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第130話 さあ、どうするね? 


「どうするね? 要求を飲むのか、飲まないのか?」


「でも、その前にこの額冠は自由に外せる物じゃないんですけど?」


「ハハハハ!」



 何を笑っているんだろう? 俺、おかしなこと何か言った?



「心配ご無用。というよりも魔術の力を甘く見ない方が良い。我々に不可能などはない。その額冠も魔術によって作られているのだ。制御・解呪・解析など造作なく出来るのだよ。」



 言葉の意味は良くワカランが、とにかくスゴい自信だ! なんで魔術師ってのはこういう万能感を自ら醸し出しているんだろうか? ラヴァンも似たようなこと言ってたし。



「その上でもう一度問おう。どうするね?」


「ぐむむ……!?」



 ハッキリ言って究極の選択だ。勇者を休む……それは俺の一存で決めていいことなんだろうか? とはいえ任務を引き受けた身でもある。しかも、それは俺じゃないと出来ないことだ。



「別に構わないのだよ。君を入学させることは我々にとって特にメリットなどないのだからな。」


「ぐむ~!?」



 徹底的に煽ってくるな。煽るということは向こうにも何らかの企みはあるのだろう。わざわざ額冠を預かると言っているんだ。俺の力を封じる事以外に額冠の解析も狙いなのかもしれない。以前、ヴァルもそれが目的でカレルを殺害しようとしていた。



「君の様に、特に見込みのない者が入学するのならそれなりの覚悟を決めてもらわねば困るのだよ。それに加え、勇者の剣の修理。あれについても解析にはある程度手間がかかるのだ。ただで行うからには、それなりの代償が必要だ。」



 覚悟か。よく言うぜ。俺もそれなりの覚悟を決めないといけないのはわかっている。剣を直すには魔術師の力を借りる必要がある。だがそれ以前に、噂通り、学院が後ろめたいことをしているなら、命をかけてでも暴き出さないといけない。それが勇者だ。勇者の使命だ。



「要求は……受け入れる。入学しないと何も始まらないからな。」


「よろしい。では早速、解除させてもらおう。」



 学長は優雅に片手を上げ、指を鳴らした。それと同時に俺は頭に違和感を感じた。いつも頭に感じていた緊張感のような物がスッポリと取り払われたのだ。自ら外した、大武会の時には感じなかった感覚だ。



「言ったはずだ。不可能はないと。約束通りこれはこちらで預からせてもらう。」



 額冠は俺の頭上から学長の方へと宙を浮いて、学長の手元へと飛んでいった。その様を見て感覚的なだけでなく、実際に俺の頭から額冠が外されてしまったことをハッキリと自覚した。



「では、改めて……ようこそ、魔術学院へ。魔術を極めんと、切磋琢磨する事を常に心掛け給え。」



 とうとう入学をしてしまった。これから未知なる世界、魔術師の世界へと足を踏み入れることになるのだ。



「勇者の仲間、そちらの二人も特別に許可する。三人一丸となってがんばってくれ給え。“三人寄れば賢者の知恵”という言葉もあるのだからな。」


「あっしらもいいでやんすか!?」


「ドンと来い! 何でも来いッス!」



 この二人も許可をもらえるとは正直意外だ。いや、待てよ? 言動からすると違うか? 三人でも一人分の魔術師に満たないという皮肉を込めているのかもしれない。俺たちの存在は魔術師にとっては取るに足らない存在だろうし。



「……そうそう、言い忘れていたが、君は武術家なのだろう?」


「うん、まあ……?」


「そうであれば、その武術とやらもこの学院に在学中は使用を禁ずる。」


「……!?」



 まさかの展開! 技まで使用禁止だと? 聞いてないぞ、そんなこと! 後出しの条件はずるくないか?



「後出しの条件だとでも思っているのだろう? 甘いな。それは断じて違う。ここはあくまで魔術を学ぶための学び舎だ。あらゆる事は魔術を以て解決せよ、というのが我が学院の掟だ。些細なことでも魔術を行使し解決を図る。それが魔術の技術を向上させる切っ掛けとなるからだ。」


「む、むむ!?」



 残念ながら後出しではなかったようだ。もとから規則として設定されているとは……。勇者の力も使えない、剣は壊れたまま、技の使用も禁止。これは三重苦だ。俺は未だかつてない困難に立ち向かおうとしているのかもしれない。

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