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第191話 あなたを提案です。~洗脳探偵ローラちゃん~


「あなたに一つ、提案があります。」


「あ、アンタはっ!? 何しに来たのよ!」



 実習から戻った後、私はヘイゼル・グランデと接触を図っていた。もちろん、お姉様に内緒でここまでやってきた。話せば反対されると思ったから。



「やはり、例の傷……接合は出来ていないようですね? お知り合いにヒーラーがいなかったのですか?」


「うるさい! アンタが気にするような事じゃないでしょ! アンタがやったクセに!」



 手首を刃物で切断……見た目は凄惨とはいえ、出血に気を付け、早めに対処すれば決して治らないような傷じゃない。腕のいい神聖魔法の使い手なら比較的短時間で元通りに出来る。見たところ彼女はそうしていない。



「どうしてくれるのよ! このままだとロクな生活ができないじゃない! 魔術を使うときも支障がでるかもしれないわ! このまま一生、カタワになるなんてイヤよ!」


「大それた真似をするから、その様なことになるのです。自業自得の因果応報です。」


 事情が事情だけに下手に学院所属のヒーラーに見せれば、事が露呈するかもしれない。おそらくそれを恐れて、傷口を塞ぐだけに留めたのだろう。魔術での治療ではそこまでがせいぜい。後ろめたいことをするからこのようなことになる。私はそれを思い知らせるため、敢えてそうしたのだ。



「何様のつもりよ! 没落貴族の卑しい使用人の分際で、私を断罪するなぁ!」


「断罪などしていません。あなたがお姉様に危害を加えた故、対処しただけですよ。」


「ヘイゼル様! 落ち着いて下さい! お傷が悪化します!」


「うるさい!」



 泣きわめき、取り巻きにまで八つ当たりしている。高貴な生まれでありながら、品のない振る舞いばかり。これほど見苦しい物他にはない。



「傷に関してですが、私が修繕すする方法を知っているのですが、お聞きになりますか?」


「何よ、さっきから? 提案って何を取引するつもりなのよ!」


「私は手首を元通りにする……正確には義手を用いて以前と同じ生活を取り戻せるよう、手配して差し上げられます。それには条件もございますが……。」


「条件って何よ?」


「条件とは……今後、お姉様には接触しない、危害を加えないことを約束する事です。」


「……!?」



 この条件を聞いてヘイゼルは驚きの表情を見せた。そしてそれは次第に怒りの表情へと変わっていった。この後に及んで、まだ不満があるようだ……。



「なんでそんな要求を飲まないといけないのよ! 悪いのはそっち、原因はあの女の方にあるのよ! 私は悪くない!」


「……そうですか。それならば、この話はなかったことにさせて頂きます。では、ごきげんよう。」


「……ああっ!?」



 私が踵を返し立ち去ろうとしたとき、取り巻き達が戸惑いの声を上げた。引き留めたいが、主の意向を無視するわけにもいかない。彼女たちの歯がゆい心境は理解できる。でも、同情は出来ない。本人が提案を無碍にしたのだから、仕方のないこと。



「待ち給え。双方共にもう少し歩み寄りが必要なのではないかね?」



 立ち去ろうとする私の前に、スキンヘッドの教員用ローブを身に纏った男性……トープス先生が現れた。彼は私の同胞ともいえる人物。見るに見かねて、姿を現したのかもしれない。



「トープス先生!? 何のご用ですか? 今の話を聞いていたんですか?」



 トープス先生が現れたことで、ヘイゼルや取り巻き達がそわそわし始めた。怪我のことはもちろん、襲撃の件が教員に知られてしまったのでは彼女たちの立場も危うくなる。



「何か誤解をしているようだが……弁解すると、君たちの秘密については心配する必要はない。こちらも秘密を有しているからね。私だけではない。彼女も同様だ。私と彼女は似たような身の上で協力関係にある。」



 トープス先生は惜しげもなく自身の立場を明確にした。先生自身も素性を知られると都合が悪いはずなのに。どういうおつもりなのだろう?


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