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第108話 猿なのに狂犬! ゴリラなのに狂犬?


 ネグロスというデーモンとゲイリー君が死闘を繰り広げる様を私は見守っていた。ゲイリー君に加勢を持ちかけたけれど、彼に断られてしまった。余裕で勝ってみせると宣言さえしていた。



「ペロータ・マニプラ!!」


「爆、鳳波!!!」


(ズガァァァァァン!!!!)



 剣と素手の戦いとは思えないくらいの爆発が発生してる。ゲイリー君の攻撃は何故か爆発を伴うものばかり。しかも、見様見真似でロアの技を真似している。まるで違う技のようになっているけれど、これはこれで凄い才能なのかもしれない。



「何かにつけて爆発、爆発。お前、頭の中、爆発してんじゃねえか?」


「なんじゃこりゃあ! やんのかグルァ!!」


「しかも話がまるで通じねえ。俺らよりよっぽど魔族みてえじゃねえか? ルス・デルソルの狂犬こと、テ・ネグロス様がお墨付きをくれてやる。大した狂いっぷりだよ、お前は!」


「猿のクセに犬って、どんな間抜けなんだ? このエテ公!」


「んだと、オラァ!!!!」



 まるで子供の喧嘩みたいになってきた……。さっきまではまともだったのに一転して、ただ殴る蹴るの応酬になった。ゲイリー君も何故か剣を捨ててまで、殴り合いに対応している。もう何の戦いなのかわからなくなってきた。



「てめえには狂犬の恐ろしさを教えてやる!」



 ネグロスは姿勢を低くして、肉食の獣の様に牙を剥いた。ゲイリー君も手を止めて構えている。まるで本物の猛獣同士が睨み合っているかのような錯覚を覚えた。



「ローボ・ウラカン!!」



 ネグロスは手の爪、口の牙を交えた猛獣のような戦い方を始めた。あまりの激しさにゲイリー君は反応し切れず、体中に傷が増え、為すがままになっている。というより……避けようとしていない?



「どうだ! 避けきれないだろう? それがお前ら人間の限界ってことだ! 戦闘力はどうしたって、俺らを超えることはない!」



 自分たちの優位性を主張しつつ、それを上回ることが出来ないのを指摘し、絶望感を煽る。デーモン達はいつも人間の身も心も蹂躙しようとしてくる。どこまでも人を傷付けることを生き甲斐にしていることが透けて見えてくる。



「グワッガ!!」



 ネグロスはとうとうゲイリー君の首筋を捕らえ、牙を突き立てた。あんなところに食らいつかれたら、命が危ない。これはもう加勢しないといけない。彼に断られたとしても、放ってはおけない。



「はっはっはっ!! これで勝ったつもりかぁ! 猿ってのはおめでてえ頭してやがるな!」



 噛み付いているため、ネグロスは反論できず、目だけでギロリと睨み付けている。そこには明らかに怒りが感じられた。


「飛んで火に入る夏のムシってか?」


(ミシミシッ!!)



 噛み付いている相手をそのまま抱きしめるように腕を巻き付け、強く締め上げるように締め上げ始めた。その恐ろしい力のためか、ネグロスの体が軋む音がここまで聞こえてきている!



「ム、ムグゥゥッ!?」


「どうだぁ、苦しいだろ? 俺を噛み殺す前に背骨が折れちまうんじゃないか?」


(ミシミシッ……ボキボキッ!!)


「グガァァァァッ!?」



 音が明らかに変わったところでネグロスが悲鳴を上げ始めた。そのため噛み付きを解除して拘束から逃れようと必死にもがいてる。



(……ボギンッ!!)


「ギャアアアアアッ!!」



 折った! 本当に折ってしまった! ネグロスの体が不自然に曲がっているので間違いなさそう。ゲイリー君は拘束を解き、自ら放りだしたままにしていた剣を拾いに行った。ネグロスは背骨を折られたのでまともに動くことが出来ないので、逃れることも出来ない様子だった。



「オイ、エテ公! いいザマだな! デーモン様は背骨を折られてもまだ平気なようだな。」



 ゲイリー君は倒れているネグロスを前に大きく上段に剣を構えた。止めを刺すつもりでいるみたい。



「爆、竹撃!!」


(ドゴォォォォン!!)


「グギガァァァァッ!!」



 間近で技の直撃を浴びても、ネグロスはまだ死んでいなかった。その様子を見てゲイリー君は笑みを浮かべている。その笑みはどう見ても尋常じゃなかった。まるで……悪魔のようだった。



「強えなあ。デーモン様ってのは体の耐久性もすげぇんだな! じゃあもっと痛めつけてやらねえと死にそうにねえわぁ!」



 ニッと恐い笑顔をネグロスに向けて、剣を再び大きく振りかぶった。そして、ためらいもせずに振り下ろした。



「爆、竹撃!!」


(ドゴォォォォン!!)


「グアッ!!」


「爆、竹撃!!」


(ドゴォォォォン!!)


「ガハッ!!」


「爆、竹撃!!」


(ドゴォォォォン!!)


「ギッ!」


「爆、竹撃!!」


(ドゴォォォォン!!)


「……ゲ!!」


「爆、竹撃!!」


(ドゴォォォォン!!)


「……。」



 何度も何度も繰り返され、ネグロスの体は正視出来ないほどのボロボロにされていた。その光景の凄まじさに私は途中から目を背けていた。



「すげぇな! まだ死んでねえぜ! さすがはデーモン様々ってところだな!」



 ゲイリー君はこのまま勝ってしまうかもしれない。でも、このまま終わらせてはいけないと思う。彼が勇者の弟子を名乗っているのなら、こんな行為は改めさせなければいけない!

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