第117話 勇者は学院に入学でき……ません!
「ミヤコ・ヒーラジィーロ。君も学院に来る資格は十分にある。」
なんだよそれ! あの時はエル以外をその他大勢としてしか認識してなかったクセに。手の平返しとはこのことか。大方、アイツの素性を知ったから、うまく引き入れようという魂胆なのだろう。
「ウチはそんなに魔術は使えないんだけど?」
「多彩な魔術を使えることも才能の内だが、なにより君はほぼ唯一無二な魔術を使うことが出来る。その力を磨くためにも勉強する価値はあると思う。」
ミヤコの使う魔法はそんな特殊なんか? 変成魔法とか言ったっけ? それならサヨちゃんも使い手だったし、珍しくないのではとも思う。まあ、それ以前にサヨちゃんは人間じゃない。古竜族だからヤベエことを何でもさらっとやってのけていた可能性はあるか。ロストテクノロジー的な?
「あっそ。じゃあ行く。」
「お嬢さんと一緒に勉強出来るなんて光栄です!」
ロッヒェンもついてるな。謹慎処分になったけど、好きな女の子と一緒に留学だもんな。罰ゲームどころか、ボーナスステージとか休暇をもらったようなモンだろ、コレ。
「それじゃあ、俺らも……。」
「ありえないな。勇者とはいえ、魔術が使えない者には用はない。入学すら許されないだろう。」
「ちぇっ!」
その場のノリで許されるかと思ったら、やっぱ無理か。魔法がほとんど使えないことも影響しているとは思うが、俺はコイツに嫌われてしまっている。そういう意味でも無理だろう。
「よって、君の同行を許可することは出来ない。そこにいる、他二名も同様だ。」
「他二名で済まされたヤンスぅ!」
「え? 俺っちは特待生じゃないんスか? こんなに才能溢れる人材なのに?」
チクショウ! 俺とエルを分断する目的もあるというのか! 諦めの悪いヤツだ。そして、その他で済まされるエロ犬とゴリラ。タニシは俺と同じで魔法はほぼ使えない。ゲイリーはというと、エルの話によれば爆裂魔法が使えるのでは、という疑いがある。それに加え謎の無効化能力もある。その辺は俺らですら最近知ったことなので向こうも知らないだけだろう。知らなきゃ、ただのゴリラだ。
「ラヴァンさん。同行すら許さないなんて、どういう事ですか?」
「どうもこうもない。同行は無意味だろう? そもそもついてくるのは無駄な行動だと思うが?」
無意味か……。確かにそうかもしれんけど、道中はくらいは一緒にいたい。着いたら、別行動せざるを得ないが。
「同行を許可して頂けないのなら、特別受講の件をお断りさせてもらいます。」
「むっ……。相変わらず、強情だな、君は。」
見るからにラヴァンは困っている。さすがエル。無理って言うんなら、要求は飲まない。ヤツも招待を断られるのは困るだろう。魔術師協会とやらにも顔向け出来ないだろうからな。
「同行は許そう。しかし本当に学院までの道のりだけだからな。彼らを学院に入れることは出来ない。これだけは絶対に曲げられないからな。」
なんとか同行許可は出た。でも頑なに学院にINする許可は出ない。人に強情とか言っているが、ヤツも十分強情だ。エルも含めてだが、頭いい人はみんな強情なんだろうか?
「早速旅立つ準備をしてもらいたい。予定ならばもっと早く戻るはずだったのだからな。」
「僕のせいですね。ごめんなさい。」
「やむを得ない理由だったのだろう? それぐらいは不問にするさ。その代わり、エレオノーラ達を連れて行くことが出来るのだ。こちらにとっては大きなメリットだ。」
かくして、次の目的地は決まったのだった。最近はお呼ばればっかりしてるな。こちらが自発的に目的地を決めたのはあまりないよな? まあ、いいか。それくらいは気にしないでおこう。