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嘘をついたら、たらいが降ってくる  作者: 半空白
第3話 自称胡散臭い男、早場尋
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その2 早場尋はナビゲーター

 

 早場尋。彼もまた、例によって例のごとく超能力者である。


 彼はとある事情で引きこもりをしていた。


 この話では彼の経緯について詳しく語るのは控えておく。とにかく、彼はいろいろあって引きこもりになったのである。


 そんなある日、彼は自分が人の行動を自分の思う方向に誘導する力を持っていることに気づいた。


 ある言葉を定期的に言えば、その人をうまく操ることができるのだ。


 この能力に気づいた彼は自分のかつての経歴を何もかも抹消して、一から高校生活を楽しむことにしたのだ。


 そんな彼にも想定外というものがあった。


 それは入学式の日に偶然、通りかかった生徒にその能力を使って操ろうとしたときのことである。


 そこに偶然、あの桜澤家の令嬢が通りかかったのである。


 彼女は彼を見るなり、無理矢理彼を校舎裏まで引きずって、彼を脅したのだ。


「ここは桜澤家の管轄よ。あなたが好き勝手に遊んでいいところじゃないの」


 あのときの彼女の剣幕があまりに怖かったため、あれ以来、彼は高校で能力を使うのは控えることにした。


 その日から彼は彼女以外にも超能力者がいるのではないかと探った。その結果、超能力者が彼と桜澤家の令嬢を含めて五人もいた。


 超能力者協会に入ったときに、「超能力者というものは一万人に一人よりも少ない確率で目覚めるんですよー。だから、同じ町にそんなに超能力者が集まるなんてよっぽどのことが無い限りないんですよー」なんて巫女さんに言われたものだから、彼は高校生活を自分の思うがままに過ごせると思ったのである。


 だが、実際、彼の通うことになった高校には超能力者が五人もいた。


 雨の日以外は学校に来ない奴もいれば、風紀にやけに気を配る真面目なやつもいる。さらには、あの名門桜澤家の者もいれば、見るからに近寄りたくない雰囲気を漂わせていた奴もいた。


 なかなか個性的なメンツだったが、恐ろしいことに全員彼より格上だったのだ。


 これでは自分の思うがままの高校生活は送れない。


 彼はしばらくの間、桜澤家の令嬢の逆鱗に触れない範囲で能力を使うことにした。自分の思うがままの高校生活は30%ほどしか達成できなかったが、命に比べれば惜しくない代価であった。


 だが、二年生になってから事態は変わった。


 それは、柊木栄一がクラスメイトになったことだ。


 新学年が始まった日、彼は教室に入った途端、教室中に異様なオーラが漂っていることに気づいた。


 どこから感じるのだろうと思っていたら、そこには彼の知らない超能力者がいたのだ。


 しかも彼の席の真後ろに座っていたのだ。


 早場にとっては恐怖でしかなかった。何か怪しい行動でもとったら、殺されるのではないかと思うくらい強いオーラを感じたのだ。


 彼は恐怖のあまり叫びそうになったが、何とか堪えて自席に座った。


 よりにもよって自分の真後ろにいるものだから彼はひやひやしながら、新学年最初の日を過ごした。


 まぁ、桜澤家の令嬢もクラスメイトになったことも彼を怯えさせる理由の一つでもあったのだが……。


 次の日、彼は突然、桜澤家の令嬢に呼び出された。


 彼女は彼に依頼を出した。それは能力を使って、柊木から情報を引き出すというものだった。


 勿論、彼は断った。


 そもそも、彼も一年間気づかなかったとはいえ、あの能力者に勝てる自信もなかった。しかも、彼の能力の制約上、あの男を操るなど不可能に近かった。


 だが、彼女は彼の襟ぐりを掴んでこう言った。


「もーし、私の命令に従わないのであれば、あなたの過去を全部ばらしてあげるけどいいのかしら?」


 彼女は彼に分厚いファイルを手渡した。そこには、彼の情報が事細かに書かれてあった。


 彼は彼女の家の力を甘く見ていた。


 いくら、超能力者の中でも力があるとは言え、取るに足らない一般庶民の情報、しかも、彼が抹消したはずの情報までも調べあげられるとは思わなかったのだ。


 彼は彼女の命令に従わざるを得なかった。


 もし、これらのことがみんなバレてしまったら、人生がおしまいだ。もう二度とあの日々を過ごしたくはない!


 こうして、自称胡散臭い男、早場尋は能力を使って柊木栄一の情報を引き出すという無理難題に挑むことになるのであった。


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