表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
187/331

第187話 人類に仇成す存在


(ザンッ!!)



 体に纏わり付いた霜を半分程度落として、ある程度、視界が明瞭になった。その時、目に飛び込んできた光景は驚くべきものだった。ヘイゼルの魔術をカットするためにローラが割って入り、ヘイゼルの片腕の肘から先を切り飛ばしていた。



「アアアアアアッ!? う、腕がぁーーーっ!?」


「ヘイゼル様ぁ!?」



 ヘイゼル側に有利だった形勢がローラの一撃で一転した。リーダーのヘイゼルが大怪我をしたことで本人はおろか、取り巻き達も混乱し、阿鼻叫喚の模様になっている。



「無事ですか、お姉様?」



 ローラは冷静な面持ちで私の元へ歩み寄ってきた。ここまでの事をしていても彼女は至って普通、普段通りの様子だった。腕の部分以外は。腕が尋常ではなかった。この様相を見て、一つの疑問が頭に浮かんだ。



(この子は人間じゃない……?)



 彼女の前腕から普通ではあり得ないものが飛び出していた。例えるなら、昆虫のカマキリのような…鋭利な刃(マンティス・ブレード)が生えていた。



「私は大丈夫。それよりもあなたのそれは大丈夫なの?」


「ああ……申し訳ありません。取り返しの付かない事になりかねなかったので、少し無茶をさせて頂きました。この姿はあまり、お見せしたくなかったのですが……。」



 ローラは前腕に生えた刃を見つめ、悲しそうな表情をしている。彼女も言うように、この外観をさらけ出してしまうと、自身が人でないことを証明してしまうことになる。そんなリスクを被ってでも、私の命を優先した。



「よ、よくも、よくもぉーっ! 私にこんな事をしてタダで済むと思っているの!」


「それよりも早く止血等の処置を行わないと命に関わるのでは? この場はおとなしく退却されることを強く推奨します。」


「口惜しい! ラヴァン様をたぶらかす女狐如きが私に指図するなぁ!」



 ヘイゼルが半狂乱になりながら泣きわめいている。流石にここまでの傷を負わせるのはやり過ぎだったのではと思う。とはいえローラを責めることも出来ないから、複雑な気分だ。



「ヘイゼル様、ここは一旦、退却します。怪我の養生をしてから、次なる機会を模索しましょう!」



 取り巻き達はヘイゼルをなだめつつ、ローラと対峙していた二人…気を失った仲間を抱きかかえつつ、転送魔術で逃走した。



「このまま成敗するべきだったのかもしれません。このことで私の正体が暴露されてしまうかもしれません。」



 ローラは人としてはあり得ない特徴を持っている。ヘイゼル達も手痛い損害を受けてしまったから、報復として学院に密告するかもしれない。ローラもその危険性を感じたみたい。でも……?



「暴露される可能性は低いと思う。あの子達がここに来た理由を考えてみて。あの子達はあなたの正体以上に後ろめたいことをしているから。私を殺害しようとしたこともそうだけど、その前に実習の妨害行為をした。これだけでも十分に問題行動だと思うわ。事情を学院に話せば、あの子たちも咎められるはず」


「そうでしょうか……?」



 いくらあの子達でもそんなリスクは犯さないと思う。実習中に割り込んで殺害を企てるという行為は流石に退学や追放処分は免れないと思う。ヘイゼルがそれでも構わず報復措置をしてくる可能性はあるかもしれないけど……。



「それよりも、これからはお姉様とご一緒出来ないかもしれません。このような人外の化け物と仲良くする方なんていないでしょうから……。」



 彼女は何かを諦めたかのような面持ちになっている。その最中でも前腕から突き出た刃を、器用に折りたたんで前腕にしまい込んだ。カラクリ仕掛けで機械的な構造をしている。こんなに複雑な構造をした物は今まで見たことがない。



「そんなことない! あなたとはずっと友達よ!」


「ですが……。詳しい話は言えませんが、私達は人類に仇成す存在です。私と共にいることは人類の敵となることと同意です。」



 人類に仇成す存在? 彼女は人間とは違う? この前、ロアが言っていたゴーレムの話と関係があるの? もしゴーレムだとすれば前腕に仕込まれた刃や、超人的な身体能力にも納得できる。だとしても、そうじゃない。そんな理由で友達を失うなんてことは出来ない。



「待って。あなたは人類の敵だというのなら、私も似たような身の上だから問題ないよ。」


「そんなはずありません! お姉様がその様な方のはずがありません!」


「私が何故、闇属性を使えると思う? 魔族と接触したり、被害を受けたからじゃないの。私の体にはかつて……デーモン・コアが存在していたの。ある意味、魔族、魔王に近い存在なの!」


「……!?」



 私たちに共通しているのは、人類に害を為すと周囲から思われていること。正確には彼女はまだ、そういう仕打ちを受けていないのかもしれない。もし事実が明るみに出れば、迫害される立場になるかもしれない。そうなれば……力になってあげれるのは私しかいないはず。だから、彼女とはずっと友達のままでいたい!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ