第140話 質問コーナーの時間です!
「素性? いやぁ、俺らはトリオでコメディアンやってるんだよ。」
勇者であることを明かすわけにはいかないので、嘘をついた。まあ、実際、笑いを取りに行ってるしな。端から見たら、とても勇者パーティーには見えないだろう。というか、ミヤコも加えたら旅芸人一座に見えるかもしれない。特に今は額冠がないから余計にだ。アレがなければ色々誤魔化しようがある。
「芸人ってことか? なるほどねぇ。どおりで馬鹿っぽいわけだ。」
くそう! 馬鹿にしやがって! まあ、でも、そのおかげでなんとか誤魔化せたのだ。文句は言わないでおこう。
「まあいい。それよりも魔力“1”ってなんだ? フカシこいてんじゃねえぞ! そんなヤツがこの学院で何が出来るって言うんだ?」
素性だけでなく、根本的な問題にまで突っ込んできた。うん、確かに何もできないねぇ。魔力絶対主義なこの学院だとあまりにも無力な存在だ。
「逆にその“1”で何が出来るのかを探りに来たんだよ。全く何も出来ないだなんて考えるのはもったいないだろ?」
「おもしれえ。無能野郎がどこまでやれるのか、見せてもらおうじゃないか?」
これはハッタリでも何でもない。実際は「出来る」んだけどね。午後からの決闘を楽しみにしとけよ。そこで解答ということにさせてもらおう。
「目的は理解出来なくもない。だが、問題はここへどうやって入ったか、気になるところだな? 旅芸人如きにコネなんぞ、あるとは思えない。どんな手を使った? いや、いくら金を積んだんだ?」
そういう所まで疑うんだ? まあしゃあない。俺ら色々と怪しいし。基本才能、能力主義な学校だから、そういうの全く無しで入ってきた俺らが怪しまれるのは仕方ない。とはいえ、金で解決したと思われているようだが、そんなこと出来るんだろうか? 賄賂、裏口入学とかはよく聞く話ではあるが、ここで通用するかどうかは疑問がある。
「いやあ、知り合いが特別に入学するって言うんで、俺らはそのついでみたいなモンだよ。」
「ついでだと? その知り合いってのは何モンだ?」
本当のことは言えないので、エルに付いてきた事にしたのだが……。まあ、嘘ではない。彼女も俺らの同行を希望していたのは事実だ。出来れば名前は伏せたかったが、言うしかなさそうだ。下手に勘ぐられても困るしな。
「グランデ家のお嬢さんと知り合いなんだよ。」
「何!?」
教室内がざわめく。やっぱエルの実家は有名なんだな。さすがに彼女はこのクラスではないが、入学する噂ぐらいは学院内でも流れていたのかもしれない。
「ご大層なモンだ。大した後ろ盾がいるんだな。どうやって媚びを売ったか気になるぜ。本当かどうかは知らんが、そういう事にしておいてやろう。」
ヤツは不敵な笑いを浮かべている。後は独自に探りをいれてやろう、とか企んでいるのかもしれない。ちょいと警戒はしておいた方がいいかもしれんな。
「他に質問は?」
トニヤからの質問というか詮索が途絶え、これで終わりかと思いきや、先生が他の質問を促した。わざわざ促す辺り、先生も俺らに関して知りたいことがあるのかもしれない。以外にもあちこちから手が上がっている。なんだか人気者になってしまったかな?
「タニシ君はなんでさっきから、こそこそ隠れてるんですか? 尻尾が見えてますよ?」
まさかのタニシイジり! ヤツは自分の出番が終わった後、教壇の内側に隠れていた。あのような失態の後だ。穴があったから隠れたかったのだろう。
「ぎ、ギクーっ!? あっしはいないヤンス! ここにはいないので、いじらないで欲しいヤンス!」
(ガツン!!)
イジられ、慌てふためいたタニシは教壇に頭をぶつけ、教壇を押し倒しつつ、ぶっ倒れた。最早大惨事だ。教室は更に笑いの渦に巻き込まれていった。