第128話 三馬鹿トリオのヒマつぶし
「デスカラ、ココヲオトオシスルワケニハイキマセン!」
やたらと無感情な合成音声に俺はお断りされていた。門番代わりの衛兵ゴーレムが門を塞いでいて通れない。……というのも、学院までやってきたのはいいが、俺たち、三馬鹿トリオは通せんぼをくらっている。毎度おなじみ、馬鹿勇者、アホ犬、筋肉ゴリラ、いつもの問題児トリオである。
「ソコヲナントカナリマセンカ?」
学院の門前町は問題なく一般人も立ち入る事が出来た。問題は学院の門の先からだ。元々招かれていたエルやロッヒェンはラヴァンと共に学院の敷地内に入れたが、俺は書状を渡すことぐらいしか出来なかったのだ。中に入るのは学院側の許可をもらい次第ということになる。
「アニキ! 声色を合わせたところで、許可が出るはずないヤンスよ!」
「ウルサイ! イロイロヤッテミナイト、ワカラナイダロ! ナニゴトモチョウセンダ!」
「あっしとの受け答えまで変える必要性ないヤンス! 無駄に前向きなのもおかしいヤンスよ!」
とりあえずヒマなので、俺のとんちが通用するか試してみたのだ。まあこれから、魔術師勢力と化かし合いをする可能性もあるし、どんな手段が通用するか可能性を探っておきたい、というのもある。
「ナニヲイッテイルカ、キキトレマセンデシタ。モウイチド、オッシャッテクダサイ。」
「ほら、もう、認識すらされてないヤンスよ!では、あっしが見本を見せるでヤンス! ウオッホン!」
おっ、タニシも乗ってきた。お手前見せてもらおうじゃないか? どんな手段を使うか見物だな。
「ヤンス? ヤンスうし? ヤンしうす。やヤンやヤンス、ヤンしゅう、ヤンし、しょぎゃわぬすっ!」
まるで意味がワカラン。これはあれか?この前、ミヤコと考えた秘密の暗号とか言うヤツか?
「さっすが、タニシパイセンッスね。格式高いッス。魔術師連中もビックリ、寝耳に水ッスよ!」
だからなんでお前、意味が解読できるんだよ! 初対面の時もそうだったような……。ずるいぞ、お前らだけ! 俺にもそれを教えろ!
「テキイヲケンシュツシマシタ! キンキュウモードヲキドウ!」
けたたましい警報音と共に発せされる、敵対の意志を伝える音声! どうしてこうなった?なにかヤバいこと言ったんじゃないか! 何かゴーレムの方から殺気のような物を感じる……。
(バシュウウッ!!!!)
ゴーレムの目?と思われる宝石が埋め込まれた部分から、猛烈な勢いでビームが発射された! 俺はとっさにタニシを巻き込みつつ、地面に伏せた。明らかにタニシに向けて発射されていたからだ! ビームはそのまま先にあった壁に命中し、着弾部分には見事に風穴を開けていた。あっぶねぇ!
「何言ったんだお前!」
「中に入れてくれやがり下さい、この木偶野郎様……的な事を言ったヤンス。」
「ナニソレ……。」
「いやあ、牽制しつつも、丁寧にエレガントにバイオレンスを心掛けたでヤンス!」
「なんじゃそりゃあ!?」
丁寧に恫喝したようなもんか。とはいえ、それだけで敵対判定をくらうとは、判定の基準がイマイチよくわからんな。
「さて、次はどうしてくれようか……?」
「次、俺っちの出番じゃないすか? 流れ的に。」
「お前はダメ!」
「ズルいッスよ、師匠! 何で俺っちだけダメなんスか!?」
ダメに決まってるだろう。ついこの前、粗相を働いたばっかりじゃないか! お前どうせ、爆発関係なんだろ? 爆発に決まっている。爆発にちがいない! というわけで却下だ!
「じゃあ次は……くすぐり攻撃で攻めてみるか!」
「ゴーレムにそんなの通用するワケないヤンス! こういう時は合い言葉的な物を探るのがいいヤンス。開けゴマ! ニイタカヤマノボレ! トラトラトラ! コックリさん! 犯人はヤス!」
くすぐり攻撃の方が効果的だと思うんだけどなあ。合い言葉とか下手したら、さっきみたいにビーム打たれるかもしれんのに!
「……おい!」
ゴーレムの脇から、急にラヴァンが出現した。やべえモンを呼び出してしまった! いかん、このままでは学院に入る前に蒸発させられてしまうぞ!
「うわぁ、で、出たぁ!? 石頭イケメンモードが起動してしまったぞ! ビーム打たれるぞ、極太ビームを!」
「わひゃぁぁぁっ!? スター・チャイルド打たれるでヤンスぅ! 違った、ヘクター・ハチジュウナナ? それともマスタード・カラーイドでヤンしたかナ?」
見るとラヴァンはご立腹のようで、こめかみの部分の青筋がピクピクしてるのが丸わかりだった。どえらいことになってきおったでぇ!