第116話 事後処理
「グランツァ・ロッヒェンJr、貴様に処分を下す。」
戦いが終結した後、クルセダーズ本部へ戻った。それからは怪我の治療などを経たため、何日か滞在することになった。そして今、ロッヒェンへの処分が言い渡されることになった。アイツは今回の戦いに貢献したとはいえ、命令違反をしてしまったからだ。
「貴様は本日を以て、無期限の謹慎処分とする。」
流石にクビにはならかったようだが、順当な処分だろう。組織っていうのは色々メンドクサイ。自分自身が良かれと思って命令に背いて行動し、最悪の事態を免れることが出来たとしても、責任は追及される。
「慎んで処分を受け入れます。」
組織の意向に背いた行動は組織の不利益につながる可能性につながるとして、重い処分が下される。軍隊とか国とかはそんな感じだもんな。俺はそういう事に反感を覚えるタチなので、集団という存在はイマイチ好きになれない。それ以外にも理由はあるけど……。
「だがロッヒェン、貴様には元々命じていた任務があるな? それについては解任しないものとする。謹慎には影響しないからな。」
「……は、はい。」
与えられていた任務とは何だろう? 謹慎しながらでも出来る? 事情がわからんから、謎かけみたいだな。ひょっとして……内職とかでもするんだろうか? んなわきゃあない!
「この任務については、わざわざ受け入れ先の関係者がこちらに訪ねてきている。紹介しよう。」
総長は側近に対して客人を招き入れるよう指示をした。さて、どんな人なんだろう? とはいえ俺がそんなこと気にしてもしょうがないか。関係ないし。しばらくして側近の人が客人を案内して戻ってきた。おや? 何か顔に見覚えが……?
「すまんな、ラヴァン殿。わざわざご足労頂いたのに待たせてしまったな。」
「どうかお気になさらずに。急務があったとお聞きしていますので、致し方ないことと存じております。」
「ラ、ラヴァンーっ!?」
思わず大声を上げてしまった! 想定外のヤツが出てきた。こんなところで会うとは思わなかった。なるべく思い出さないようにしてたのに……。
「何故、君たちがここにいるんだ!?」
「う、うるさい! それはこっちのセリフじゃい!」
「ほう、なるほど。双方共に面識はあったのだな。」
ちょっと! なんでコイツがいるのか説明してくれよ! ああ、君たちトモダチだったのねみたいなノリで済まそうとするの止めてくれないかな?
「僕の任務は……魔術学院に特別受講生として赴く事だったんです。僕に魔術の才能があると魔術協会の方が目をかけて下さったみたいで……。まあ、任務というより、留学と言った方が正しいかもしれません。」
留学だとぉ!? しかも魔法学校なんてものが存在しているのか! 剣士でありながら、魔法の才能まで認められるとは、さすがロッヒェンはエリートだな。
「ロッヒェン君には是非本格的に魔術を学んでもらいたいと思っているのでね。方々から彼の多才ぶりは我々の耳にも届いていたのだよ。」
「ウム。我々クルセイダーズとしても、ロッヒェンの将来を考え、向かわせることを決定したのだ。伸ばせる才能は伸ばした方が良い、とな。」
なるほどねぇ。恵まれてるなあ。多分俺だったら、両方から丁重にお断りされてしまいそうだ。
「ここで君たちに再会したのも何かの縁だ。ロッヒェン君以外も受講生として招待したいと思う。」
と言って俺の横にいるエルへ視線を送っている。ああ、そういうことか。コイツまだ諦めてなかったんだな。
「エレオノーラ、君も魔術学院に来てみないか? 前にも話したように、魔術協会の内部では君の評価は高まってきているんだ。君が学院で学べば更に才能を伸ばせると思う。」
「私が? いいんでしょうか? 私は魔術協会と袂を別った人物の娘なんですよ?」
「問題ない。学院側もその点については目をつむると言っている。気にすることはない。」
「行けばいいんじゃんじゃない? 向こうもそう言ってるんだから。」
エルは静かに頷いた。ラヴァンの言い分だけでは納得してなかったようだが、俺の一押しでなんとか決心したようだ。エルにとって魔法はほぼ独学だったみたいだから、今が学ぶための絶好のチャンスだろう。
「エレオノーラともう一人……君も受講生として迎えたい。」
ラヴァンはもう一人指名した。それは……意外にもミヤコだった!
「う、ウチが!? な、なんで!?」
戸惑うのも無理はない。仲間の俺らだってビックリだ。まさかの人物を指名してきた。一体、何が狙いなのか?