覚悟を持って
3話目にしてこの更新の遅さ。すごいね
あとブクマと評価増えてました!やってくれた方ありがとうございました!
「例の村との連絡が途切れてしまった。一応調査はしているが、おそらく既に……」
会議を繰り返す。何度も何度も。そこで繰り広げられているのは何処がやられたのか、もしくは何処で作戦が成功したのか、そればかり。
「我らが指導者よ、いかが致しましょうか?」
自分よりも年上のの大人が、尊敬の目を持ってこちらを見て来る。それが今は、どうにも気持ちが悪い。しかも、決して一枚岩という訳ではない。
今こちらを見ている者のように、盲目的に心から従っているものもいれば、表向きは大人しく従っている振りをしてこちらを利用しようとしている者もいる。しかし全員に共通しているのは、俺のことを自分たちの指導者だと思っているということだ。
おっと、自己紹介が遅れたな。俺はアズ。貧乏な村の孤児だった男だ。そして何故か俺には前世の記憶がある。地球という星の日本という国で平凡に生きた記憶だ。
と言っても、俺はそこそこ若い時に車という乗り物に轢かれてあっさりと死んじまったんだけどな。
「俺の力によってバレることは無いだろうが、もしもということがある。悔しいだろうがここは堪えて機を伺うぞ」
死んでこの世界に転生した俺は、何故か他の人には無い不思議な力持っていた。それはある程度自分の思い通りの効果を持った機械を生み出すというものだった。
皆が皆このような力を持っている訳では無いということを理解した俺は、その力を隠して生きていた。……俺と共に旅商人として方方を回っていた両親が魔物に殺されるまでは。
アレだけは後悔してもしきれない。近くに居て、それでいて護れる力があったにも関わらず、俺は保身の為に両親を見殺しにしたのだ。
残ったのは力の使いどころを誤った愚かな俺と、生まれたばかりでまだ幼かった妹だけだった。
目が覚めた俺がせめて妹だけでもと必死で魔物を倒した所を保護したのが、今俺の周りに居る奴らだ。そしてその時に力を持っているのを見られた俺は神の使いとして担ぎ上げられた。
いくら力を持っているとはいえ、そして前世があったとはいえ生活基盤の無いまま生まれたばかりの妹を育てることなど俺には出来ない。
また、この世界は魔物がいる過酷な世界だ。何の役にも立たない子供二人なんて見捨てられても仕方ない。それでも何とか生き残ろうと努力した結果が今の神の使い兼指導者という立場だ。
「己が幸運を独占し、弱小な我ら民の発展を阻み、力を持って圧政せし支配者どもめ。赦さぬぞ……!!この報いは我らが指導者の手によって必ずや果たさせるであろう……!」
神の使いとして崇められるのはまだ良かった。神の使いとして認められている間は安全が保証されているからだ。だが、指導者は良くなかった。
今の言葉を聞いただろうか。俺と妹を保護した奴らは、この世界を支配している支配者たちに対して不満を抱いていた奴らだったのだ。それでいて、自分たちではどうしようも無いから俺に頼っている。
要は革命の旗本として利用されているのだ。
確かに両親からも支配者は必要以上に保護してくれないとは聞いていたが、それでも魔物の出現には軍を向かわせてくれたという話を聞いたことがある。
彼らの話で聞くほど支配者が暴君という訳では無いのは間違いない。だが、過剰に技術が発展しそうになると握り潰すという噂もある。
ただの支配者階級の者なら技術が発展することは好ましい筈だ。それを握り潰すということはやはり何かしら腹に抱えているんだろう。
だが、こちらにも正義など無いに等しい。一応革命が成功した暁には全ての民を平等に裕福にすると語っているが、俺にそこまでの力はない。今より良くなる様に努力するつもりではあるが、それも確実では無いのだ。
だが、それでも、大切なものを護れる世の中にしたいとは思っている。今の世の中では妹を守りきれない。勿論俺が居るならば護る。だが、常に共に居られる確証は無いのだ。
「状況を把握しだい、攻めるぞ」
「うぉぉおおおおぉぉおおおお!!!!!」
悪いが犠牲になってもらうぞ、支配者ども。俺が、この世界にとっての異物だったとしても。
面白いと思ったらブックマーク評価よろしくお願いします!