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第190話 どっちを信じればいいんだ?


「どうしました? 先程から、唸っておられますが?」


「う~~ん……?」



 俺は正直、困っていた。エルから聞いた情報、リン先輩の話。反逆ゴーレムについて内容が矛盾する部分がある。リン先輩は彼らの秘密を知ってしまったため、決闘の名目で殺されかけた。一方でローラの話ではゴーレム達は学園に見捨てられた人達を救済しようとしている。どちらの言い分を信じたらいいんだろうか?



「双方の行動方針に食い違いが見られますね。ゴーレム側と秘密を知ってしまった学生、それぞれ立場が違いますからね。どちらかが嘘をついている可能性はありますし、どちらも嘘をついている可能性はあります。」


「ローラは嘘をつくような子ではありません!」


「とは言っても、リン先輩が嘘ついてるとは思えないんだけど? でも、エルの友達の話も信じてあげたい。どうしたらいいんだ!」



 エルは今にも泣きそうな目で懇願してくる。困ったな。そんなことされたら、信じないわけにもいかないじゃないか。とはいえ、俺は反逆ゴーレムとやらには会ったことがない。できれば当事者、特に首謀者のマスターとやらに会って話をしてみたい。学生に紛れ込んでいるという話だから、知らず知らずのうちに会っているのかもしれんが……。



「決断するのはまだ早いと思います。それぞれの言い分どちらが正しいかは調査の上で確認すればよろしいでしょう。首謀者の正体を見極めた上で判断を下しましょう。」



 トレ坊先生はあくまで冷静だった。今のところどちらにも感情移入せず、正体を見極めようとしている。この対応が一番正しいんだろうけど、俺はそこまでクールになれないや。



「私は……どうしてもローラを裏切る事は出来ません。先生のように冷静な考えには至れないです。」


「それでいいと思います。あなたはご友人のことを信じてあげて下さい。私たちは何があっても、あなたを責める権利など無いですから。」


「俺はどっちの話も信じる! おかしいかもしれんけど、どっちも信じてあげたいから!」


「ありがとう。」



 ハッキリ言って、俺は騙されやすい質だ。昔から色んな人に騙されてきたからな。アホだから。騙されるのはツラいけど、人を疑うのも気持ちがスッキリしないから、好きじゃない。俺にはそれぐらいしかできない。頭が悪いから、疑ったとしても見抜けるワケじゃないからな。



「問題は首謀者がどの様な人物か、ということですね。ローレッタさんの話からすれば、人間の魔術師の可能性はあります。ですが、人間への反逆という観点から見ると、自由意志を持ったゴーレムなのかもしれません。人間に対しての憎しみも感じられますしね。そういう意味では首謀者像はぶれてきます。」


「イマイチはっきりしないな。正体はワカランが、学院や浄化委員会と敵対してそうなのは共通してるかも。」



 どちらも学院の体制をひっくり返そうとしているのは共通してる。俺も学院や浄化委員会の考え方は嫌いだから、出来れば手を結びたい。エルの友達があっち側の勢力だから、話し合いの場を作りたいもんだが……。



「調査の糸口に関してですが、もう一人のキーパーソン、トープス先生についてもう少し調査すべきではないでしょうか? 彼もゴーレムと入れ替わり疑惑のある人物です。調査の上で接触を図ってみるべきでしょうね。」


「うん、そーすね。リン先輩側の事の発端は例の先生だし。潜伏先のダンジョンとやらも気になる。」



 エルの話ですっかり忘れていたが、まだ調べていないトープス先生という人がいることを忘れていた。重大な手掛かりにつながるかもしれないから、まずはここから調査を始めてみるべきだな。



「そういえば、ゴーレムの件で気になってたんスけど、トレ坊先生って魔法生物なんスか?」


「ちょっと、そんなこと聞くのは失礼でしょ。」


「構いませんよ。この手の話をしていたら、いずれ疑問に抱く事です。お答えしましょう。私は……魔法生物ではありません。」


「そのなりで?」


「以前、話しましたが、私は友人にかけられた呪いでこのような姿になっています。正確には“いしのなか”にしか存在できない体になってしまったのです。外には出られないのです。」


「どういう意味?」



 難解な謎かけみたいだな? 石に変えられたのではないということ? 前見たときと姿が違うのと何か関係があるんだろうか? 魔法生物なら姿が変わる事の説明が付かないし……?



「“いしのなか”限定で転移出来るとか? 魂が石のあるところの座標に限定されてしまったと考えていいんでしょうか?」


「それで大体あってます。魂が石の外に出られなくなる呪いです。ですが、反対に“いしのなか”であれば転移魔術の効果が及ぶところであれば移動が出来ます。こぶし大以上の石ころから巨大な石像程度であれば転移可能です。ある意味、服を着替える様な感覚で移動は出来ます。」


「なるほど!」



 トレ坊先生の秘密が一つ明らかになった。姿が違うのは転移したからだったのだ。とはいえ、毎回、おかしな石像ばかり見つけてくるのはどういう事なんだろう。少なくとも、物凄い変人なのは良くわかった……。

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