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第169話 犯人は親の七光り光線の人か?


 撃破後、俺はトニヤから質問攻めに遭った。不可解な行動を取らされ、結果的に敵が自滅する形で幕を閉じた。説明を聞かないと意味がわからないというのはある。



「ところで、なんで奴は自滅したんだ?」


「いや、水晶とか宝石みたいなヤツは硬くても、基本的に脆いだろ? その性質を利用しようと思ったのさ。」



 石って硬くて壊すのは難しいけど、一旦、傷が付いたりヒビが入ったりすると、そこから割れたり砕けたりするからな。案外あっさりと。実は“破竹撃”もそういうところから発想が来ているらしいし。



「そりゃそうだが、瓦礫をぶつけまくったぐらいじゃ、小さい傷が付くだけで終わる。それがなんで崩壊につながるんだよ?」


「脆くなったら、割と振動に弱くなるんだよ。ウッカリ傷が付けちまった水晶玉がちょっとした振動で割れたのを見たことがある。昔、占い師の婆さんに弁償させられたことがあったんだよ。」



 あれは大変だった。なかなかの大金でレンファさんに立て替えてもらうことに。その後、全額返すまで彼女に頭が上がらなかった。まあ、あの経験がなかったら、今頃死んでいたかもしれない。占い師の婆さんとレンファさんに感謝しないとな。



「振動自体はアイツが自分で勝手にやっちゃうもんだから、利用できると思った。なんで雷撃を喰らわせると振動するのか、原理はわからんけど。」


「ただ単にピンチで錯乱しただけかと思ったぜ。バカなように見えてちゃんと考えてたんだな。」



 原理についてはくわしくないから、後でトレ坊先生に聞いてみよう。このゴーレムを仕向けた側からすれば、意味不明な方法で倒されたとしか思えないだろうな。



「しかし、俺らを事故に見せかけて両方始末しようとするとは、どんなヤツなんだろうな?」


「とぼけるなよ。とっくに憶測は出来てるんだろう? 虹といったら、アイツしかいねえ。」


「噂の親の七光り光線の人か!」


「誤解を呼ぶようなディスり方すんじゃねえよ!」


「でも、実際、七光りだから、そんなチート魔法使えるんじゃないの?」


「知るか!」



 実際色々才能とか受け継いでるから、七光れるんじゃないか? 俺なんてどうがんばっても、火打ち石の火花程度にしか光らないよ? 「閃光のように」がせいぜいだ。



「で、犯人はレインボーさんでいいの?」


「その呼び方は止めろ! 一気に白けるだろうが! ……そんなことはどうでもいいんだ。犯人は特定の一人じゃないぞ。ジェロームはあくまでその一員だ。」


「一員……?」



 一員って事は決闘委員会とか関係があるんだろうか? 前の決闘でも「俺を殺せ」とセクシー先輩に指示していたし。とにかく、協力関係にある可能性はありそうだ。



「……魔術結社浄化委員会。それが俺らを罠にはめた奴等の正体だ。」


「浄化委員会……!?」


「奴等は魔術師の血統を重んじる人間達で構成されたイカレた宗教まがいの組織だ。奴等は純粋な魔術師以外の血統以外を出自とする魔術師の台頭を嫌っている。ポッと出の天才みたいなのは許さないんだとよ。どれだけ優れててもな。」



 血統を重んじる……どこにでもある話だな。王族とか貴族なんかがそうだ。それどころか梁山泊にまであった考えだな。設立者の子孫しか宗家を務めることを許されていなかった。実力の有無に関わらずだ。現宗家は実力者だが、歴代の中には武術の心得さえない人が務めていたこともあったそうだし。難しい問題だ。



「なんでだ? お前、結構名門の血筋なんだろ? なんでソイツらに狙われるんだ?」


「俺が奴等の目の敵にしている人間を庇ったからだな。庇った話ぐらいは噂で聞いているだろう?」



 そういう人間を庇ったから? ただそれだけでも命を狙われるとは。相当ヤバい組織なんだろうな。出来るだけ関わりたくない連中だが、俺もすでに狙われている。もう逃げられない。それに例の事件に関与している可能性はあるから、調査する必要はあるな。



「奴等は俺の尊敬する先輩を消そうとした! 無実の罪を着せ、決闘の舞台に引きずり出して命を奪おうとしたんだ!」


「でもお前がその先輩を庇って、代わりに決闘をすることになったと?」


「そうだ。結局は俺は負けて、このザマだ。情けないったら、ありゃしねえ!」


「でも、その人は救えたんだろ?」


「救えたさ、命だけはな。結果的に学院から追放されてしまった。だから、俺は無力だ。」


「無力なもんか! 立派じゃないか。大切な人を守ったんだ。」


「守り切れてない!」



 声だけが虚しく辺りに響き渡った。圧倒的な魔力と権力によってねじ伏せられたからこそ、無力感を感じるんだろう。実際は連中の企みそのものを阻止したかったんだろうな。



「不本意な結果に終わったのかもしれんが、お前とその先輩は生き残った。そして、俺に出会った。それでいいじゃないか。これからは俺が手を貸してやる。俺はそのためにこの学院に来た!」 

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