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第119話 これも若さか……。


「残念なお知らせがありま~す!」



 羊の魔王についての話でゾッとするような思いをしていたら、ミヤコの緊張感皆無の声が聞こえてきた。アイツには例のことを頼み、旅立つ直前まで粘ってもらっていたのだが……。



「修理出来ませんでした。ダメだよ、コレ! 一体何されたの?」


「ただ、羊の魔王の攻撃を防いだだけなんだが……。」



 ただ防いだだけ。特に変わったところはなかった。だが、それだけのことで壊されてしまった。ある意味、八刃に似た能力なのかもしれない。通常は斬れない物を斬ってしまうところなんて特に。



「なんかまるで、剣が“死”んでしまったみたいなのよ。剣からの反応が何もなくって。こんなの初めてだよ。」


「魔術的に破壊されてしまったのかもしれません。あの魔王はエンチャントや封印などの魔術を解除もしくは無効化する能力を持っていることで有名なんです。我々も多くの被害を被っています。」



 魔法がかかったもの限定で破壊とか解除したりするのか。やっかいだな。魔法を使って作られた勇者の剣にとっては天敵ってことになる。対処法はあるんだろうか? それ以前に剣が修理できなきゃ、この先戦えないじゃないか……。



「学院で解析してもらえば良い。魔術による物ならば専門家に分からない物はない。奴等魔王も基本的に魔術を使わねば戦えない。解析すれば攻略法・対処法も見いだせるだろう。」



 羊の魔王対策のためにも、魔術師協会の力を借りることは必須ですよ、ってことか。いけ好かない団体なのであまり気が向かないが、世界平和のためなら仕方ない。剣も直せないと戦えないしな。



「良かったな、勇者。同行する理由が出来て。本来ならあのまま同行を断るべきだったのだが、仕方ない。魔王の能力の解析は我々にも必要なことだからな。特に闇属性の魔術の研究は現在の魔術学会で話題になっているのでな。」



 闇属性の魔法はほとんど魔族の専売特許となっているので、情報が少ないんだろうな。それに倫理的に禁止されている魔法もあるらしいし。死霊術とかみたいに。闇属性の使い手は滅多に現れないそうだし、エルやエピオンみたいに闇の力に浸食された経験がある人にしか使えないから、余計に貴重なんだそうだ。下手に扱えば魔族になったり発狂して廃人になりかねないらしい。



「……多分、彼らの目的は闇属性の研究でしょう。私が協力すれば研究も進展すれば、彼らの機嫌も良くなると思う。そうすれば剣の解析も快く引き受けてくれるでしょうから、多少は我慢しましょうよ。」



 エルが小声で俺に告げ口してきた。内容からすると、魔術師協会に利用されることを覚悟の上で学院へ行くつもりらしい。学院に入学出来ないとはいえ、俺も覚悟を決めておいた方がよさそうだ。



「じゃあ、行くか! みんな揃ったし。」


「その前に、ちょっといいでしょうか?」


「何、ロッヒェン君?」



 ロッヒェンが声を上げた。これから旅立とうというのに、まだ何かあるというのだろうか?最後にトイレに行っておきたいとか?



お嬢さん(フロイライン)にお話があります!」


「へ? ウチに? 何の?」



 ミヤコに何の話があるというのか? 旅立つ前に「一緒にがんばろう」的な話でもするのかな?



「ぼ、僕と……、」



 僕と?



「僕と結婚して下さい!」


「何ぃぃぃぃぃっ!?」



 その場の全員が驚愕した! まさかの告白! まさかの求婚! このタイミングですることだろうか? これも若さか!



「は? 何言ってんの、アンタ? それ冗談のつもり?」


「冗談とかではありません! 僕は本気です! 貴女の事が好きになってしまいました! 貴女とずっと添い遂げる覚悟です!」



 情熱的に求婚するロッヒェン。目付きからしてかなりの本気だ。一世一代の大勝負みたいな雰囲気だ。ところがミヤコの方はというと……メチャクチャ冷めている。すごい冷ややかな反応だ。



「断る! なんだよ、もう! 童○ってのはちょっと優しくしてやったぐらいで勘違いするんだから! しかも、こんなタイミングで言うな! 公開処刑みたいじゃない!」



「えええっ!? そ、そんな!? ご無体な!?」



 あーあ。フラれちゃった! どうすんだよこれ。今から旅立つのに、コイツら凄く気まずくなるんじゃないか? その場の勢いで突っ走った結果がこんな結末を生むとは……。これも若さか……。認めたくないものだろうな。

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