第194話 モスト・デンジャラスなコンビ!?
「止めましょうよ。見るからに罠ですよ、コレ。」
ダンジョン実習三日目。サイキョーパーティーなウチらは楽勝街道まっしぐらだった。そんな中で偶然隠し部屋を発見! 奥まった部屋の中に怪しい宝箱があった。こんなの開けるしかないっしょ!
「そこを敢えて挑戦するのがミヤコ様の真骨頂だから♪」
「罠ですから! 開ければ何らかのトラップが作動するに違いありません!」
「オイドンもそう思うでゴワス。」
ジュニアだけじゃなくて、リキシィもそう思うのか! 二人とも冒険心がないなぁ! ここは思い切って挑戦しないと成長しないよ?
「怖いのなんので、四の五の言ってちゃ、人生楽しめないよ?」
「そういう問題ではないです! 下手したらそこで人生が終わりますよ!」
「それっ!」
言ってる隙に開けてやった! なんか開けてはいけない空気にされても困るから、ここは先手必勝!
「あああーっ!?」
後ろで悲鳴が聞こえるけど聞こえないふりしとこう。それよりもお宝は? 中を覗いてみても何故か真っ暗で中身がよくわからない。なんか今動いたような?
「危ないでゴワス!」
いきなり横からリキシィが宝箱を蹴飛ばした。スゴい勢いで宝箱が転がっていって、壁に激突して止まった。
「まさか! あれは?」
「そのまさかでゴワス! 人食い箱でゴワスよ!」
「何よ、あれ!?」
ひっくり返った宝箱はひとりでに起き上がり、箱の中から手足が生えてきた! 何か虫みたいな蜘蛛みたいな格好になり、牙とか舌まで箱から生えてきていた ナニコレ! 気持ち悪い! さっきまで普通の宝箱だったのに!
「グパパパァッ!!」
「来ますよ!」
キモい箱がキモい動きで急激に接近してきた! 同時にジュニアとリキシィが前に出て、迎撃体勢に入った。なんか、この二人やけに息が合ってる!
「まずはオイドンが行くでゴワス!」
リキシィが両手の平を交互に繰り出して、キモい箱を押し返すようにした。突き出しの連打だ! 箱は徐々に押し戻されて後ずさりしていってる。
「このまま止めを刺します!」
箱が怯んだところで、リキシィがタイミング良く下がって、入れ替わるようにジュニアが襲いかかった。剣を分離させて炎を刃に纏わせている。既にあの技の体勢に入っていた!
「赫灼の雨!!」
箱が一瞬のうちに炎で真っ赤に染まり、千切り、細切れの状態になって最終的に無数の火の粉に変えられた。あんだけキモかったヤツが何事もなかったかのように消え去った。
「お見事でゴワス!」
「ヴォルフさん、アシストありがとうございます。見事な牽制でしたよ!」
二人は互いに賞賛している。これがオトコの友情とか言うヤツか。見方によってはこの光景にときめく娘もいるんだろうな。ウチはそういう趣味はないけど。なんとなくそう思った。
「これは……先に進むために必要な物かもしれませんね。」
いつの間にか床に落ちていた物をジュニアが拾った。何かのスペルが書かれた札のような物、ここまでの階でも存在してた鍵代わりのアイテムだ。キモい箱を倒した報酬みたいなモンかな。
「ホラ、やっぱり開けてみて正解だったじゃん! お宝じゃなかったのは残念だけど!」
「エェ……。それは結果論ですよ、お嬢さん。ヴォルフさんが動いてくれなかったら、今頃、怪我してましたよ。」
「相変わらず、ミヤコどんは前向きでゴワスなぁ。」
確かに残念だけど、ウチが見つけてなかったら先に進めなかったじゃん! そういう意味ではウチの勘は冴えている!
「……フン! ダンジョンの中でもピクニック気分か? お気楽なモンだ。脳内お花畑かよ。」
後ろから陰気な声が聞こえてきた。これは多分、ボッチだ! なんでか知らんけど、ウチらの前に現れるとは!
「なんで君がこんなところにいるんだ! チーム毎で入るダンジョンは違うはずだろう!」
ジュニアの言うとおり、同じダンジョンに入ってしまうとチーム間で協力しあったりする可能性をなくすため、分けられているはず。今頃、別のダンジョンにいるはずのヤツがここにいるまさか……、
「アンタ、根暗で寂しくなったからウチらのチームに入りたくなったんじゃないの? コイツは臭ぇ! 根暗の匂いがプンプンするねぇ!」
「バカ言え! オレはちょいと暇つぶしに遊びに来ただけだ。」
「おかしいぞ! 君は君自身のダンジョンを攻略しないといけないんじゃないか?」
「フン! 自分の課題を放棄して来たとでも思っているのか? 勘違いするな。オレはもう攻略が終わったんだよ。お前ら如きとは出来が違うんだ。」
もう終わった? 嘘でしょ? たった一人で? あまりに根暗すぎて、脳内だけで攻略完了しただけなんじゃないの? 白々しいわ、コイツ! ホント、生意気でムカつくわ、コイツ! 年下のクセに!
「バカな冗談は止めて、君自身のダンジョンに戻ることをお勧めするよ!」
「オイドンもその意見に賛成でゴワス!」
「じゃあ、試してみるか? オレがそれに相応しい実力を持ってることを見せてやるよ!」
エピオンはこの前見たときと同じの変な鎧を着ている。見せてやると宣言したのが、本気な事を証明するために前も見えなさそうな兜を被った。それでも不思議と明確な殺気の視線を感じたから、急に冷や汗が出てくるのを感じた。