第141話 オレを見たら死ぬと思え!
「エルるんと違うクラスなのは残念だなぁ。つまんない!」
今日から本格的に学院での生活が始まる。でも不満は多い。その筆頭がほとんどみんなと離れ離れってこと。三馬鹿トリオは別にいいけど、エルるんとも違うクラスだとは思わなかった。やっぱり天才には敵わないなぁ。
「あのぉ……僕と一緒では不満でしょうか……?」
「は?」
そうそう、ウチと一緒になったのは以外にもジュニアだけだった。一人ボッチになるよかマシ! この前の一件をまだ引きずってるからしょぼくれてるけど、多少イケメンだからまだ許せる。三馬鹿トリオと比べると天地ほどの差がある。
「アンタさあ、いつまでそんな陰気臭い顔してるつもり? いつまでもそんな事続けるなら、絶交しちゃうからね!」
「ぜ、ぜ、ぜ、絶交!? それだけは勘弁……? あれ? ということは僕をお友達と思ってくれているんですね?」
何コイツ。急にテンションが上がった。ホントに嫌いだったら、ウチの独断でとっくにパーティーから追放してるよ? いきなり求婚してくるから拒否権発動しただけ、って事をわかってない。あくまでキープよ。キープ。
「何言ってんの? 別に友達にはならない、とは言ってない。勘違いするんじゃないわよ。」
「や、やった!? ではお付き合いはして頂けるんですね?」
「は? 何言ってんの? あくまで友達! キープってこと。」
「お付き合いはダメなんですね……。」
「すぐに交際とか結婚につなごうとするから、ダメなんじゃん! キモい!」
「僕、キモち悪いんだ……。でも、結婚前提でお付き合いを始めるのは、貴族の常識なんですが……。」
「知るか! そんなもん!」
「ひぃぃ……!?」
全く貴族って奴等は! 頭がカタイ! 恋愛くらいもっと気楽にやれよ! 色々と形式にばっかり囚われて、馬鹿みたいなことばかりやってる。そんなだからエルるんみたいに苦しむ人が出てくるんだよ!
「チッ、なんでアイツが……!?」
近くから聞こえてきた舌打ち。誰だ? 失礼な! でも、なんか聞き覚えのある声。聞こえてきた方向を見ると、あの陰キャオーラ全開のアイツがいた!
「あーっ!? 弟がいる!?」
「弟……? 誰のですか? お嬢さん?」
「チッ!?」
間違いない! この前と服とかは違うけど、あの真っ黒な感じの陰キャオーラは全く隠せてない! コイツは絶対、エルるんの弟、エピオンだ!
「エピオンじゃん! なんでココにいんの?」
「……違う。俺の名前はデュオ・マックスウェルだ。」
「は? 何その偽名? エルるんの弟のエピオンでしょ?」
「Mrsグランデに弟さんがいたんですか?」
わざわざ偽名を使ってまで、なんでこんな所にいるの? ウチら勇者パーティーと戦うため? でもそれじゃ、さっきウチに気付いて驚いてた事に説明つかないし? なんなんだろう? エルるんを追っかけて来た? シスコンをこじらせて、わざわざ入学してきたのかな? それだったら笑えるけど。
「フン、まあいい。ちょうどいい機会だ。ここにいる間に始末してやろう。改めて宣言する。お前を殺す。」
「何を言い出すんだ、君は!」
ウチとエピオンの間にジュニアが割って入ってきた。余計なことするんだから! アンタはウチの騎士にでもなったつもりなんか?
「誰だ、お前は? 関係ないだろう?」
「君の方こそ、レディに対して失礼だとは思わないのか! 殺す、だなんて失礼にも程があるぞ!」
「フン、ソイツの騎士気取りか、お坊ちゃん? 言っておくが、先に失礼を働いたのはその女の方だ。オレを侮辱したヤツは誰であろうと許すつもりはない。」
うわー、ウチをほっといて二人とも目から火花出してるよ! コイツらウチをダシにして喧嘩でも始めるつもり? 馬鹿じゃないの? 特にエピオン。この前のタマネギのこと、まだ根に持ってるみたい。相変わらず、器のちっさい男だなぁ。
「ちょ、アンタたち、朝っぱらから喧嘩なんてするんじゃないわよ。しかも初日から! せっかくの学院生活を台無しにしたらタダじゃ済まさないからね!」
「ゴメンナサイ、お嬢さん。」
「まあいい。お前を殺す機会なんていくらでもある。首を洗って待っていろ。」
「うっさい! 返り討ちにしてやるから! このシスコン!」
「あぁ!?」
「お嬢さん、挑発するのはいけません! はしたないですよ。あっ!? 先生が来たみたいですよ! 席に着きましょう。」
ちょうどいいところで先生が入ってきた。初日だから、ウチら自己紹介とかやんのかな? だとしたら、何を言おうかな?