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第二話

<注意>


初投稿作品なので誤字脱字や文のおかしいところがあるかもしれませんがご了承ください。

 時刻は深夜十二時。

 数キロ先にあるテレンシア王国表門へとつながる草原道に一つの灯りが動いている。

「---聞こえる?あの馬車内にいる人物が今回の標的(ターゲット)。」

 隣で私と同じように草むらに伏せている同僚に伝達魔法(メッセージ)を飛ばす。

「---聞こえるよ。そんで、そいつはどんな奴なんだ?」

「---事前に言っておいたはずだけど...まぁいいわ。」


 なんで大事な情報をすぐ忘れてしまうのだろうか。

 ノアは仮面の下で呆れた顔を浮かべる。

 すると、隣から全く反省していないような声で「ごめん、わすれちった」と聞こえたが、いつもの事なので無視する。

 (ちな)みに、何故隣にいるのにいちいち魔法で会話するのかというと、一番の理由は情報漏洩を防ぐためだ。小声で話すとしても、相手の聴覚が優れていれば聞き取れる可能性もある。それにこちらが監視されていた場合、音声が無くても口の動きや表情で何をしようとしているのか大体分かってしまうのだ。

 まぁ、そのために仮面までつけているのだが。


「---彼、レグニド・ラギスは我々の敵対国家であるエルメド聖国の精霊騎士団(エレメンタルナイツ)三筆頭の一人、風の最上位精霊を宿している強者(ツワモノ)よ。」

「---げっ、マジかよぉ。でも、なんでそんな奴がでこの国に来ようとしてんだ?」

「---彼は元平民らしくてね、実力だけでその地位まで上り詰めた。

 しかし、貴族や王族は平民上がりの彼をよく思ってないのよ。そのせいで、いつも戦果を横取りされることが多いから一人で来たって感じかしら。」


「---なんか、あたし達と似てるね。」


「---身分というのは生まれた時点で確定する不変的な物、でも(ちから)知力(ちりょく)だけはそれを覆してくれる。」


 数秒間の沈黙が流れた後、ノアは何も言わず地に手を付けて変次元結界ディメンジョナルエリアを構築し始める。


 数時間前に話したことをもう一度話すのは少々面倒くさい、とノアは思う。

 しかし、相手の強さを見誤ってしまい失敗、なんて事は絶対にあってはならない。

(いっつもこんな感じよね...トレイルは。)

 ノアは心の中でちょっとだけ愚痴る。


 数分後、馬車を中心として半径200m程の大きな半球ができ始め、それと同時に先程まで聞こえていた木々の音は消え、周りの景色が徐々に変わり、永久に続くような草原へと姿を変える。


「---この結界は中のあらゆる情報が外に漏れないようにするためよ。もちろん外にいる人間からは、我々の事を見ることもできないし結界に入ることもできない。今回はこの結界内で事を済ますわよ。」

 どうせこの結界の事もよく覚えていないのだろうから、言われる前に説明しておく。


「---りょーかい。でも、そんなやばいやつなら()()()にやらせりゃいいのに...」

 トレイルは怪訝そうに言う。

「---()()に任せたところで後片付けは我々の役目、それに切り札を切るわけにもいかないでしょ。」

 両者互いに不満をこぼしながらも結界の構築が終了した。


「---この結界は持ってせいぜい二時間ってところ。だから今回のタイムリミットは深夜二時三十分まで。それ以上を超えたときは即撤退。」

 大きく息を吸い、呼吸を整える。

「---それじゃ...任務開始。」

「---了解。」


 * * *


 ガタガタと揺れる馬車の中は異様な雰囲気だった。


 4~5人は入れるだろう馬車内には、ただ一人そこに()する男の興奮によるものであろう狂気が満ちている。

 精霊騎士団(エレメンタルナイツ)三筆頭の一人、レグニド・ラギスは今、隊律違反を犯していると共に、のちに自らがもたらす惨劇、それによる周りからの称賛の雨を想像しているのだ。


「クフッ...クックック...フハハハハッ!」

 何故こうも笑いが止まらんのだろうか。

 私は今、我が国の英雄となる道を進んでいるのだ。

 

「私の真髄に気づかない...いや、気づけない無能(カス)どもに

 私の魅力をッ! 力をッ! 才能をッ! 見せつけられる日をどれほど待ち望んだだろうかッ!!」

精霊騎士団(エレメンタルナイツ)三筆頭などという称号では到底とどめることのできないこの力、今こそ発揮する時だッ!」

 大体、すべてあのクソ貴族共のせいだ。貴族という地位を使い、私をボロ雑巾の様に扱う。従わなければ、適当な理由を付けて私をこの地位から降ろそうとする。

自分達の利益しか考えない、社会に害をなす者は消えるべきだ。


「俺は変える...この腐った国を。そして国民皆笑って暮らせる世の中を作る。」

 本当はこんな事をせず、自分の力のみで解決したかった。


 でも無理だった。


 我々の安全、そして自らが国を変えるためには、犠牲は必要不可欠だ。

そう自分に言い聞かせ、来たる未来に備える。


「天から授かりし風の精霊の力、王国の民よ...私のさらなる高みへの糧となってくれたま...」


『ガタンッ!』


 彼の激しい独り言を制止するかの様に、突然馬車全体が左に傾いた。

「うぉ?! 何が起きた!早く進め!」

 自分の世界を邪魔され、怒鳴るようにラギスは乱暴にドアを蹴り外へ出た。


「...なんだこれは?」


 そこには

 左側のタイヤ二つが、まるで存在すらしていなかったかの様に無くなった馬車、つい先ほどまでこの馬車を引いていた者がつけていた帽子が落ちていた。

 もちろんその者はいない。


 ただ、彼はこの状況を起こした者が誰か瞬時に分かった。


「やったのは...貴様(おまえ)らか?」

 そこには文字の模様が入った仮面を付けた二人の人影が立っていた。

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