第195話 殺っておしまい!
「お前らとはいつか戦いたいと思っていた。自分と同世代のヤツらの実力を知っておきたかったからな。」
「奇遇ですね。僕も君に挑戦したいと初めて会ったときから思ってましたよ。」
「オイドンも強か相手と戦ってみたいと思ってたバイ!」
三人ともやる気だ! ウチ一人を置いてけぼりにして、何か楽しそうな事を始めそうな勢い! ウチだけ戦士じゃないし、女だから仕方ないけど、ちょっと羨ましい。ちょっとだけだけどね!
「ヨシ! 二人ともボッチを殺っておしまい!」
「フン! ボス気取りかよ。一番無能なクセに。」
「黙れ、ボッチ!」
「あまりお嬢さんをないがしろにしてると痛い目見ますよ!」
ジュニアはエピオンに斬りかかった。エピオンはそれに対して構えようとせず、しかも、剣すら出さなかった。このままだとエピオンは斬られて終わる、そんな風にしか見えなかった。
(ガッ!!)
斬ったと思った瞬間に鈍い金属音がした。鎧の小手でジュニアの剣を受け止めていた。正確には小手から突き出した爪の様な物を出して防いでいる。さっきまであんな物は生えてなかったのに!
「まるで教科書に書かれたお手本のような攻撃だな。」
「どういう意味ですか?」
受け止められてとは言っても、ジュニアが手加減してるワケじゃないはず。体重を前にかけているように見えるし、筋肉だって強ばってる。ここまで力を入れていてもエピオンはよろめくどころか、ピクリとも動いていなかった。
「あまりにお行儀が良すぎて、居眠りしてしまそうな、屁みたいな攻撃だってことさ。剣を使うまでもない。」
「言わせておけば!」
ジュニアはムキになって二撃目、三撃目と攻撃をするけど、簡単に防がれた。普通の敵ならあっという間に倒せそうな攻撃なのに!
「ドスコイッ!!」
ジュニアの攻撃が防がれる間にリキシィが割って入った。例の手の平で押すような攻撃。流石にエピオンは押されて後ろに後ずさった。
「フン、結構パワーはあるんだな。見かけ倒しじゃなくて安心したぞ!」
エピオンはジュニアをほっぽっといて、リキシィと向き直って攻撃に備えた。リキシィは連続で突き出し攻撃を繰り出す。怒濤の勢いなのにエピオンは軽い動作で受け流している。横から腕を払って当たらないようにしてるからだ!
「パワーはあっても当たらなきゃ意味がない。その程度じゃオレを倒すには至らない!」
「むむぅ!?」
リキシィの半分くらいの体格しかないのに、翻弄してる! ここまで強いのはあの鎧のせいかもしれない。その様子を見かねたジュニアが再度攻撃を仕掛ける。今度は追従剣も展開しながらの攻撃だ。
「君の思い通りばかりにはさせない!」
リキシィの攻撃に加えて、ジュニアの攻撃! 二人に増えただけじゃない。追従剣もあるから実質、三人での攻撃と変わりない。これならエピオンだって、堪らないはず!
(ビュン!)
リキシィの攻撃を受け流しながら、左手をジュニアの方に向けた。同時に小手から何かが飛び出して、ジュニアの動きを止めた。
「うわっ!?」
ジュニアの剣に長いムカデの様な物が巻き付いている。小手から飛び出したのはこれだったんだ! その間にリキシィは更に攻撃を仕掛けようとしていた。
「ダーク・インパクト!」
リキシィに向かって右手を突き出し、黒い塊の様な物を打ち出した。その攻撃でリキシィは後ろへ吹き飛んだ。闇属性の魔術を使ったんだろう。前にエルるんが似たような攻撃を使っていたのを見たことがある。
「僕の動きを封じたと思ったら大間違いですよ!」
ジュニアが動けなくても、追従剣がある! 分離した刃がエピオンを襲う。立て続けに攻撃をされたばかりだから、反応は出来ないはず!おまけにジュニアの動きを封じるために左手が動かせない。これは勝ったな!
(ガキィィィン!!!)
エピオンの死角から迫った追従剣が防がれた! 同じ様な刃が追従剣を防いでいた。
「甘いな。追従剣がお前だけの専売特許だと思うなよ。」
「そんなバカな!?」
よく見ると右小手の爪の内、一本がなくなっていた。最初は三本あったのに! アレは追従剣としても使えるんだ!
「だから言っただろう? お前らとは出来が違うとな! 下手をすれば鎧を使わなくても十分だったかもな?」
エピオンは「アハハ」とバカにしたような笑い声を上げた。悔しい! ウチは見ているだけだったけど、ムカツク! でも、ジュニアとリキシィはもっと悔しいはず!
「フハハハハハハハ!」
いきなり妙な高笑いが聞こえてきた。声の主を見てみると、おかしな格好をしている。足の先から頭のてっぺんまで全身銀ずくめだ! 顔は仮面で覆われているので、どんなヤツかわからない。声は男だけど。
「もっと手強い相手が必要かな? 私が相手になろうか?」
普通だったらあり得ない五人目が現れた。タダでさえエピオンの乱入だっておかしいのに、もう一人出てきた! 何者?