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第189話 手を取り合えるのなら……、


「あなたがゴーレムなのは間違いないのね?」


「お姉様の想像通り、私の体は魔力によって動作する人工物、ゴーレムに間違いありません。」



 ――――私はあの時、ローラの正体を知ることになった。でも、知ったからといって、彼女に敵意を抱く事にはならなかった。出来るだけ事情を知りたかったので、聞いてみようと思った。



「あなたはローレッタ・アンブラ本人なの? それとも、あくまでゴーレムなの?」


「……ローレッタ・アンブラという人物はかつて存在していたのは事実です。そして、その生い立ちは以前、お話ししたとおりです。ですが、当の本人は五年前に亡くなっています。」


「……!?」



 ――――ロアがリン先輩から聞いた情報と同じく、元の人間と入れ替わっていた。事情が違うのは彼女のケースは学院内の出来事ではないということ。本物は五年前に亡くなっていたのだから、学院に入る前から入れ替わっていた?



「本物のローレッタは病で亡くなりました。家が没落して、治療する費用もなかったのです。その無念の思いを知ったマスターが亡くなる前の当人と出会い、ゴーレムの体に記憶を引き継がせる事になったのです。」


「ローラの許諾を得た上で、入れ替わったのね?」


「そういうことになります。立派な魔術師になるという夢はゴーレムの体になっても、引き継いでいます。」



 ――――信じがたい事実ではあったけれど、今まで一緒に過ごしてきた彼女の姿を思い浮かべると、どこも不審な点はなかった。生真面目すぎる所があるくらいで、普通の女の子と変わりない。あったとすれば、実習に入ってから彼女の常人離れした身体能力を見た時だけだった。



「記憶を引き継いでると言ったけど、そんなことは可能なの? もし、あったとしても驚くほど高度な技術がないと出来ないのでは?」


「私もマスターの技術には心底敬服しています。人の記憶を魔力素子に保存する技術は実在しています。マスターの話によると、そもそもはゴーレムに人格を与えるための技術の副産物として作られた物だそうです。」



 ――――確かにゴーレム等の魔法生物はある程度単純な命令を与えて実行させる事しか出来ない。後は術者自身が遠隔で操作をする事くらいしか出来ない。古代には自律した意志を持った魔法生物がいたみたいだし、ノウザンウェルのダンジョンで実際に見たことがある。


 あれは古代人、金剛石の王が作った物だった。世間的にはロストテクノロジーになっているはず。彼女の言う、マスターはその技術を再現したんだろう。それよりもマスターとは何者なのだろう?



「あの、ローラ? さっきから気になっていたんだけど、マスターって何者?」



 この質問に彼女は少し困った顔をした。秘密裏に行動しているから、首謀者の正体を知られるのは困るのかもしれない。



「残念ながら、マスターの正体を明かすことは出来ません。ですが、目的をお話することは出来ると思います。」


「ありがとう。あなたにはあなたの使命があるものね。大切な人を裏切る訳にはいかないでしょうから。」



 彼女が心服しているのだから邪悪な人物ではないと思いたい。何か理想があって学院内で暗躍しているのだと思う。



「マスターは無闇に人をゴーレムに入れ替えている訳ではありません。対象となっているのは不遇な扱いで学院に命を奪われた人達です。中には体の一部を失い、義手義足を提供した人も含まれています。私のように完全にゴーレムへ置き換わった人だけではないのです。」



 ――――近年の義手義足はゴーレムの技術を応用していると聞いたことがある。その技術の相互作用で急激に発達してきているらしい。それに関わっているのがマスターという人物なのだろう。



「学院では優生思想、血統思想が蔓延しています。そのことはお姉様もご存じだと思います。マスターはこの風潮に心を痛めておられます。何としてでも、それらの思想を改めさせて、改革を起こしたいと考えているのです。」



 ――――虐げられた人達の復権を目指す……これは今、ロアが学院でやろうとしていることと似ている。もしかしたら、ゴーレム側の勢力と協力し合えるかもしれない。そう思った私はローラの許可をもらった上でロアやトレ坊先生に事情を話す事にしたのだった。

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