第160話 オーラでわかるレベルなのですわ!
「ねえ、セクシー先輩、アーチボルトのこと、何か知らない?」
「その呼び方はお止めと言ったはずでしょ!」
俺らトリオはアジトに戻ってきた。肉の件もあるのでロッヒェンも同行している。戻ってきたついでにトニヤの情報を集めるため、とりあえず身近な人から当たってみることにした。となれば、まずはこの人からだ。
「先輩っていうくらいだから、アイツよりかは長く学院にいるんでしょ? だから、アイツの過去を知ってるんじゃないの?」
「だからって、あーたたちに教える義理はありませんわよ。」
「えー、でも、俺ら仲間になったじゃん?」
「知りません!」
あの決闘の後、先輩は俺らが匿う形になっている。失脚した扱いなので、寮からも閉め出され、俺らと同じ扱いを受けている。しかも、命を狙われる可能性もある。先輩も近くにテントを用意して住んでいるのだ。
「そこをなんとか! 今度、絶品ハンバーグを御馳走するから! コイツが作るし!」
「ここでも僕は利用されるんですね……。」
「……!?」
そう! 今はハンバーグの達人がいる。その達人が手がける、ベヒモス肉豪華メニュー第二弾だ。今度も人気が出るのは間違いないし、先輩も気に入ってくれるだろう。ん? でも、なんか先輩の様子がおかしい。
「あ、あーたはっ!?」
「もしかして、ロッヒェンをご存じ?」
「ヘル・ヴァン・ブルグ!」
先輩がロッヒェンを凝視しながら名前らしき単語を言った。ん? なんだっけ? どっかで聞いたことのある名前だな?
「あたくし、肉料理には目がありませんのよ。当然、ハンバーグも好きですわ。ハンバーグと言ったら、ヘル・ヴァン・ブルグですわよ!」
「ち、違いますよ。僕はヘル・ヴァン・ブルグではありません!」
なんか思い出した! ロッヒェンがハンバーグコンテストに出てたときの妙な変装、その時名乗っていた名前だった、と思う。変装してても正体バレバレなのは失笑モンである。特にあの格好をしてないのに先輩にバレてるのは、変装の意味はあったのかと疑問に感じるレベルである。
「あたくしの目は誤魔化せませんわよ! いえ、オーラでわかるレベルなのですわ! あたくし実は……ヘル・ヴァン・ブルグの隠れファンですのよ!」
「は、はあ……。それは、ありがとうございます。」
隠れファンって……全然隠れてないんですが。その対象と同様にバレバレな感じなのがまた……。それはさておき、この流れだと協力してもらえるかもしれない。
「ヘル・ヴァン・ブルグを連れてきてくれたのですから、特別に情報を教えて差し上げますわ。」
「マジすか? じゃ、じゃあ、オナシャス!」
「まず最初に言っておくけれども、彼、トニヤ・アーチボルトは最初からあの様に落ちぶれていた訳ではありませんのよ。」
スタート時点ではさすがに俺らみたいなことにはなっていなかったか。てことは、何か問題が起きて、今の地位にいるのかも?
「入学してしばらくして、彼は決闘をする事になったみたいですの。しかも、相手は教師! 前代未聞の事態で学院全体が騒然としていたのを憶えていますわ。あたくしもその事件が切っ掛けで彼を知ったんですのよ。」
「相手が教師!?」
それは大事だな。俺らの場合はあくまで同じ学生同士の決闘だったからな。教師に対してもこのイベントは許可が下りるもんなんだな。実質、教師による制裁、見せしめみたいなもんだろうけど。
「で、それに負けたと?」
「その通りですわ。当然の結果ですわね。命があっただけでも、良かったと思いますわ。まあ、教師側も名家アーチボルトのご子息を表立って処刑するわけにもいかなかったのでしょうけど。」
なるほど。問題を起こしたとはいえ、家名に守られた形になるのか。だったらなおさら、決闘が起きた切っ掛けが気になるところではあるな。