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嘘をついたら、たらいが降ってくる  作者: 半空白
第1話 嘘をついたらたらいが落ちてくる男
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その5 超能力者は戦うことで強くなる

 

「この巻物にサインしたら、どうなるのでしょうか?」


 蟹田さんが恐る恐る尋ねると、巫女さんは微笑を浮かべました。


「超能力者協会の会員になります」

「それって入る必要があるんですか?」

「入らないと、色んな人が襲いかかってきます。フリーの超能力者ほどカモになりますからね」

「い、いったいどういうことなのでしょうか?」

「超能力者って、戦って強くなるんですよ。なぜかはよく分からないんですが、決闘して勝者が敗者からエネルギーを徴収するシステムになっているんですよ。もし、協会に入ったら、そういう決闘は起きにくくなりますけど、入らないんですかぁ?」


 巫女さんは笑みを浮かべていたが、話はまったく穏やかなものではなかった。蟹田さんには脅しのようにしか聞こえなかった。


「──入ります!」


 蟹田さんは恐怖のあまりそう答えるしかなかった。


「じゃあ、そこにサインしてくださいね」

「──すみません。最初から読みたいんですけど」


 彼女が蟹田さんに見せたのは、巻物の一番後ろ。どう考えても、その前には長い契約内容が書かれている。


 ──ひょっとすると、契約をあえて言わずに、わざと破らせて殺そうとしているのかもしれない。


 蟹田さんはそう思ったのである。無理もない。


 彼がやったことは紛いようもない犯罪である。超能力を手に入れたからと言って、そんなことはしてはいけない。さらに言えば、そんなことをすると、必ず報いが返ってくるものである。蟹田さんにとって、それは今であった。


 怯えている蟹田さんに対して、巫女さんはきょとんとした顔をした。


「えっ? これって利用規約みたいなやつですよ。別にたいしたことなんか書いていませんし、長ったらしくて誰も読む気にはなれないんで、大体読み飛ばすんで読まないものだと思っていました」


 ──それに、と彼女は続けてこう言いました。


「どのみち、この扇子で頭の中に規約は刷り込むつもりなので悪しからず」

「そ、それって、大丈夫なんですか?」


 目の前にいるのは、超能力者協会の人。


 超能力者協会のものであるならば、絶対、彼女も超能力者である。


 蟹田さんは両手を蟹のはさみにする能力である。すごいと言われれば、すごい能力である。


 だが、目の前の彼女はもっと恐ろしい能力かもしれない。なにしろ、自分が勝てる気がしないのだ。なぜかは分からないが、勝てないという事実だけは分かってしまったのだ。


 そう思った蟹田さんは扇子を持つ彼女から距離を取った。


「なんで遠ざかるのですか?」 

「いや、ちょっとその扇子が怖くて……」

「これは人を殺すための物ではありません。人を活かすための物なのですよ」

「じゃあ、なんで扇子を構えているんですか?」

「念のためです」

「本当にだいじょ「ノープロブレム」


 彼は彼女に言われるがまま巻き物に署名をした。


「じゃあ、こちらにサインしていただけたようですので、これから刷り込みをはじめます」

「本当に大丈夫なんですよね?」

「およそ()()()ほど気を失うことはありますが、よっぽど頭が弱くなければ、記憶まで持っていかれることはありませんよ」

「一時間ほど気を失うって何ですか! 本当に大丈夫なんですか!?」

「そんなに気になるなら、実際にやってあげましょう」


 彼女が蟹田さんの頭に扇子をちょんと当てると、蟹田さんの頭に電流のような何かが走った。


「あばばばばばばばば!!!!」


 こうして蟹田さんは超能力者になったのである。なっちゃったのである。


 ******


 あれから、蟹田さんは超能力者協会の方から超能力者研修を受けて、立派な超能力者になった。そして、それなりに強い超能力者になれるよう努力した。


 勿論、彼にも絶対に勝てない相手はいた。


 もし、そんな相手に出会ったら、彼はしっかり命乞いをして、美容院の無料券まであげた。彼はいろんな理由があってまだ死にたくはなかったのだ。


 そして、彼は今日も一人でのんきにほっつき歩いている超能力者らしき人物を見つけた。


 彼は最近、フリーの能力者を狙うようになった。


 彼らは基本的に油断していて、彼が蟹の手を出したら、あっさりと倒せるのだ。


 特に今回出会った高校生は耳にはワイヤレスイヤホンをつけていた。既に聴覚がある程度制限されている。


 もし、ワイヤレスイヤホンが能力のトリガーであれば、警戒するべきなのだろう。だが、少なくともそんな素振りは無かった。


 蟹田さんが超能力者研修を受けてから気づいたことだが、超能力者になると、同じ超能力者を見ると、なんらかのオーラを感じるようになるらしい。


 のんきに歩いている高校生は微弱ながら、たしかにオーラを身に纏っていた。しかし、それは五年間頑張ってきた蟹田さんほどではない。


 彼はその人物の顔を頭の中に入っていた協会員名簿と照合した。その結果、のんきに歩いている高校生は協会員ではなかった。


 彼は笑ってしまうのを堪え、その超能力者と思われる男子高校生にぶつかるのであった。


 ******


 振り返ってみると、あれは何だったのだろう?


 追いかけていたら、突然、頭に何かがぶつかって、それで意識を失っていたんだろう。


 だが、決闘は実際にやったことになっていて、現に必死に貯めてきた自分のエネルギーが少し減っている。

 

 あぁ、俺もただの人間にすぎないのだろう。あぁいうのがたぶん、本物の超能力者なんだろうな。


 あと、顔バレていないよな? あの後、仮にあいつが協会に入って俺の顔に気づいたらどうしよう? マジでやばい。殺される。殺されないにしても、能力が使えないくらい力をすり減らされてしまうかもしれない。


 それだけは嫌だ。絶対に嫌だ。


 そうだ。あの方が最近、骨のあるやつと戦いたいって言っていたような気が……。


 ちょっと連絡して、あいつにけしかけてみよう。それで、あいつが消せたら上出来だ。うん。そうしよう。


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