その3 蟹田さんは頑張った
こんなに散髪の描写が難しいとは思いませんでした。
いやぁ、思いつきで書くのはいけませんね!
「蟹田さーん、起きてください!」
早場が蟹田さんを揺すっていると、蟹田さんは目を覚ました。
「はっ! 私はどうして寝ていたのだろう?」
「本当に、この人大丈夫なの? 人の顔を見てぶっ倒れるとかなんなの?」
「まぁまぁ、蟹田さんは臆病者ですからしょうがないっすよ!」
「べ、べ、べつに臆病者ではないよ!」
「なら、どうして震えてるの?」
柊木が蟹田さんにそう問いかけると、蟹田さんは動揺した。
すると、蟹田さんに助け舟を出すかのように早場が蟹田さんにこう話しかけた。
「とにかく、髪、切ってくれません? ちょっと長くなったんでスッキリしたいんすよ」
「いや、前のときとまったく変わっていないのですが……」
「それは申し訳ありません。顔はどうしても見せられないんですよ。ただ、敵になるかもしれない相手に素顔なんて見せられませんよね?」
「えっ! お前って顔違うの?」
柊木は目を丸くして、早場を見つめる。
「見え方を変えてるだけっすよ。こういうのはオーラなんて関係なく見方を変えられるそうなんすよ」
「それって変装ってこと?」
「流石にそこまでは無理っすよ。写真を編集してかっこよく見せるアレみたいな感じっすよ」
「それでも凄いからな! っていうか、お前の本当の顔ってそんなにカッコよくないの?」
「失礼ですね。こういうのもなんですが、俺の顔はそれなりに整ってますよ。それを少しだけ変えているだけっすよ」
「本当か?」
「そんなことより早く蟹田さんに髪を切ってもらいましょ」
「えっ! そっちの方も切るんですか?」
「そっちって何ですか?」
柊木が蟹田さんを見つめると、蟹田さんは怯えながら、こう言った。
「い、いや、何もありません。どうぞこちらに座ってください」
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「切れました」
「俺の方はこれで大丈夫っすけど……」
早場は口を濁らせながら、柊木の方を見た。
「いや、セットされただけなんですけど」
そう。柊木はハサミを一度も使われず、櫛で髪型を整えられただけだったのだ。
たしかに、それなりにいい感じに仕上がっている。
だが、髪を切られにきたはずなのに、切ってもらえないのはどうも納得がいかない、と柊木は思っていた。
「は、は、本当にあなたの髪を切らなくちゃいけないんですか?!」
「じゃあ、俺は何しに来たの? ここで、こいつと超能力についての話をしながら、髪を整えに来たの?! っていうか、そんな話これっぽっちもしてなかった気がするんですけど!」
「じゃ、じゃあ、切りますね」
「特に何もこだわりはないんでおまかせでいいですよ」
「本当にいいんですか?」
「別にいいですよ。行っておきますが、スキンヘッドはなしですよ」
「分かってますよ」
蟹田さんは怯えながら柊木の髪をゆっくりと切っていった。
「これでどうですか?」
蟹田さんが大きめの鏡を持ってきて、おそるおそる柊木にどう思うか訊いた。
「良い感じじゃないっすか?」
「うん。これで良いと思う。ところで、代金はどうなるの?」
「タダで構いません」
「ほんとに?」
「はい」
「ありがとうございます」
タダになって喜ぶ柊木に早場はぽつりとつぶやいた。
「柊木さんって懐が小さいっすね」
「だから、俺は堅実なんだ!」
これで4話もおしまい。
次回は明後日から再開です。
実のところ、第5話はまだできていないので、のびるかもしれませんがね。
次回、第5話 ベルデンハイムは柊木栄一を憎んでいる




