楽しい牢屋スローライフ!?
「貴様、殿下に何て口を聞いているんだ!」
鎧を着たマッチョが騒ぐ。
鎧の音だけでもうるさいが、マッチョ自身の声もうるさい。
「皆、落ち着いてくれ。今から、この者が本当に聖女なのかを確かめる。」
THE王様な奴が発言して、全員が黙る。
初めからこうしたら良かったんじゃないか?
「貴方が聖女かどうかを確かめるので、この石に手を触れて頂けますか?」
ハゲ、再来。
ハゲの持つ六角柱の石(?)で聖女なのか判定できるらしい。
……違ったらどうなんだ?
勝手に呼んでおいて死刑とか無いよな、流石に。
肯定の意を伝えると、ハゲが魔法陣の中に入ってくる。
呼ぶためだけで、もう何の効果もないようだ。
ひんやりとした石に触れる。
石は少し光った後、白い鳥に変わった。
石の色が変化するわけじゃ無いんだな。
白くてもふもふで、少しシマエナガに似ている。
つぶらな目が可愛い。
「きゅいっ!」
可愛い。
「鳥………?」
ハゲが驚いている。
そして周りも全員黙っている。
「結局、聖女かどうかわかったんですか?」
ハゲに聞いてみる。一応敬語で。
「今までの聖女は、竜などの伝説の動物を出しておりました。この鳥は…………しかし聖女以外は、この石で動物を出すことはできませんし………」
聞こえてない。絶対聞こえてない。
独り言だ、これ。
「結局どうなのだ?この者は聖女か否か、はっきりさせよ。」
「聖女に限りなく近い者であるのは確かです。
しかし、聖女だと断定はできかねます。」
「そうか………では、あの部屋にお連れしろ。」
「わかりました!おい、付いて来い。」
一応王様に礼をして、鎧マッチョと共に外に出る。
まさに絢爛豪華な城の中を結構歩き、着いたそこは。
「ここに入れ。」
「いやここ絶対牢屋だろ。」
見たまんまの牢屋だ。
「早く入れ!殴られたいのか?」
神速で牢屋に入り、鍵をそれっぽく閉める。
「暴力はんたーい。うわー怖いなー。」
満足したように鎧マッチョが帰っていく。
神がかったこの棒読みで満足するのは、ちょっと正気を疑う。
「きゅっ」
肩を見ると、さっきの鳥がいた。
やっぱり可愛い。
だけどどうやって来たんだ?
「きゅいきゅいっ」
そう鳴いたあと、鳥が巨大化した。
キングサイズベッド位の大きさだ。
「きゅっ!」
自分の羽で背中をぽふぽふ叩く鳥。
もふもふの誘惑に勝てず、鳥に向かってダイブする。
羽毛布団を遥かに超えたモフみ。
今までモフいと思っていた寝具など、このモフみと比べると全然モフみがない。
ふわふわで滑らかな質感。
骨があるのか確認したくなるほど鳥に沈む自分の体。
上からそっと掛かる翼部分は、程よい重さだ。
暖かい羽毛に包まれる幸せを知ってしまうと、もう他の寝具には戻れない。
牢屋でスローライフ、始めよう。
ハゲが言っていた創造魔法を使えば、色々出せそうだし。
とりあえず、このモフモフを堪能しよう。
聖女が来たって聞いたから見に行ってみると、そこには………大きな鳥!?
しかも聖女のいるところが牢屋って、聖女は何したの!?
そして、鳥の中から出てきたのは………
次回、『まさかあなたは……!?』お楽しみに!
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