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第166話 クリスタル・ゴーレム


「さあ来い! 木偶人形! 俺の始末をしに来たんだろう?」


「……。」



 トニヤの熱気を帯びた挑発は無機質なゴーレムには何も響きはしなかった。血が通っていない、殺すだけの道具にすぎない、ただの物体なことを自ら証明してしまっている。



「ライトニング・ウイップ!」



 トニヤは電光の鞭で水晶の人形を打つ! 打つ度にはげしく破裂音が響き渡る。だというのに、水晶の体には傷一つ付いていない。やはり水晶相手では生半可な打撃なんか効くはずがない。硬すぎるんだ!



「キョキョキョキョッ!!」



 トニヤの激しい攻撃を尻目にゴーレムは奇怪な声を発した。ただの音か? それともバカにして笑っているのか? 頭は付いているが顔はないので、感情を読み取ることさえ出来ない。



「キカキカッ!!」



 ゴーレムは腕をトニヤに向けてかざし、体を震わせて衝撃波のような物を放った。トニヤはそのまま吹き飛ばされ、瓦礫の山に叩きつけられた。



「クソッ、なんだ今のは!? 風属性の魔術か……?」



 不可解な攻撃だった。あのゴーレム自体、風要素なんてどこにもないのに風魔法を使ってきた。とにかく、距離を取っていても風魔法には気を付けた方がいいだろうな。



「クソッ、こんな人形如きに!」



 トニヤは悪態をつきながら、立ち上がり、ゴーレムと再び対峙する。さっきの衝撃波で大きな怪我はないようだが、鎧も着ていない生身の体で叩きつけられたんだ。それなりのダメージを受けているはず。このまま助太刀出来ないならヤツは命を落とす危険がある。決定打のない戦いでは倒されるのは時間の問題だ。俺が戦えれば、一瞬で片が付くのに!



「ライトニング・ブラスト!」



 トニヤは極太の雷光を手の平から放った! それにも関わらず、ゴーレムは雷光をよけようともしなかった。雷光の直撃を受けたゴーレムは雷光を帯びた状態で細かく震えていた。震えているというよりも振動していると言った方がただしいかもしれない。金属の鐘を叩いた時の様子に似ている。



「キョキョキョキョキョキョ!!」



 最初の時と同じ、奇妙な声を出している。雷光を喰らって、振動が起き、笑っているように見える? もしかしたら、さっきの衝撃波は……、



「トニヤ! アイツの注意をこっちに引きつけてくれ!」


「そんなことしてどうするんだ!」


「いいから来い!」



 トニヤを呼び寄せる。どういう原理かは知らんが衝撃波は雷光のカウンターとして放たれた可能性がある。雷光は放った後だ。どうせ衝撃波が来るんなら、利用してやればいい!



「キカキカキィーッ!!」


「来るぞ、衝撃波! お前は避けろ!」


「そんなことしたら、アンタはどうなるんだ!」


「いいからよけろ!」



 苦しげな表情をしながらトニヤは避けた。それでいい。ゴーレムは手をかざして衝撃波を放つ。俺はそのまま、即興で思いついた策を実行に移した!



(ボゴァアアアアアン!!!!!!)


「どびゃああっ!?」


「言わんこっちゃんねぇ!」



 さっきよりも強烈な衝撃波が瓦礫に命中した。瓦礫と一緒に俺もまとめて吹き飛ばされた。そう、俺の策とは……何もしない、ことだ!



「いてて! 肉を切らせて骨を断つ? いや、肉を切らせて骨も折る、かな? とにかく脱出は成功した!」



 何もしない、というのは語弊があるかもしれない。一応、魔法無効化は試した。でも、出来なかった。ということは衝撃波は魔法ではない可能性がある。



「無茶しやがって! 死んだらどうするつもりだったんだ!」


「どの道、お前一人で戦ってても二人とも死んでただろ! どうせ死ぬんだったら、試してみる価値はあるだろ。」



 全く、魔術師ってヤツらは……。頭がいいばっかりで、徹底的に「バカになる行動」を避けやがる。俺からしたら、そんな考えこそアホ丸出し以外の何者でもない! 結局、分の悪い賭けは絶対にしない。そのままでいれば死ぬような状況でもだ。



「これでわかったことがひとつあるぜ。あのゴーレムには電撃無効化アンド専用の反撃機能が付いてるってことだ。俺の魔法無効化が効かなかった。」


「アレは魔術じゃなかったてのか?」


「多分な。」



 多分としか言えない。峨嶺辿征が効かなかったんだ。そうとしか思えない。逆に衝撃波が消えなかったおかげで、瓦礫から脱出出来たわけなのだが。



「アレはお前を確実に殺すために作られたのはハッキリした。後は俺だけで戦う!」


「魔術もなしにゴーレムを破壊できるものか!しかも、アンタ、素手じゃないか!」


「うるさい! やれなくても、やるんだよ! それ以外は“死”しかねぇんだよ!」



 トニヤを押しのけ、前に出てゴーレムと対峙したとき、額に熱を感じた。加えて、髪の毛が逆立つ感触がした。まるで額冠を付けているかのような高揚感が俺の全身を包み込んだ!

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