五本の指
2話目ですよろしくお願いします
「小、首尾はどうだ」
「完了したよ。親に言われた通り、魔物を誘導してあの村に誘導しておいた」
「そうか。勿論全滅は確認したな?」
「うん。だから後は……」
「あぁ、後処理は人差したる私に任せておくが良い。ご苦労だった」
人差しへの業務連絡を終え、アジトに帰る。……はぁ、疲れた。もう永いことこんな仕事をしてるけど、正直あんまり楽しくないんだよね。
僕は、というか僕たちは永いこと世界を支配している。まぁ、正確に言えば支配しているのはひとつの大陸なんだけど、そんなに変わんないでしょ。他の大陸なんて人が居るかも定かじゃないレベルなんだし。
世界を支配しているのは僕を含めて五人。さっき話していた人差し、話の中で出てきた親もその中の一人だ。
人差しは僕たちの中でも軍事を司っている。人を操るのはお手の物って訳だ。ほかの者達もそれぞれ別のものを司っている。
僕たちによる支配は今まで非常に上手くいっていた。多少の不満は握りつぶしたし、ある程度は民に讓渡もした。総合的に見て、民は反発しない程度には満足していないはずだ。
……それが崩れ始めたのは、ここ数年のことだ。新しい神輿でも見つけたのか、はたまた力を持った馬鹿でもいたのか、反乱軍なるものが現れた。
当然僕たちも反乱軍を鎮めようと動いた。……そして気づいたのだ、反乱軍は支配者たる僕たちの敵と成りうる存在だと。
勿論、反乱軍をのほとんどは簡単な思考誘導に乗せられただけの哀れな民衆だ。言っていることもあやふやで理想を語っているだけだったし、支配者たる僕たちを悪とみなして居るだけだった。
だけど、そいつらをどれだけ拷問……尋問しようとも、その主導者たる存在のことは誰も話さなかった。話さなかったのは決して忠義心からではない、彼らは本当に知らなかったのだ。
思っていたよりも敵は強かで嫌らしい相手だった。それでいて理想を民に語っているのだから手に負えない。理想だけで飯が食えるのならば僕たちが存在するはずがないのに。
そのせいで、暫く一般市民として穏やかに過ごしていた僕まで本業に復帰することになってしまった。めんどくさいけど、昔からの仲間を放っておいてまでゆっくりするつもりはない。
ゆっくりする為にも頑張らないとね。まぁ、反乱軍の村を魔物を利用して滅ぼしたのを見たら分かるように、今回ばかりは人差しも親も本気だ。
反乱軍なるのものがあることは、遺憾だがかなりの民に知られてしまっている。今回の魔物に滅ぼされた街のこともどこからか情報が漏れて邪推する者もいるかもしれないが、親と人差しが本気なら何も出来ないだろう。
僕だってやってやる。むざむざと僕たちが築き上げた平和を崩させてなるものか。