第122話 大反省会~男子side~
「もう無理です。僕はもう生きていけない。」
旅立ちの前の告白! それは無残にも砕け散った! それでも旅を止めるわけにはいかず。我々は魔術学園への道のりを強行せざるを得なかった!
「まあまあ! 生きてさえいれば、そのうちいいことあるでヤンス!」
とはいえ、ロッヒェンをそのままにしておくわけにもいかなかったので、野営のタイミングで男性陣と女性陣に別れ、大反省会を開催することになったのである。
「例えば?」
「た、例えば……おいしい物を食べたりとか、おかしい事をしたりとか、おいしい事にあやかったりとか、おかしい物を食べたりとか、おかしい事を食べたりとか、あやしき事を食べ歩いたりとか……、えーと、えーと!」
タニシは必死に励まそうとしているが、何か空回りし始めていた。割とありがちな気を紛らわす手段を思いつく限り列挙したはいいが……ネタはすぐ尽き、カオスな内容になり始め錯乱し始めた。
「いっそのこと、おかしくなってしまえばいいんすよう!!」
あーあ。ついに壊れた。お前がおかしくなってどうする。ミイラ取りがミイラになってなってしまった。
「ああ、やっぱりダメなんだ。僕もいっそのことおかしくなってしまおうかな……。」
「あー、ダメダメ! おかしくなってはいけない! こんなアホ犬の言うことは気にしなくていい! 何か楽しい事を考えるんだ。」
「どうもぉ~! 毎度おなじみ、アホ犬でヤンスぅ~!」
ダメだ! さらに悪化してしまうぞ、このままでは! ……そうだ! 最近、ロッヒェンと似たような経験をしたヤツがいたことを思い出した!
「ロッヒェン、落ち込むことはないぞ! お前より酷いフラれ方をしたヤツがいるんだぞ! しかも、今、一緒に旅をしている!」
「……誰なんですか?」
「おい……。」
ヤツはすぐさま反応した。ヤツは自分には無関係とばかりに反省会に参加していなかったのだが、話は聞いていたようだ。それとも地獄耳なのかな?
「そいつはな、そもそも正式な婚約者がいるというのに、彼氏ありのお嬢様を略奪しようとしたんだぜ!」
「そ、それは酷いですね。」
「止め給え……。」
設定からして興味を引く内容。しかも、実際にあった出来事。おもしろくないはずがない。当人もさすがに身を乗り出そうとしていた。
「しかも、お嬢様の彼氏を、“お前は相応しくない”とか罵りたおしたんだぜ。しかも、決闘したときにだまし討ちをしてきたし。」
「やけに生々しい……。色々と卑怯で卑劣な男ですね。」
「ぐぬぬ……。」
怒っても仕方ないんだよなあ。話は別にもってないもん。ホントにあった恐い話だからね、コレ。
「結果、この男はどうなったと思う? 最終的に決闘に負け、お嬢様にも“あり得ない”と言われ、その母親にもお断りされちゃったんだぜ。それに比べたら、君の失敗は大したことはないと言える!」
「うーん、どうなんでしょう……。」
「私はフラれてなどいない! 私までつまらない話に巻き込むのは止め給え!」
巻き込むな、とか言うなよ。見込みのある若者をなぐさめるぐらいはしてやれよ。何をお高くとまってるんだ。このままのメンタルだとお勉強に影響するかもしれんぞ。
「つ、つまらない話なんでしょうか? それとも僕という人間がつまらない……、」
「ち、違う! 別に君の事を言っているわけではない。この品性のない男の話がつまらないだけだ!」
「ひ、品性が……ない! だからフラれたのか……。」
「あーあ、悪化しちゃったんじゃない、コレ。」
「ち、違う! 断じて私のせいでは!」
彼のメンタルにさらなるダメージを与えてしまったようだ! ダメだ、これでは逆効果だ。なんとかせねば!
「うひひへっ! そういうときはコレを飲んでみるでヤンしゅうぅ!!」
とち狂ったアホ犬がロッヒェンに見覚えのある瓶を差し出した。まさかアレは……。
「頂きます!」
(……ゴキュ、ゴキュ……。)
俺自身もその飲み物の正体に気付いたとき、ロッヒェンの動きが止まった。間違いなくそうなる。アレは……マズいはず!
「ぶふぅ!? ま、マズい! 質の悪いハンバーグの味がする!!」
そう、アレは……ゴッツン・ゴーの特別版“ゴッツン・ハンバ・グー”だ! 要するに“焼きたてハンバーグの味”。 例の大会の参加賞のヤツ。マズいはずだ。味だけじゃなく雰囲気的にも……。