに新メニュー狙いの客は増えたが、オープン当初からのメイン客層が減ったような気がする。



「減ったッスね。飽きられたのかな?」


「いやいや、飽きるには早い時期でガンスよ。多分、サンディーの店が開店した影響でガンス。」



 あの豚、ゲスタニの店が急遽オープンしたのである! この前、俺らの所に偵察に来て、不敵な笑いを残して去って行ったと思ったら、秘密裏にライバル店の準備をしていたのだ!



「“メシ狂い~ゲスの極み食堂 カロリー征服宣言!~”だったっけ? カロリー計算度外視の超ジャンクメニューが売りの?」


「我らが元祖、ガツ森以上に狂ったメニューを前面に押し出して、対抗してきてるでガンス! ホントにゲスの極みでガンス!」



 うちの常連客からもらったチラシによると、“狂い豚カレー”、“気にしてもショウガ無い焼き定食”、“超おフトリ飯”、“アブラ~麺”といった暴食四天王をメインに提供しているらしい。名前を聞いただけでも、胸焼けしそうな物ばっかりだ! それよりも豚が豚のメニューの店をやっているという矛盾の方が気になるんだが……。カレーとかいう料理もなんだろう?



「ヤバイでガンス! アッシらも何か気を引くジャンクなメニューを考えないといけないでガンス!」



 おじさんは焦っている。向こうが秘密裏に活動していたので、こちらは対策らしい対策は何もしていなかったのだ。現在展開中の“ヘルシー菜食主義メニュー”や“トレ坊ちゃんコラボメニュー”は対抗措置ではないのだ。とはいえ、棲み分けが出来たのである意味助けられている。



「対決メニューシリーズがあまり跳ねなかったのが、誤算だったでガンス。しかも、休止になるとは思わなかったでガスなぁ。実習は想定外だったでガンス!」



  “東西グルメ激突メニュー”は早くも空気と化している。ロッヒェンが実習で不在なので現在停止中になっているのも痛い。しかも、来週からは俺とタニシがいなくなるので大きな穴が空く。大ピンチじゃないか!



「かくなる上は……秘策の特別グッズでなんとか切り抜けるでガンス!」



 おじさんは近くに置いてある箱をチラリと覗き見た。どこかで見た様な物が見えた気がする。あれは……?



「あーっ!? ヤッパリ、犯人はおじさんだったでヤンスね!」


「な、な、何の事でガンスか? アッシは何も取ってないでガンスよ?」



 客の対応が一段落したタニシが俺らの所にやってきて、おじさんの怪しい箱を咎めた。おじさんはそそくさと隠そうとしたが、タニシに阻止されてしまった。



「あっしの“社内秘”資料が流出してるでヤンス!」



 おじさんの箱から出てきたのはCFMで使おうとしていた例の“如何わしい”人形だった。おじさん、何してんだよ! イイ歳してみっともない! 甥っ子の如何わしいモノをパクるとはどういう事だ!



「いや、コレは、新キャンペーンに使えるかなと思って……。複製して、量産して販売とか景品とかに使えば大もうけ出来ると思ったでガンス!」


「複製して、量産して……大もうけ!!」



 なんかおじさんに言われてハッとなったタニシは怒るのを止めてしまった。代わりに目の色が変わって、なにか興奮したかのような顔つきに変わった!



「これを初めて見た時は衝撃を受けたでガンス! これにエロスと商売の無限大の可能性を感じたのでガンス!!」



 おじさんは熱弁をふるう! 心なしか、目も血走っている! 割と真剣な感じに見えるが、如何わしい人形を巡っての話をしているだけだ。内容がロクでもないのでかっこよさが台無しだ。



「あ、あっしも人気を博すと思ってたでヤンすけど、大事になるといけないと思ってたでヤンスから秘蔵してたんでヤンスよ!」


「決まりでガンス! コレを店頭で売り出して負けを取り戻すでガ……ンス?」



 勢いに乗ったおじさんの言葉は途中で勢いを無くしてしまった! 店先に人影が現れたのだ! 想定外の襲来にエロ犬二人は凍り付いた。



「へえ? 何屋さんを始めるつもりなのか、ウチにも聞かせてくれる?」


「いやいや、コレは“社外秘”情報なんで公開できないんでガンスよ!」


「ミャーコちゃん! 実習はまだ四日目でヤンスよ? 途中でリタイヤでもしたんでヤンスか?」



 そう、まだ四日しか経過していなかった。大体は五日目でダンジョンを出てくるはずなんだが? 何かあったのか?



「あー、実習はウチらもう終わっちゃってさ。ムカツク事があったから、逆ギレ上等でスピードクリアしてきたワケ。」



 ミヤコはダン、と店先の床を踏みならす! よく見ると後ろにやつれた様子のロッヒェンが立っていた。そうとう無理をさせられたのだろう。ご苦労さん。



「それよりも、ナニソレ? それってウチに似てるような気がするのは…気・の・せ・い?」


「他人のそら似でヤンス! 違うでヤンス!」

「いや、似てないのもあるでガンスから! 許して! てへっ!!」



 とか言いつつ、おじさんは何を思ったのかエルに似た方まで公開してしまった! ダメだコレ! これで完全にツーアウトだろ! しかもテヘペロ付きだ! もうダメだ!

「ほう? ウチだけじゃなくて、エルるんのまで作るとはな? 良い度胸だな?」


「いやー、照れるでヤンス!」



 褒めてないぞ。苦し紛れに前向きになっても結末は変わらない! もはや逃れる術はない!



「……処す。」


「へあっ!?」


「貴様ら、市中引き回しの上、打ち首獄門に処す!」


「お、お代官様ぁ~、お許しを!!」


「許さん! 処す!!!」


「ワキャボバーーーーン!?」



 処されるのが確定したエロ犬二人は意味不明な断末魔を上げてその場にぶっ倒れた。やっぱり悪いことは隠しててもすぐにバレるんだな……。

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