その6 自爆魔の嘆き
ここから二話ほど間話が入ります。
第一弾は自爆魔こと、ポルガチェフ君がいかにして超能力者になり、遠路はるばる日本に来て、柊木君と戦うことになったのかについて適当に語ることにしましょう。
俺の名はポルガチェフ。超能力者の端くれだ。
俺は幼い頃から血生臭い戦場で育ってきた。
生きるか死ぬかの世界に生まれ落ちたせいか、人を殺すことには慣れていた。だが、俺「血を爆薬に変える能力」をただの人を殺す道具ようにしか思えなかった。
そして、超能力に目覚めたとき、俺は悪魔だと言われ、一人戦場で放浪することになった。
そんなある日、俺は一人のシルクハットを被ったカイゼル髭のおっさんと出会った。
彼は自分も超能力者であると告げた。
彼は俺の力を褒め称え、自分のギルドに入らないかと聞いてきた。
温かい食事も、ふかふかのベッドも用意すると言われて、俺は彼についていくことを選んだ。
そのギルドは他の超能力者の組織との決闘により、自分たちの力を高めることを望む者が集まっていた。俺はその中で奮闘した。その結果、俺はいつしかギルドの代表格になった。
そんなある日、俺は遠い島国に強い超能力者が集まっているという情報を耳にした。
もはや、この国では誰にも負けなかなってしまったため、少しやる気のなかった俺は少しでも強くなりたいという一心で、その国へと向かった。
その国では様々な超能力者と戦った。だが、自分よりも強い奴とは巡り合わなかった。
そんなある日、俺は同じく強い超能力者を求めてやってきた奴からある話をを聞いた。
それは、ごく普通の高校生が一級能力者十人分のオーラを持っていたという内容だった。
そいつは既にその高校生と戦ったらしく、彼の話をしている間、かなり怯えた顔をしていた。
どうも、彼の能力は見えない何かを作り出して、それを相手に当てる能力らしい。
そんなもの気配で察知して避けられないのか?
そう思ったのだが、気づいたら彼の攻撃が当たっていて、そのまま気絶してしまうらしいのだ。
何より、高校生の周りにはあのボークレイがうろうろしていると聞いた。どうも、ボークレイを何度も負かしているらしく、そのせいでボークレイに付き纏われているらしい。
このとき、俺はその高校生と戦いたくなった。
もし、決闘に勝ったら、配当されるオーラは多いこと間違いない。何より、あのボークレイを何度も負かした相手と戦いたくないわけがないだろう。
ボークレイよりも強い奴なんてこの世には100人もいないだろう。
そうなったら、俺は残り数十人と戦って強くなればいい。ちまちま弱いやつを狩るよりもずっと効率的だ。
そう思った俺はその高校生の20パターンある通学路の中から俺に有利な戦場を作り上げられそうな場所を張り込むことにした。
******
待つこと十日。
その高校生はワイヤレスイヤホンをしながら、現れた。
なんとまぁ、お気楽なやつだ。戦場にいたら、真っ先に殺されているだろう。ほんと、つくづくこんな平和な島国に生まれて幸運だったと思うよ。
さて、俺の血を入れた缶をあいつの足元に転がすとしよう。
もし、あいつの足が少しでも触れたら、そのまま吹き飛ばすような代物だ。
さぁ、蹴飛ばせ。
あれ? 避けた。なんか距離をとってそのままこちらから遠ざかろうとしているぞ?
なぜだ? まさか、あいつはこの手の罠を知っているのか?
間抜けな奴だと思っていたが、訂正しよう。
あいつは骨のある奴だ。
追いかけて、俺の戦場へ誘導しようではないか。
******
気づいたら、俺は路地裏で横たわっていた。
どうやら、俺の仕掛けた爆弾はすべて起爆してしまったらしく、爆発した跡が残っている。
こんなことなら、もっと火力を強くしておくべきだった。
この国の協会とやらからきつく言われていたが、負けるよりはずっとマシだ。
それより、どうしてあそこで記憶が止まっているんだろう。ここにいるということはあの高校生を誘導できたようだ。
だが、その後、すべての爆弾を起動させたにも関わらず、こうして地面に突っ伏していた。あぁ、なんたる屈辱だろうか。
まさか、あんな奴に負けるなんて俺もまだまだだな。
そう思って、辺りを見回すと、なぜかボークレイが倒れていた。
嘘だろ。俺と戦ったにも関わらず、その後にあのボークレイと戦って、しかも勝っただと? ありえない。常軌を逸している。
俺はバケモノと戦ってしまったのか?
「おぉ。そこの若いの」
いつの間にか俺の目の前に老人が立っていた。
俺は目の前の老人が明らかに格上であることに気付いた。勿論、さっきの高校生もオーラだけなら、格上だったが、老人はオーラだけでなく、風格、闘気何もかもが俺を上回っていた。
この老人と戦ったら、死ぬ。間違いなく殺される。
「10代後半の女の子は見かけなかったかのぅ?」
俺は正直に答えることにした。
「そんなのは知らない。その年代の男なら、先ほど戦ったところだ」
「たわけ! お主がわしの大事な大事な孫娘であるちゃんを泣かしたのじゃろ!」
どうやら、誤解をしているようだ。俺は女とは会っていないし、そもそも、今さっき決闘に負けたところだ。少し誤解を解くことにしよう。
「俺は女なんて泣かしたことはない」
「嘘を言うな! お主には山ほど聞きたいことがある。ついてきてもらおう」
「断ると言ったら?」
「首は無くなると覚悟しておけ」
俺は渋々老人の後について行った。
一瞬、横たわっていたボークレイを見て、老人が驚いていたが、知り合いなのだろうか?




