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嘘をついたら、たらいが降ってくる  作者: 半空白
第3話 自称胡散臭い男、早場尋
18/27

その5 10分に一回言うと、人を操れる魔法の言葉

 

「やっぱり信じませんよね」


 目の前の胡散臭い男、早場は俺の反応を予想していたかのように勝手に一人で納得していた。


「そんな非科学的なことを信じられるか!」

「じゃあ、俺が超能力を持っている証拠を一つだけ見せてあげましょう。ジャジャジャジャーン!」


 早場は突然、カバンからノートを取り出した。


「何? そのノート」

「柊木さんの口を軽くして話させた恥ずかしーい秘密の数々っす」

「ちょっと待て。なんだ。それ! 俺がそんなことを言った記憶なんてないぞ!」

「えー。初恋の人は幼稚園のとき同じいるか組になったきよちゃんで、「やめろ!」


 ヤバイ。このままだと俺の恥ずかしいことがバレてしまう。それは止めなければならない。ひょっとすると、誰かこの話を聞いているかもしれないからな。


「そんなことを聞きたくて俺はここに居たわけじゃない」

「いや、本当なんすよ。この力」

「なんだ? メンタリストとかそんな類か?」

「ちょっと違いますね。俺の力は人の行動を自分の思う方向に誘導する力っすよ」

「なんだ!? そのチート能力は」

「チート? この世界にチートなんてありませんよ。人はめちゃくちゃな制約の中で自分の力を最大限発揮しなくちゃいけないんすよ」

「いきなり何カッコつけたこと言ってんだよ」

「前提条件っすよ。人の行動を誘導する条件」

「なんだ? それ?」

「それは自分は胡散臭いと10分に一回言うんですよ」

「そんなことでいいのか!」


 それってチートじゃない? 絶対、チートだよね!


「まぁ、正確にはオーラの差とその人の精神状態で操れるかどうか決まりますね。残念ながら、柊木さんはオーラがインフレ起こした紙幣の額並みありますからこうして口を軽くすることしかできません」

「なんだその分かりにくいたとえは!」

「まぁ、本当は柊木さんをフラダンスさせて遊びたかったんすけど残念っすね」

「そんなのどうでもいいよ! っていうか、実際踊らされると恥ずかしくなるからやめて!」

「じゃあ、俺の能力信じました?」

「ちょっと、そのノート貸せ。本当にお前が引き出した情報が正しかったかどうか確認してやる!」


 すると、早場はノートを抱きしめて俺を睨みつけた。


「嫌っすよ。この学校のみんなの弱みが一緒に書かれていますからね」

「やめろ! 能力を悪用するな!」

「見せられない代わりに朗読してあげますよ。ふむふむ。柊木さんは恋愛なんて高校生がするものじゃないって言いますけど、実のところ、かわいい子には目がないらしく、その子のことは見るだけで何もし「やめろ! これ以上は言うな!」


 こいつの軽い口はいったいどうやったら、止められるんだ? 一度口を縫い付けないと止まりそうにもないぞ。


「とにかく、分かってくれましたか?」

「分かったよ! じゃあ、桜澤さんのことも知っているのか? ボークレイと彼女はいったいどういう関係なんだ?」

「──すみません。それは言えないことになっているんすよ」

「俺の秘密は散々言っておいて女の子の秘密は言えないのか」

「いや、柊木さんも超能力者っすから、あの人のこと知ってますよね」

「は?」


 なに、知ってて当然ですよねーって顔してんの? 俺は一般人だよ。知ってるわけないじゃん。


「あの人、俺たちの世界では有名人だから知っていると思っていたんですけどね」

「俺は超能力者じゃないから知らねえよ」

「ところで、柊木さんの超能力ってなんすか?」

「俺は超能力者じゃない。そもそも、超能力すら持っていない」


 すると、早場は血相を変えて俺に問い詰めた。


「だから、ボークレイとかを倒すことのできる魔法の力のことっすよ! あるんですよね! いや、ないとあなたはこの世にいませんよ!」


 大袈裟だなー。だって、俺みたいな一般人が襲われる心配なんて皆無じゃないか。せいぜい男に追いかけまわされるだけさ。


 まぁ、そんな野郎共を退治する力はあるんだけどね!


「たぶん、嘘をついたらたらいが落ちる呪いのことか?」

「なんっすか! それ! 絶対嘘っすよね! 絶対俺のこと揶揄ってますよね!」

「いや、あれはただの呪いだよ。あれ以来、お世辞も相槌も心の底から思わないと言えなくなったんだ」

「避けて、戦うことに利用している時点で嘘つけてますよね?」

「いや、俺は嘘がつけない。そう。この呪いのせいでつけないんだ」

「つけているじゃないっすか。だって、そのたらいを掴んで戦えるんでしょ?」

「誤解だ。あれはボークレイが偶然耐えたから俺も頑張ったら掴めんじゃねぇかって思って頑張ったせいか何だ! 決して嘘がつきたかったわけじゃない!」

「なら、嘘じゃないっすか。そもそも、今、嘘をついているはずなのに、避けてないじゃないっすか」


 今日は超能力者ではないというよく使える嘘を消費したので、落ちなかっただけだ。


 だからと言って、あいつにそんな情報を言ってあげる義務など俺には無かった。


「嘘ではない。なら、試してみるか?」

「いや、見えないものを見えたことにしろって言われても困ります」

「お前にたらいを当ててやるって言ってんだよ!」


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