第102話 いや、だって、気になるよね?
二人組のデーモンを倒した後、後方からやってきたクロエさん達に力士とウネグの手当を頼んだ。俺は戦いの続いている所へ行く必要がある。
「エル! エド!」
「ロア!」
やっとエルのところへたどり着けた。エドも一緒にいる。二人はそれぞれ戦闘後のためかボロボロになっていた。そんな姿でロッヒェンの戦いを見守っているようだった。
「アイツは親の仇と戦っているんだな?」
「ええ。ミヤコちゃんが力を貸してくれたみたいね。」
「アイツも粋なことをするもんだなぁ。」
「とか言いながら……さっきから私のことばかり見てない?」
「うん? いや、それは気のせいなんじゃない?」
エルはムスッとしている。いや、だって見ちゃうじゃないか。服のあちこちが大変なことになってるんだもん。普通は見えていけないところが見えまくっている! 誰だ! こんなけしからんマネをしたヤツは! 成敗してやる!
「目がやらしいよ! 今はこんなことしてる場合じゃないでしょ!」
「いつだったらいいの?」
「もう!」
「うへへ♡」
怒られちゃった! 例え戦いの中でもそれを忘れちゃうくらい魅力的なんだもん。ずっと見ていたい。
「そんなことより大変なのよ! ゲイリー君が……、」
少し離れた所にヤツは倒れていた。全身血だらけの無残な姿になり、しかも心臓の位置に傷がある! まさか、死ん……?
「もう、息をしてない……。多分、もう……、」
「おい、しっかりしろ!」
体を揺らしてみても反応がない。心臓を貫かれているから、それが原因で死んだんだろう。どんなに頑丈だろうとそれをやられてしまえば、助からない。でも何か違和感を感じた。何だろう? コイツと戦っていたのは……?
「コイツを殺ったのは、アイツか?」
「ええ、敵のリーダー格のあのデーモンよ。」
今はロッヒェン相手に戦う悪魔。よく似た色が違うだけの剣を互いに交えて交戦している。それぞれ魔法の火を纏わせていた。コレだ。違和感の正体!
「ゲイリーはあの剣でやれたんだよな?」
「ええ、そうだけど?」
おかしい。ロッヒェンのあの技を喰らった、訓練場の人形はどうなった? バラバラに切り裂かれ、燃え尽きた。そう……燃え尽きたはずだ!
「血だらけだけど、コイツの体はやけに綺麗だ。もっと、こう、それ以外の傷が付いているはずなのに。刃物以外の傷が?」
「……?」
しばらく観察していたら、それ以外の部分でもおかしいところはある。血だらけの割に切り傷が少ない。まるで血を浴びたみたいな感じだ。死んでいるので、もう手遅れだが、不自然な死体なのは確かだ。
「こんなことを考えていてもしょうがない。生き返らない。この戦いが終わったら弔ってやろう。」
胸に空いた傷口から、ゴポゴポ、と血が溢れてきている。死んでいるはずなのに……。そのとき、不吉な気配を感じた。
「ペロータ・マニプラ!!」
(ボンッ!!)
思わず上体を反らした直後、目の前を黒い球体が高速で通り抜けていった! 奇襲だ! ロッヒェンが戦っているデーモン以外、さっきまで他に敵はいなかったはず!
「ケケケッ!」
球が飛んできた方向を見ると、新手のデーモンが二人出現していた。隻眼のデーモンと異様に禍々しい殺気を放つデーモン。隻眼のデーモンは構えを取ったままの姿勢でいるので、球を放ったのはコイツかもしれない。
「き、貴様、ネグロス! 生きていたのか!」
エドが声を上げる。言葉から察すると、コイツがエドに倒されたデーモンだったのだろう。でも、生きてその場に現れた。エドが仕留め損ねるとは思えないので、蘇ってきたのだろうか?
「しかも、貴様はサナ・ウォーリアだな。序列七位、猿の魔王!」
「その通り。俺の仲間を可愛がってくれた礼をしにきた。てめえか、イグレスってのは?」
桁外れに強そうなヤツが来たと思ったら……魔王が直々にご参上ってことか!