幽 霊
あれ・・・は
風邪 の せいだったのだろう か。
その日 の 私 は いつもと 違う 感覚 の
はっきりしない 様・・・な 頭だっ た 事 は ・・・確かで 。
・・・そう 頭には 雲谷【もや】 が かかっていた だから
これから 話す 事 は 現実なの か ? はたまた 、偽りなの か
だれかに 深く 問い詰められると 自信 は ない 。
本人から してみれば 、 身に 起きた 事は 一瞬・・・で
廻り から すれば 『 !! ! あ 』 っ を 発する 出来事に 過ぎない の だ 。
微熱の せいで その 頭 の 上 に かかった 雲谷 が
寝起きの 私を 夢 うつつ のように しながら・・・ 突然
1つだけ の 音を 捉え る。
「 来るんだよ ね・・・ ? 」 ネット 注文 した 物 が 。
最近 マウスの 調子 も 悪く 扱いも
難しいの で 新しく 車の形をした マウスを 注文したの だ。
期待の気持ち から か ドア チャイムの 音に
促されるように して 、 「 は~い 」 と 返事を してい た 。
玄関 の 方へ だるい 感じ の 身体を うごかす・・・と
見知らぬ 女 が まだ ドアを 開 ける前なのに
1D の キッチンを 少し 過ぎた ところの ドアの 前で
身内 か 、ともだちのように スッ・・・ と 立って いるでは ない か 。
どうやって?! ; 入って来たのだろ・・・う
さっきから 言っている が この日の 私は 風邪気味で 微熱 が ある 。
・・・もしかした ら この 起きている 体験 が 夢かもしれないの だ 。
安心 させるため か 、 先に 女 が 『 看護 師 』 を 名乗ってき た 。
トコトコ とこ 、 女 が 普通に 許可も なく 私のところまで 来ると
じ・・・っと こちらを みつめ た。
年齢 の 推定 は 50歳くらいなんだろう か 。
服は 薄い ピンク の ナース服を 着ては いるが 手には 道具すら 持っていない 。
何を しているんだろ・・・う 。
女が 部屋を 物珍しそうに 覗いている。
別 に そんな に 高価な 物など 置いては いないのだ・・・が 。
あれ ?! っ
いまさっきまで いた 看護師さん は ?
やっぱり 夢だったんだ な 、 いないか ら 。
と、 どこか 安堵していると 今さっきの 女が 目の前に また 立ってい る?! ;
声すら かけることが できない が 立っている 事は 現実 だ。
何かの ドラマでは 観た 事が あった 気が する 。
ほんとうに こんな 事が 起きると 悲鳴って 言うのは でないらしい 。
ただ 、 ただ、 驚きの方が 強い の だ 。
そうやって 現実を 受け いれたくないのかもしれない・・・が
・・・だめ だ
来客 だ と 認 識 しようと している、防衛本能 の方が 完全に 目覚めてしまっている。
こんな 瞬 間 どうしたら 良いんだろう・・・か 。。 。
恋人のように そんなに みつめられて も 困る。
しか し 、 また 謎 の 看護師 の 姿は どこにも ない 。
それにしても 凄く 気味 の 悪い 現象だ な 。
《 新 藤 さん です か・・・? 》
さっきまで いないはずだったのに 声 が した 。
「 いいえ 」
訊かれたことに 条件反射で 答えると 看護師 が
、また 自分 の め の 前に 立っている 。
女が 私を 凝視 してく る 。
、いや ;
覗き込みたいのは 私 の 側だ・・・よ ? ;
女 は いつのまにか きえ た 。
今度こそ げんじつ・・・に 。
数日 後 、 風 邪 が 治り 今は
この 夢現【 ゆめ うつつ 】の 様な できごと が
フラッシュバックを 時々 起こす 。
そうすると かならず 幻聴と 幻覚に なやまされ た 。
男が 一人だけ 立ってい て
私に 強く はなしかけて くるん だ 。
『 本当は 玄関 の 鍵を 自分で 開 けたんだ よ ?
だれかに 責められると 想って 認めたくない だけなんだ よ 』 って
、いや ちがう
ここは 何ケタ かの 暗証番号を 入力しないと 開かない 特殊な
ドアに なっているん だ 。
ドアのストッパー でも ない 限り 、自動で 鍵 が
かかるようになっているから ずっと 開 けた ままにしておくことも
・・・難 し い 。
自分で 開 ける 瞬間 【とき】 も ちいさいけど 音だって 鳴る。
それ・・・に 肝心 の 取りに行ったはずの お目当ての 荷物だって
驚きすぎて 手に 持って もどれなかっ た 。
奇妙な 現象が 治まった 後 荷物を ひとり 取りに 行ったん だ。
幻覚の 中の 男と 口論する。
『 私は あの瞬間 看護 師と 目が あって
無言 のまま 立ちすくんでいたん だ 』
「 うっかり !! ! 通してしまったのだろう
なんで 止めなかったん だ ! 」 っ
だれかに 責められているような その 感覚 が
幻影と 幻聴を 作り出している。
『 看護 師 だと いう 言葉を 聴いて
・・・すっかり 安心してしま;った 』
恐さよりも 看護 師という 魔法の 言葉と 服装に 落ち着かせら れ
自分では 呼んだ 覚えのない 人を 昔からの 知り合いのよう・・・に
お部屋の 深くに 通していた
何 の 疑いも なく どうやって 入って来たのかを 訪ねることもなく
勝手に 「 この人は 大丈夫だから 安心・・・だ 」と 想い込んだの だ
ふ・・・と
想い返した 瞬間に 初めて 恐怖 が 襲ってき た
はっきり と 「 何しに 来られたんです か?! 」っ
「 勝手に !! ! 入って来ないで ください 」 と 言えなかっ た。
ただ !? きょとんとしていて しゃべることもできなかっ た。
幽霊 ? だったの・・・か ?
・・・もし 幽霊 じゃない としたら たとえ まちがい であっても
ズカズカ と 縁も ゆかりもない人の家に 入り込んで 来ているのだから
法律では 一応 不法侵入と なる 。
一言 間違いを 謝りも せず・・・に 。
フラッシュバックが 起きている 間 こうやって いつも
幻聴と 幻覚 に 会う 謎 の 男と 言い合い しながら
( 現実・・・は 自分で ドアを 開 けたのかもしれな い )
・・・そう 想い込まされそうに なってい く 。
仮に この 目の前の 男が 私の 幻覚では なく 実在したとしていたとしても
この 恐怖を 体験したのは 私 ひとり だけなのだから
証拠のない 状態では 訴え出ることが できな い 。
幽霊でも 見たかのような 扱いを 受けるだけとなっていたであろう。
だが 不可解な 事に ドアを 開 けた 記憶は 全く なく
ドアを 開けた 時の 手の感触さえな い。
自分 孤独【ひとり】だけが 感じる 世界。
また 起こってしまう かもしれないという 不安と 想い出したくない という 戦い。
事が 起こった 時間 の 記憶というもの は だんだんと 日が 経つに つれ
鮮明さを 失っていく。
体験していない者に こうも 耳で 言われ 続 けると
本当は ドアを 開 けた のでは ないだろう ・・・か 憶えて いないだけで
もしくは ゆめだった だけ・・・ ?
などと 感覚 が 歪みに 駆られて来る
・・・まるで 冤罪 であるはずの 容疑 者 に 問い続ける 刑事 が
尋問のように して 何度も 同じことを 繰り返 し
言われ 続 ける度に こちらも 催眠 術に かかったように 『 ・・・開 けた 』 と
ふ・・・と 言いそうに なる 。
私の中では 軽い 一種 の マインド コントロール に 陥り
真実を 述べたがる 自分と 真実を 受けいれたくない 自分が 葛藤 していく
恐怖に さいなまれる。
でも 一番 恐い 事は こんな 話を しているのに だれも
・・・しんじてくれない という 事なん だ。
だれも 信じてくれないと 恐さを 無理やり 封印していくしか なく・・・て
『 ・・・開 けていない 』 と 言い切っている だけの 自分 が
バカらしくなって来たり 自信 が 無くなっていく 。。 。
そして また 同じことが 起きてしまうかもしれないという
感情 [ふあん] の 渦に 侵され 続 ける という 恐怖 感 。
体調が 万全ではない 熱の中で 体験してしまうと よけいに
現実で 起きていたことなの か さえ 自分に 問いたくなって来てしま う。
「 気のせい・・・だ 」 と 想い込むようにして
後で インターホン の 録画から 映っていた カメラを 覗いてみる・・・と
そこには 人の 目のようなものが 片方 、 映ってい た 。
・・・今 こちらを 観察 しているかのようにし・・・て 。
それも 普通に カメラで 撮った感じの眼では なく
生々しい よう・・・に 。 現在 「 ここに いる よ ? 」と 言わんばかり に
最初 に 伝えて いなかった が 事故 物件を 今は 貸りている 。
そうしないと 管理が 厳しくなっているせい か ほとんど 審査で 落とされてしまう。
不動産 屋 の 話によると 昔 ・・・
ここには 一人の 年配 の 男性が 住んでいて よく 看護師さんが 訪ねて来てい た。
看護師さんは 後に 男性と 恋仲となる が うまくは いかず
その 看護師さんは ある日 遺体で 発見され た。
犯人 が 捕まっていないらし い。
毎日 では ないが ホワイトデー の 日に なると 噂では
・・・ああやって 現れるのだそう だ 。
部屋を 貸りて ・・・まだ 1年 も 経っていな い。
自分を 殺したであろう 人を こうやって 捜し 続 けているのかもしれな い。
かつては 愛した 男性 。 今は 自分の 命を 手にかけられた 犯人とし て。
「 新藤さん 」 という 人・・・を 。
これは
・・・もしかしたらの 話だが 。
そう考えると 茶化して 悪戯に 答えてしまっていたら 危なかったのかもしれな い 。
『 新藤さん は ・・・あなた だったの ね やっと みつけたわ 』 っ”
想像の中で ゾっ と し・・・た 。
背中を 這うような 悪寒 が もぞもぞと うごい てい た。