04 初めてのレベルアップ
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ライガ
支援額 0
支配値 10
ステータス
LV 1
HP 10 / 10
MP 10 / 10
EP 100 / 100
スキル
静電気
01 パチンショット
01 パチパチくんパワー
01 パチパチくんサモン
パチパチくん
低周波治療
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ステータスの下にあるのが『開花の儀式』で得たスキル、『静電気』のスキルツリーだ。
ツリー内には3つのスキルがあって、それぞれのスキルレベルとスキル名が示されている。
今は当たり前だがぜんぶレベル1だ。
俺はとりあえず、ひとつひとつスキルを確かめてみた。
パチンショット
指を鳴らすと単発の静電気を起こせる
威力と効果範囲はレベルに比例する
ためしに指をパチンと鳴らしてみると、鳴らした指のあたりで火花のような静電気がパチンと生まれ、泡が弾けるように消えていく。
それは、想像どおりの静電気で、それ以上でもそれ以下でもなかった。
その次にあった『パチパチくんパワー』はその名のとおり、レベルアップすることによりパチパチくんをパワーアップさせるスキルだった。
そして、俺の最後のスキルは……。
パチパチくんサモン
パチパチくんを召喚する
最大でレベルの10倍の数まで呼び出し可能
これは少し意外だった。眷精というのは、普通はひとりにつき1体しかいない。
それを、10体も召喚できるだなんて……。
ためしにスキルを使ってみると、空中からパチパチくんが9体出現し、タンポポの綿毛のように降ってきた。
吸い寄せられるようにやってきて、俺の身体にぴとっと張り付く。
なにをするつもりなのかと見ていたら、パチパチくんは手から不思議な振動を出して、俺の身体をくすぐってきた。
「なっ……なにすんだよ、ちょ、くすぐったいって! ははっ!」
しかしパチパチくんは離れず、俺の身体に鈴なりになったまま。
そして俺は気付く。先ほどまで全身を覆っていた痛みが、ウソのように消え去っていることに。
これは、まさか……?
俺は半信半疑で、ステータスウインドウにあるパチパチくんのスキルを見てみた。
低周波治療
手から低周波を発生させ、対象の治癒を促進する
ふと視線を落とすと、10体いるパチパチくんの中で、いまにも力尽きそうなほどにグッタリしているのがいた。
俺は両手でそっと、そのパチパチくんをすくい上げる。
「もしかして……俺が気を失っている間、お前はずっと俺を治してくれていたのか……?
自分もボロボロなのに、俺を助けるために……?」
するとパチパチくんは「ピ……ャ……」と鳴き返す。
俺はいまにも消えそうなその身体を、そっと制服の胸ポケットにしまった。
「ありがとう、パチパチくん。お前がいなかったら、俺は死んでいたに違いない。
お前の思い、決して無駄にはしないからな……!」
俺は新たなる決意とともに立ち上がる。
空を見上げると、続く森の遥か向こうにぼんやりと浮かぶ城が見えた。
俺はあそこまで戻らなくちゃいけない。
そして授業に参加しなくちゃいけないんだ。
俺とパチパチくんだけでなく、俺を育ててくれた人たちの想いを無駄にしないために。
俺は足元に落ちていた太い木の枝を拾いあげ、歩き出す。
城に戻るまでにはきっとモンスターと遭遇するだろう。
と思っていたら矢先、茂みから石を手にしたゴブリンが出てきて、飛びかかってきた。
「ギャーッ!」
実戦は初めてだったが、中学までは剣術の英才教育を受けてきたのでなんとかなるだろう。
敵の先制をギリギリでかわし、身体が泳いだところに後頭部めがけて一撃を加えてやる。
ボカッ! 「キュゥ」と伸びるゴブリン。
わりと楽に勝てたが、不意討だったら危なかったかもしれない。
それに相手が複数の場合だったりしたら、無傷で勝つのは難しいだろう。
なにかいい手はないかと考え、閃いた。
「そうだ、こういう時こそ『静電気』だ……!」
俺は新しい作戦を編み出す。
用心して森の中を進み、ゴブリンに気付かれずに発見できたときは、
……パチン!
と指を鳴らし、ゴブリンの背中に静電気を発生させる
するとゴブリンは必ず後ろを向くので、
「うおおおおおーーーーーーーーーーーーーっ!!」
と一気に接近、「ギャッ!?」と目を剥いて仰天しているうちに、ボカッと一撃。
スキルというのは強力なものになればなるほど、発動に時間がかかる。
そのぶん、敵に察知されて対応されやすくなるという弱点を併せ持つ。
しかし『パチンショット』は大袈裟な動作や詠唱もいらず、指を鳴らすだけでいい。
発動型のスキルにおいては、もしかしたら世界一コンパクトかもしれない。
なんにしても、静電気は俺の勝利を盤石なものにしてくれた。
やがて、待望のウインドウが開く。
『レベルアップしました!』
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ライガ
支援額 0
支配値 10
ステータス
LV 2
HP 20 / 20
MP 20 / 20
EP 110 / 110
スキル
静電気
02 パチンショット
02 パチパチくんパワー
01 パチパチくんサモン
パチパチくん
New! パチンショット
低周波治療
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おお! ステータスが上昇しているうえに、スキルレベルもあがってる!
『パチンショット』と『パチパチくんパワー』のスキルレベルが上昇。
パチパチくんも、『パチンショット』が使えるようになったようだ。
これはひょっとして、ひょっとするかも……!?
俺はさっそく、次に遭遇したゴブリンに試してみることにした。
いままでは気付かれないように、こっそりと指を鳴らしていたのだが、今度は堂々と叫んで手をかざす。
「行け! パチパチくん! ゴブリンをパチパチするんだ!」
すると俺の身体に果実のようになっていたパチパチくんたちが、「ピャー!」と一斉にゴブリンに向かって飛んでいく。
静電気の精霊たちは、蝶のようにゴブリンのまわりを飛び回り、蜂のようにパチンショットを繰り出す。
パチン! パチパチッ! パチパチパチッ!
静電気というのはダメージは皆無だが、9体がかりでよってたかって浴びせかけられると、さすがに無視できないだろう。
ゴブリンは、ずっとパチパチしてるセーターを着ているみたいに、うざったそうに身体をよじらせていた。
「ギャッ!? ギャッ!? ギャアーーーッ!?」
そこに俺の大上段からの振り下ろしが炸裂。
ゴブリンは額をカチ割られ、一撃で昇天。
俺は確信した。
「やれる……やれるぞ! 静電気のスキルがあれば、単独での探索もできる!
この調子で、学園まで戻ってやるんだ!」
俺はひたすら藪をかきわけ、木々の間から覗く城を目指して進んでいく。
そうしているうちについにレベル3になり、新しいスキルを覚えた。
パチパチパンチ
静電気を帯びたパンチを放つ