スポーツ部⑤
出しました。ゾキュアさんに催促されました。なんか書いてたら自分で楽しくなってきて思ったより量が出せました。読んでくれたら嬉しいです。
5
スポーツ部の部室に入ってから30分。部室は見違えたようにひかり輝いていた。
事は、俺が部室に入り「汚ねぇ」と言ってから始まった。
まず、青澤以外の女子四人が俺を睨んできた。
そのうちの一人が口を開く。
「あのさ、あんた誰? 女子だからって自分の部活バカにされたら私怒るよ?」
まず俺が女子という前提が間違っているが、この女子は気がなかなか強いようだ。そこで一応、訂正を入れて仕返ししようと考えた。
まぁ、ここで少しタジタジしてくれたらいいなぁ。気が強いイキってる女が俺をいじめてくる最筆頭だったので、可愛い反応したら名一杯いじってやろう。わぁ俺最低。
「まず、俺は男だ。 プラス、ここの部員でもある。 よって、ここの環境について口出しする権利はある」
しっかりと言いたいことだけを言った。
すると、その女子はまたまた怒ったような表情になり、俺をにらんでくる。そして、とんでもないことを言い出した。
「あたし、あんたの入部認めて無いんだけど。葵が勝手に連れて来たんでしょ?」
え? そんな話だったっけ? 才能あるからなんとかかんとか...。もしかして独断ですか?
後ろでは青澤が驚いた顔をしている。そりゃそうだ。折角連れてきた人材が拒否されたんだから。以外とこの部活の女子関係は複雑なのかもしれない。
そんなことを考えている俺を放っておき、話は進んでいる。
「ねぇ葵、なに勝手なことしてんの? 私たち、なにも聞いてないんだけど。そーゆーの、良くなくない?」
まわりに同調を促すように、他の三人に語りかける。
そうだよね。よくないよね。そう言って、他の三人も同調する。青澤の顔は、どんどん雲っていくばかりだ。
俺は、部活内でトラブルが起ころうが知ったことではない。まして女同士の争いだ。俺の入る幕ではない。
が、まぁ、ひとつ言うなら。気に入らないんだよ、お前ら。
「おい、やめろ。一人の女いじめて何が楽しいんだ」
俺がそういうと、一気に視線がこちらに向く。俗に言う、「タゲが向いた」というやつだ。
「はぁ? なに言ってんのアンタ。今私たちが話してるんだけど。かってに入ってこないでくれる?」
ほら来た。入ってくるなアピール。これが女子特有の強みだろう。男が入ってきにくいゾーンを上手く作る。
だがこの時の俺は一種のトランス状態になっていた。具体的に言えば、小学校、中学校低学年のいじめられていた時の記憶がよみがえっていた。
俺が受けていたいじめはかなり執拗なものだった。原因というものは、いじめられた側にはわからないが、恐らくこの容姿が原因だろう。
小学校の時はか弱くて女にしか見えないという理由で。中学では女子がやたらと俺にかまって来たのが原因と思われる。だから俺は自分の容姿が嫌いなのだが、この話はまたあとで。
トランス状態になっていた俺は、全く負ける気がしなかった。
「お前らが話してる? 完全に一人を複数で責め立ててるだけだろうが。それがお前らのいう話してるなら、原始人からやり直せ」
そういうと、リーダー格となって青澤を責めていた女子は、顔を真っ赤に染めた。そしてまた俺を見てくる。だが今回は、睨むというよりは見とれる、といった感じがした。そう思った瞬間、目をそらされてしまう。気のせいだったのかも。
俺が何となく考えていると、後ろから肩を叩かれた。
後ろへ顔を向けると、そこには目をキラキラと輝かせた青澤がいた。
「お前、ど、どうした?」
俺がそう聞くと、青澤は少しためを作ったあと、大きな声で言い放った。
「すっごーい! 白川君って、いい人だね!」
「え、どこが?」
俺がそう聞き返すと、目を反らした女子もこっちを向き直っている。こちらもなかなかに目が輝いていた。
なんでそんな綺麗な目をしてるの...。他の三人も同じ目をしてるんだけど。俺なにかしたかな?
「白川君って、女の子にひどいこと言わないんだね!」
何やら当たり前のことを言われている気がする。
「ていうか、俺女の子にひどいこと言うやつだと思われてたのか」
「ち、違うよ! これはテストなの! 入部のための!」
余計に訳がわからない。スポーツとなんの関係があるのやら。俺の過ごす放課後は、まだまだ長くなりそうだった。
最後までお読みいただきありがとうございました!