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第165話 今がチャンスですよ……?


「うう……ここは?」



 しばらく意識を失っていた。気付いたら俺は瓦礫に埋もれていた。特に痛みを強く感じないので奇跡的に大きな怪我はしていないみたいだ。が、身動きが取れない。うつ伏せに倒れた状態で瓦礫が覆い被さっており、自由に動かせるのは首くらいだ。



「アイツはどうなった……?」



 自分の身を心配ばかりしていられない、決闘相手のトニヤはどうなったんだ? 俺の方は奇跡的に命は助かったが、ヤツはどうだろう? 落下した上に瓦礫に押しつぶされる可能性だってある。下手すりゃ死んでるかもしれない。これは決闘どころの話……、



「オイ!」



 上方向から声が聞こえた。とりあえず見上げると、俺の前にヤツが立っていた。見下ろしている。ということは無事だったのだろう。



「ざまぁねえな?」


「はは……。おかげさまで。」



 ニヤリと笑っている。ついさっきまで殺すと言ってたくらいだ。本当に殺すかどうかはわからないが、俺にそれなりの報復はしてくるだろう。



「殺すのか?」


「さあ、どうするかな……?」



 トニヤは意外にも真顔になっていた。俺が散々挑発をし倒したので、まだ顔面が真っ赤なのかと思っていたのだが……?



「なんだ? 気が変わったのか? 俺を殺すなら今がチャンスだぜ? こんな機会は滅多にないぞ? 俺を殺そうとして殺し損ねたヤツが今まで何人いたことか……。」


「……。」



 今まで殺されかけたことは何度もあったが、奇跡的に悪運が強いせいで死なずに済んだ。今はそうならないだろう。勇者の額冠がない上に、剣もない。身動きも取れない。今までの俺の宿敵達が今のこの惨状を見たら、ためらいなく殺すだろう。それぐらいのピンチだ。



「どうした? チャンスを逃すのか?」


「……ふざけるのも大概にしろ! アンタはこんな状況でも道化を演じるつもりか!」


「いや、だって芸人だから……、」


「そういうのはもういい! ただの芸人が魔術を無効化できるはずなんてないだろ! 一体、アンタは何者なんだ? 何をしにここへ来たんだ!」



 ごまかし続けるのは無理か。でも、本当のことを言うのは躊躇ってしまう。第一、本当の事を言っても信じてもらえるかどうか……。額冠もないのでイマイチ説得力に欠けるからだ。



「それよりも俺の事はほっといて、早くこの場から脱出したらどうだ? この状況からすると俺らがハメられたことくらい気付いてるんだろ?」


「わかってるさ、それくらい! いい加減答えろよ、さっきの問いに!」



 こんなタイミングで聞いてどうするつもりなんだ? そんなもん、終わってからいくらでも答えてやるのに…って、殺せとか言っといて、それはないか。



「答えさせてどうする?」


「返答次第ではアンタを助ける。協力者になってもらう。」


「協力? 何の?」


「大体、察してるんじゃないか? 俺はこの学院をぶっ潰したいんだ。アンタもそうなんだろ?」


「……?」



 いや、そこまでするつもりはないんだが……? コイツは何か勘違いしている。俺を学院壊滅を狙う工作員とでも思っているのだろうか? まあ、敵対みたいにはなってるのは間違いないけど。



「それよりも、なんか来なすったみたいだぜ?俺らの密談を妨害するつもりかもしれんぜ?」


「何だと……?」



 トニヤは第三者の気配が近付いていることに気付いていなかったようだ。いや…この気配に気付けるのはよっぽどの実力者だけだろう。生命力が一切感じられない、無機質な殺気だからだ。



「コイツは……! ゴーレム!」


「俺らをまとめて始末するつもりらしいな? 用意周到なモンだな。」



 無機質な暗殺者、ゴーレムだった。見た目は全身水晶で作られたような人形だ。といっても造形は雑で、水晶の角柱を適当に組み合わせて人型にしたような感じだ。とはいえ、弱そうには見えない。コイツは冷酷な殺人人形のはずだ。その姿からは殺気しか感じられない。



「そこでじっとしていろ! 俺がヤツを倒す!」


「無理するな! 逃げろ! 俺を囮にしてもいいから!」



 今の状態ではむしろ、じっとしている事しか出来ない。だが、トニヤは逃げるつもりはないらしい。俺の見積もりではトニヤではゴーレムに勝てない。あんなのには電撃魔法は効きそうにないからだ……。

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