表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/331

第170話 魔力“1”の真のアホの子なんだがなあ……。


 決闘が終わったその日の夜、俺はエルとトレ坊先生に事の顛末を説明していた。



「結局、決闘は無期限延期となったんですか。」


「会場がああなったから、しょうがないっすよ。」



 決闘はアクシデントが発生したことにより、あっさりと幕を閉じた。俺とトニヤは結託を誓った後しばらくして、運営によって救助されて事なきを得たのだ。で、二人の安全が確認されたところで引き分けみたいな扱いに。会場がエラいザワついていたのが印象的だった。



「で、俺らの敵勢力の正体も判明したっすよ。その名も“魔術結社浄化委員会”。例の七光りの先生が俺らへの刺客を差し向けて来やがったワケですよ。」


「ほほう。その根拠は?」


「体が水晶で出来たゴーレムが刺客だった。それがレインボー・ブラストとかいう魔法を使ってきた。トニヤのヤツが魔法に見覚えがあるっていうから、ほぼ間違いないかと。」


「クリスタル・ゴーレム……。」



 トレ坊先生は少し語尾のトーンを落としつつ、ゴーレムの名前をつぶやいた。考え込むような感じか。見た目が石像だから仕草としては表に出してないが、気配でなんとなくわかる。



「あまり知られてはいない話ですが、地属性を使う魔術師の中には、雷光魔術に対しての防御手段として、水晶を使う人がいます。クリスタル・シールドまたはクリスタル・ウォールですね。」


「武器への防御手段にも使われますよね。水晶は硬いですから。」


「そうなんです。それ故、ゴーレムや武具に使われることがあります。高度な火属性魔法には手も足も出ませんが、雷属性を使う人にとっては天敵と言ってもいいぐらいです。」



 火に弱い? 高熱で溶かされるからか? 金属は火の通りがいいもんな。鍋とか調理器具には金属はよく使われるくらいだし。もっと火力を上げればドロドロに溶けるし、溶けないくらいの熱でも、火に炙られてれば次第にボロボロになってくる。サヨちゃんくらいの使い手なら地属性の魔術師なんて赤子みたいなもんなんだろうな。



「水晶には変わった性質がありまして、雷光の力を振動に変換する効果があるんですよ。逆に振動を与えれば、雷光を発生させる事が出来ます。魔力を一切使わずにね。」


「あーっ!? それ! それだ! 俺、それを見て、逆に利用して自滅させたんだ。やっぱ対処としては合ってたんだ!」


「この性質を利用して撃破したと? しかも、知識として知らなかったのにですか?」



 まさかのビンゴ! 本当にそういう性質があったんだ。敵さんが水晶を使ってきたのは、トニヤを確殺するためだったことも、これで確実だ。雷に対して自動で反撃するためにアレを使ったのだろう。でも、それが自滅する原因にもなった。



「雷に対して衝撃波を撃ってきたから妙だなと思ったんだ。七光りを素直に使わずに、プルプル震えて、魔力籠もってない衝撃波ばっかり!どうしようかと思ってたときに、昔、水晶玉を割ったときの事を思い出して……、」


「何らかの方法で小さな傷を付け、振動で増幅して、割ったと?」


「そのとおり!」



 途中でトレ坊先生が方法に気付いたみたいだ。相手がトレ坊先生だったら、考えを読まれて負けてたかもな。敵が先生みたいに頭が良くなくて助かった。



「大した機転ですね。やはりあなたは天才だ。置かれた状況の中から最適な手段をとった結果が勝利を導いたのですよ。」


「え? でも最初は武器がないからヤケクソ気味に瓦礫を投げつけただけなんだけど?」


「それでも、そこから策を思いついたんでしょう? やっぱりあなたは天才よ!」


「ええ!? ホントの天才の二人にそんなこと言われてもイマイチ、ピンとこないんだけど?」


「いえいえ、あなたこそ真の天才ですよ。」



 天才とか言われてしまった。そんなこといっても、俺は魔力“1”の真のアホの子なんだがなあ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ