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第107話 その剣、その技に思いを乗せて。


「何をボケッとしてやがる! 今死のうって時に現実逃避でも始めたのか? 一思いに殺してやるよ!」


「決死の覚悟を決め込んだだけさ。その隙を突かなかったことだけは感謝する。」


「当たり前だ。強者ってのは器も大きいモンなんだぜ! 死の前に多少なりとも希望を持たせてやるのさ。その上で潰した方がダメージが大きいからな。」



 心の中での会話は長く感じたが、実際には外の世界で、あまり時間は経過していなかったようだ。長かったのなら、相手の性格からして、待っているはずはなかった。勝ちを確信しているから、余裕を見せていたのだろう。それが命取りだったことを思い知らせてやる。



「闇炎の雨!!」



 先に相手から仕掛けてきた。こちらも同じく技の動作へと移す。左肩を負傷しているはずだが、気分が高揚して痛みの感覚が薄れている。これなら問題なく普段通りに技を振るえる!



「羽毛の如く、体軽やかに!」


(ガギィィィィン!!!!)



 互いの剣がぶつかり、赤い炎と黒い炎が弾ける。両者の技のタイミングはほぼ同じだった。



「小癪なぁっ!!」



 怪我をした状態で互角に戦えるなんて、相手は想定してなかったのだろう。優位に立っていると思い込んでいたのが悪い。



「剣を弓の如くに引き、流星の如くに振り下ろす!」



 こちらの剣撃がわずかに速く、相手の攻撃を弾き飛ばした。それでも相手は体勢を瞬時に立て直し、次の一撃の体勢に入った。



「同じ技で負けるはずが……、」


「その時、剣は双刃となる! その双刃もって空擦れば炎立つ!」



 追従剣も本体に負けず劣らず、激しいぶつかり合いを続けている。しかしこちらが若干押している。



「俺の方が実力は上なんだよぉ!!」


「俊足を持って、敵の懐に入らば、」



 もう既に相手の技は瓦解し始めていた。タイミングに狂いが生じ、隙を作る結果になってしまっている。



「こんな小僧に……!?」


「赫灼の雨がふる!!!」



 口撃を掻い潜り、相手の懐に入り込み、追従剣と共にその体を十字に切り裂いた。その切り傷から赤い炎が引火し、瞬く間に全身を包み込んだ。



「これで終わりだ! 裁きの十字炎をその身に受けろ、雨の終焉!!!」



 追従剣と共に相手の全身を切り刻む。相手の体はバラバラになり宙を舞う! 炎も一層勢いを増し、最後の灰まで燃えつくさん限りの激しさを見せている。



「こんな奇跡は…起こりえる…はずが…な…い。」



 辛うじて原型を留めている頭部が、断末魔の如き悪態をつく! 現在の状況がその言葉を全力で否定していた。



「起きるさ! それが大勢の人の思いがこもっているなら起こりえるんだ!!」



 最後の一撃は相手が制御下に置いていた追従剣によって成された。剣は奪えても、誇りまでは奪えなかった。



「武器如きに…裏切られる…なんて、なんて…無様なんだ、お……れは……、」



 ヴァボーサの頭部は真っ二つになり、炎に焼かれ燃え尽きる。これで完全に事切れた。



「父上、お嬢さん、みんなありがとう! この勝利はみんなで勝ち取った物だ!」



 今まで奴に敗れた英霊達も力を貸してくれたのだろう。それがみんなが求めていた勝利をもたらしたんだ。



『見事だ、Jr。お前はもう私の立派な後継者だ。胸を張って生きていくが良い。』



 十字の炎剣は悪魔の元から離れ、僕の眼前まで一人でにやってきた。まるで父上の意志が宿っているかの様に。



「最後の決め手になってくれた。ありがとう。」



 改めて剣を手に取り感謝する。これからは悪用される事はない。ずっと守り抜いていくんだ。

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